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TUREZURE開発

久々に「業務要求水準書(案)」について書かせていただきます。

前回まででサブメータ級測位補強サービスの概要を説明しましたので、今回からセンチメータ級測位補強サービスに関して説明をして行きたいと思います。

初号機「みちびき」ではLEX信号という次世代測位技術研究目的の信号がセンチメータ級測位補強の信号であり、様々な技術実証、利用実証が行われています。これらの成果をもとに、十分実用化できる信号として、[L6b]という名前でセンチメータ級測位補強サービスが準備されています。

【補強対象】
・QZSS:L1 C/A,L5
・GPS:L1 C/A,L2P,L5

これを見てあれ?と思う方も多いのでは・・・そうですL2C信号が対象に入っていないのです。現在測量等の高精度測位で二周波を利用する場合、L1とL2を利用する事が多いのですが、現段階での仕様で二周波で利用する場合、QZSSの補完サービスは利用せずにGPS測位のみに適用する事となっています。測量業務においては、高精度を要求するため、測位できる場所、時間に対する制約がどうしても大きくなってしまいます。結果トレードオフとしてアベイラビリティが低下してしまうのですが、準天頂衛星の補完サービスにより、このアベイラビリティの低下を抑えられると期待していただけに、補完サービスのみ、または補強サービスのみでは測量業界にとっては残念な事となってしまいます。技術的、補強データのフォーマット的にはL2Cでの補強も可能ですので、今後L2Cにも対応していただける様に働きかける必要がありそうです。と同時にL5という次世代の信号に対する補強情報も配信されています。このことは将来の測量ではL2Pは利用せずに、L1,L5の組み合わせやL1,L2,L5の三周波の測位等も期待できるのではないでしょうか。また、これらの補強情報はL1 C/Aのみにも適用する事が可能ですので、L1 C/A + L6b補強であればGPS+QZSSでの利用も可能になります。今後様々な組み合わせでの測位補強が考えられそうな信号であり、次世代の受信機を示唆する仕様ではないかと思います。合わせて現在の利用実証でSPAC殿より配信されているLEX信号はRTCMの標準仕様になっているため、将来的にはGLONASSやGalileo等のGNSSにも対応できるようになれば、さらなる利活用も期待できます。

【サービス範囲】

業務要求水準書(案)ではサービス範囲は微妙な表現がされています。最初の日本とその近傍はいいのですが、その後に続く云々は少々わかりにくい表現かもしれません。日本では高密度に電子基準点が配備されており、電離層遅延等の情報がかなり高精度に作成できるため、数cm精度(日経では1cmでしたが)の目標で開発が進められていますが、日本を除く他の地域では電子基準点が十分な密度を持っていない、または国防として位置情報となる電子基準点の情報が公開できない、さらに、そもそも電子基準点が無いという国も多く存在しています。(これほど電子基準点の整備されている国は日本しか無い)このため日本とその近傍で可能なセンチメータ級測位精度をアジア太平洋地域の国々で実現するためには多大なインフラ整備が発生してしまったり、法的な問題が生じます。そこで日本意外の地域では、各地域で提供か可能な信号を生成しサービスする事が考えられています。準天頂衛星は1機毎に追尾監視、マスターコントロールが設置されるため、準天頂衛星の軌道上で地域に合わせた信号の切り替えが可能です。また各地域への信号配信のためには、準天頂衛星の監視局をアジア太平洋地域の各国に設置する事で精度を向上させる事ができます。このためこのような表現になっています。

