挑戦と進化のストーリー

トップインタビュー:56期の総括とこれからの成長戦略

2026年8月19日

トップインタビュー:56期の総括とこれからの成長戦略

話し手:代表取締役社長 加藤 淳

中期経営計画の2年目となる56期を終え、アイサンテクノロジーはどのような歩みを進め、これからの未来を描くのか。代表取締役社長に、56期の総括と各事業における具体的な成果、そして今後の成長戦略について話を聞きました。


Q. 56期の1年間を振り返り、全体としてどのような所感をお持ちですか

56期は、出だしからまずまずの良いスタートを切ることができました。
まず、公共セグメントにおいて大きかったのは、官公庁関係の大口の商談がきっちりまとまったことです。これが大きな後押しとなりました。また、自社ソフトウェア「ANIST®」と様々なハンディスキャナとの組み合わせが昨年以上に市場に浸透し、お客様から実用で十分に使えるという高い評価をいただけたことで、営業担当者が自信を持って提案できるようになりました。それから、前事業年度からのWindows 10のサポート終息及び測量業務におけるルールの見直しに伴うアップデート需要に対しても対応できたことが、業績を支える要因となりました。
一方で、モビリティ・DXセグメントについては、グループ会社A-Driveを中心に、全国各地の自動運転の実証を落とさず獲得しながら、次のステージである「いかにマネタイズしていくか」というフェーズへのプロットとして、名古屋駅にオートドライブリモートセンターを開設し、遠隔監視の実績を作れたこと、また、ストックビジネスとして自動運転バスのサポートサービスも開始し、複数契約を受注できたことは非常に大きな意味を持ちます。また、リゾート施設をはじめとする閉鎖空間での自動運転ニーズへの対応や、官庁・公共機関の拠点におけるプロジェクトへの参画など、着実に進めることができています。
結果として、両セグメントともに実りのある、次につながる良い1年だったと捉えています。
また、管理部門においてはIR活動の充実を含め社員の意識が非常に高まり、総合的な取り組みが株価や市場からの評価にも少しずつ反映されつつあると感じています。


Q. 自動運転を取り巻く環境が変化する中で、当社の今後の立ち位置をどのように考えていますか

自動運転を取り巻く環境は、今後も紆余曲折を経ていく局面が続くと予想されます。国が従来掲げていた「2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上で実現する」という目標に加え、「2030年度における自動運転サービス車両数1万台」という新たな数値目標が設定されました。このような状況の中、2027年、2028年あたりには、業界内における各プレイヤーの立ち位置がより鮮明になってくるはずです。
その中で、当社がどのような役割を担うかが非常に重要です。ここで欠かせないのが、グループ会社A-Drive、三菱商事様、そしてティアフォー様をはじめとする外部パートナーとの連携です。お互いの強みを活かし、役割を明確に分担しながら、業界内で確固たるポジションを築いていきたいと考えています。


Q. 改めて当社が自動運転事業に参入したきっかけを教えてください。

きっかけは2000年代後半に三菱電機様から「MMS(モービルマッピングシステム)」が登場し、当社が国内代理店として販売を開始したことでした。当時、1億円もする高額なシステムをどう販売していくか試行錯誤する中で、2013年にITS世界会議に参加しました。そこで、この高精度な3次元データは自動運転に使えるのではないか、と気付いたのが始まりです。
その後、名古屋大学の加藤真平先生(現・株式会社ティアフォー 代表取締役 執行役員 CEO)との出会いがありました。加藤先生も当時はEnd-to-End*の自動運転を模索されていましたが、「やはり高精度な地図データがないと、車は安定的に走れない」という結論に至り、当社の技術に目を留めてくださいました。自動運転のデータを作れませんか、というところから現在までつながっているので、加藤先生との出会いが一番のターニングポイントでした。
また、ITS世界会議を通じて某自動車メーカーから自動運転用のデータ作成のお仕事をいただいたことも大きかったかと思います。

*End-to-End(E2E)自動運転:車両周囲の認識から判断、制御までを一気通貫でAI(人工知能)に任せる技術のこと。


Q. 主要パートナーである株式会社ティアフォーとの関係性や、同社の上場についてお聞かせください。

ティアフォー様は、自動運転のOS「Autoware」を中心としたソフトウェアテクノロジーを展開する企業であり、当社にとって欠かせないパートナーです。同社が持つ卓越した技術力に信頼を寄せており、上場を果たすことで、自動運転市場のさらなる活性化につながるものと期待しています。
その中で当社は、同社の優れたソフトウェアに、アイサンならではのカスタマイズや高精度3次元地図データなどの付加価値を加え、お客様へ最適な形でお届けするディストリビューターとしての役割を担っています。
今後、市場環境や資本関係の変化などがあっても、当社ならではの独自の強みを活かしながら、これまで以上に協力して自動運転の社会実装を推進してまいります。