【QZSS他】色々な事

2013年6月 6日

色々バタバタしており、更新に間が開いてしまい申し訳ありません。
今回は、前回からの間に起きた様々な事をダイジェスト的に綴ってみます。
「平成25年度 新あいち創造研究開発補助金 採択」
3年前、SPAC殿、名古屋大学大学院森川先生と、白線認識ナビに挑戦しました。しかし当時はまだ技術的に未熟な点も多く、十分な成果とはならなかったため、継続的に実施したいと考えておりました。今回採択と同時に、愛知県の交通事故対策として私どもの取り組みに興味を持っていただき、産学行政の研究テーマとしても評価いただいています。こういった形で地方行政が位置情報の利用に興味を持っていただけるのは非常にありがたい事で、やはり私たちは位置情報をどのように活用して行くかを常に考え挑戦して行かなければいけないと感じました。
「GPS/GLONASS勉強会」
国土地理院の電子基準点GNSS対応を受け、測量業務でもGLONASSを利用する動きがあります。そこで実際にGLONASSの効果を検証しようと、測量業者、GPSメーカが集まり、海上の森で実験観測を行いました。せっかく高精度なリファレンス点を作成したので、L1-SAIFでの観測も前日の夜行っていました。結果は、収束するものの、測量座標と単独測位の差や地上環境の影響等も含めリファレンスより大きくずれた位置にプロットしています。データの解析はまだできてはいないのですが、今後この観測エリアは有効に使わせていただこうと考えており、継続的にシステム検証を行っていきたいと思います。(今晩もランタン持って観測を予定しています。)
「ISTS世界大会出展」
昨年度国際宇宙展にアイサンが参加した事を受け、ISTS世界大会にも出展させていただきました。ISTS世界大会は、JRI時代にとある関係者から、正直場違いな参加だと痛感していますが、初号機「みちびき」の模型が展示されていたり、寺田氏@JAXAにも久々にお会いし、激励をいただいたりと。ありがとうございました。
位置情報を扱う上でソフトウェアや利用アプリも重要ですが、やはり受信機やアンテナの信頼性は今後の利用拡大に置いても大きなウェイトを占めると考えており、QZSSを活かしたマルチパスーレスのアンテナ開発に挑戦もしようと、色々お声かけさせていただいています。
また、合わせて今年度新たに利用実証用として準備される準天頂衛星対応レシーバーに対応したアプリケーション開発も着実に進めており、スマートフォン等でのデータの受信確認まではできてきました。
今回は取り急ぎの近況報告という事で、また次回よりQZSSの要求水準書を順にひも解いて行きたいと思います。

先日「地理空間情報技術」のコーナーで執筆している渡邊顧問より、論文が採択されたと連絡を受けました。

「空間データの交差自動修正ツールの開発と有効性の検討」というタイトルがつけられた論文では、GISの基盤となる空間情報のエラーを自動修正する事で空間情報の品質向上と、効率化、コストの低減を目指して4年程前に研究課題として取り組んでいたシステムを利用して検証していただいています。空間情報の修正手法自体が明確で無いため、どのような手法で、どのように判断して実施するのが最適なのか、空間情報の作成プロセス、エラーが発生する要因等を検証しながら試行錯誤を繰り返してたどり着いた結論であり、こういった形で世に認められた事は研究開発を行う身としては非常にうれしい出来事です。

地図は正しいものという認識があるかと思いますが、実際に空間情報をある程度の精度まで上げてみると非常に多くのエラーが生じています。厳しい品質要求で検査すれば公開されている空間情報でも数キロ四方で数十万のエラーが検出される事も珍しくは無いのが実際です。G空間情報の活用として位置、空間情報の高精度かが必要とされる中、空間情報の品質管理には多くの課題が実際に存在しています。空間情報の品質向上は階乗的に作成費用に跳ね返ってきます。これらをシステム化する事で品質と、作成コストが圧縮できると私たちは考えています。より多くの方が、多彩に空間情報を利活用できる社会を目指すのであれば、空間情報をいかに高品質に、鮮度を維持して安価に(無料?)提供をできるようにするかという事は重要なテーマだと考えています。

 

先週5/15に「衛星測位と地理空間情報フォーラム」(SPAC主催)が開催されましたので、参加しました。

準天頂衛星の運用、衛星の入札が完了して初めてのフォーラムという事もあり、前に進みだした感あふれる内容でした。

フォーラムの内容はSPAC殿のHPで公開されるので、割愛しますが行政的な面、国家としての方針を始め、準天頂衛星の運用委託会社、衛星開発会社からの計画概要等、非常に具体的な将来像をご講演されており、利用する側としても、今後の推進に向けて非常に期待を実感できました。