Q. 6月に新製品「DEXIO™(デクシオ)」の発売を開始しましたが、今後のDX事業の見通しを教えてください。

「DEXIO™」は、一言で表すと自治体向けのスモールGISです。地図情報をベースに、自治体が持つ様々なインフラの維持管理や住民サービスに手軽に活用できるツールとして開発しました。
戦後80年が経過し、日本全国の公共インフラの老朽化は非常に深刻な問題となっています。この問題解決に点群データなど3次元データを基礎(プラットフォーム)として管理していこうというアプローチは間違っていないと確信しています。まずは成功事例を作り、横展開して宣伝していくことで、確実に市場へ浸透させることができると判断しています。また、それぞれの地域の建設コンサルタント会社などとの関係を深めることで、測量・3次元計測やデータ作成といった他事業への派生効果も期待しています。
同様の製品は他社にもありますが、「DEXIO™」の強みは、当社の測量システムから得た正確なデータを、そのままシームレスに取り込んで確認・管理できる点にあります。データの入り口(計測)から出口(維持管理・確認)までをワンストップでサポートできるこの仕組みは、競合他社に対する差別化になります。


Q. 中期経営計画は今期(57期)が最終年度となります。高い数値目標が掲げられていますが、どのように達成していきますか。

現体制となり今回が3回目の中期経営計画ですが、過去を振り返ると、1回目の最終年度はコロナ禍の影響を受け、2回目は商材不足という課題により、悔しい思いをしました。
しかし、今期に関しては商材やソリューションがしっかりと揃っています。やるべきことを着実に実行していけば、十分に達成可能な計画であると確信しています。
グループ会社の秋測における不正事案が発生し、ジオマーケットで計画していた営業利益が見込めない、あるいは減少するリスクはありますが、その分は公共セグメントおよびモビリティ・DXセグメントの業績で取り返せると考えています。
日頃から社員に伝えているように、「創って、作って、売る」という原点に立ち返り、この一連のスピードを早めることで、目標達成の確実性を高めてまいります。


Q.積極的に取り組んでいる「人財投資」の成果はいかがですか

この2、3年で採用してきた新卒・キャリア採用の社員たちが、非常に大きな戦力となってきています。全国各地に営業所がありますが、新しく加わった社員が大型の商談を掴んでくるなど、明確な成果として表れています。採用担当者が熱意を持って活動してくれた結果であり、今後に向けても手応えを感じています。
一方で、各部門の管理職が、採用などを管理部門に依存しすぎないよう、「自分の組織は自分で創る」という主体的・能動的なマインドへの変革も同時に促していきたいと考えています。
今後は、この獲得した優秀な人財が、現場でその能力を十分に発揮できるよう、教育研修の充実をさらに進めます。最近では研修プログラムを通じて、全国から集まった社員同士の横のつながりが生まれています。研修終了後も彼らが自発的に連絡を取り合い、好事例やノウハウを共有し合うことで、現場の業務改善へつながれば、会社にとっても財産になると思っています。


Q.今後のガバナンスの強化など、株主・投資家の皆様に知っていただきたい取り組みについて教えてください。

特別調査委員会の報告書に基づき、当社が明示した再発防止策をしっかりと遂行してまいります。そして、取り組んでいる現在の状況を、包み隠さず開示し続けることが今期の最大の責務です。
人間が業務を行う以上、リスクを100%ゼロにすることは不可能です。だからといって、社内で互いを疑い合って仕事をしては組織が成り立ちません。結局のところ、再発を防ぐ道は、日々のコミュニケーションを泥臭く徹底していくこと、そして道徳や倫理観に関する教育や啓発のメッセージを、すべての世代に対してあきらめずに発信し続けていく他ない、と考えています。


Q.ここ数年のIR活動の評価と、株価に対する考えをお聞かせください。

2024年の名古屋証券取引所への上場をきっかけとして、名証主催のIRイベントへの積極的な参画は、本当にやって良かったと評価しています。個人投資家が多いという名証ならではの強みを最大限に活かした活動を展開できました。今年も名証IRエキスポへ出展予定ですが、さらに来場者が増えると思うので、当社の認知度向上につなげていきたいですね。
また、昨年は株主様限定で自動運転バス試乗会を開催しましたが、株主の皆様と顔を合わせて率直な意見交換ができるリアルの機会は、今後も積極的に作っていきたいと考えています。
株価について、基本的には市場によって形成されるものであり、直接コントロールできるものではありません。発行体である当社がやるべきことは、開示した目標数値を約束通りにしっかりと達成し続けることです。「アイサンテクノロジーは有言実行の会社だ」という信用を積み重ね、投資家の皆様に安心して株式を保有していただける会社を目指します。
もちろん、株価は高いに越したことはありませんので、企業価値向上のために打つべき手立て(IR活動や認知度アップの施策)は、あぐらをかくことなく必要に応じて打っていきます。8月に発表した「株式分割」もその一環であり、東証からの要請も踏まえ、投資家の方が買い求めやすい価格帯に下げることで、市場における流動性と出来高の向上を図る狙いがあります。


Q.株主・投資家の皆様へのメッセージをお願いします。

当社は今年で 創業57年目を迎えます。祖業である測量システムを中心に、その拡充をますます強めていきながら、そこから派生した技術を軸に、自動運転事業の領域においても「アイサンここにあり」と世の中に示せるよう、この1年間を全力で駆け抜けていきます。
株主・投資家の皆様におかれましては、ぜひ当社の挑戦を、心を広く、そして温かく見守っていただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。