レセプションを含め日本総研にお世話になった方々、以前から情報交換をさせていただいている方とも久しぶりに直接お話する機会もあり、様々なお互いの取り組みを話し合えたには非常に刺激的でした。

そんな中水を刺すかのように、某測量機器メーカが準天頂衛星対応受信機の開発に懐疑的なレターを出しているという非常に残念な内容を伝えるメールが飛び込んできました。確認すると、一部には愚痴とも言いがかりとも言えない事が書かれており、測量機器業界はそんなに準天頂衛星を受け入れるのが嫌なのか?と同じ業界に属する者として正直ショックでした。

時は進むし、技術も進歩します。既存のモノに縛られ努力する事を忘れた企業が退場するのは市場の常です。改めて常に勉強、常に努力をと強く感じました。

【GNSS】GNSS.ASIA Japan WS

2013年5月21日

5/14に駐日欧州連合代表部(ヨーロッパ・ハウス)にてGNSS.ASIA Japanワークショップが開催されました。

ワークショップの趣旨は、Galileoのアジア地域での利用促進に向けた日欧の産業協力の提案といったところです。
GNSS.Asiaが現在実施しているプロジェクトとしては

・インターンシップ・プログラム(奨学金制度を含む研究者・学生等の相互の企業派遣)
・R&DレベルのGNSS産業連携サービス(企業間パートナーシップ)
・イノベーション・コンテスト(GNSS利用のアイデア募集)
の3本があるとの事です。正直な感想として提案内容が企画案レベルのものであり、実利用の推進に関してはGalileoは苦戦しているのかなという印象も受けました。具体的にこういったプロジェクトが進められており、こういった成果を目指しているんだ的な提案を期待していただけに、少々肩すかし感も・・・。

欧州全地球航法衛星システム監視庁マーケティング部門責任者ゲラルドカリーニ氏の「日本や欧州のような経済成長の緩やかな国にとってGNSSは金鉱である。」という台詞は、なるほどと感心。ゴールドラッシュのように一攫千金を求めて多くの人々が西部を目指したように、GNSSは多くの先進的な企業、研究者が挑戦する事で、莫大な成果が残せる可能性を秘めた分野なのでしょう。覚悟を持って西部を目指したフロンティアのように、強い意志と観察力そして実行力を持つものがたどり着ける、チャンスとはそういったものなのでしょう。

5/14のGNSS.Asia、5/15のSPACフォーラムとあったので、そのレポートをアップしようかと思ったのですが、本日某県で「県域統合型GIS活用検討部会」があると連絡を受け、特別に鞄持ちで拝聴させていただきました。今回は衛星測位ではなくGISに関して少し思う事を・・・

検討部会では「G空間×ICT推進会議」の話から入り、総務省を含め地方自治体でもG空間への取り組みが始まっている事を感じました。統合型GISに関しては空間情報の品質検査という形で、10年近く前から私も携わってきたのですが、問題は空間情報の品質基準を含めた製品仕様書が作成されていない事に起因していると感じています。その理由には品質基準自体が複雑であったり、検査手法が理解されていない等理由はあるのでしょうが、個人的にはそもそも今の仕様は空間情報を作る側の仕様であり、利用する側の仕様になっていないのが問題ではないかと考えています。私たちもシステムを開発しユーザに提供する立場ですが、やはりユーザーが求めるものを提供しようと努力し、ユーザーからの意見を常に意識しています。しかしながら空間情報に関してはどうでしょうか?地理空間情報活用推進基本計画でもGISの重要性は認識されています。GISはどのようにあるべきかは十分議論されていますが、GISに利用する空間情報はどうあるべきか(作製と維持そして品質)の議論は十分に行われているとは言いがたいのではないでしょうか?G空間を推進する上でも軽視できる問題ではないと思います。

本日はGNSS.Asia Japanワークショップが開催されるので、そちらに参加させていただきます。

マルチGNSS時代に向けた話が色々聞ける事を期待していますので、改めてレポートしたいと思います。

そもそも測位補強とは何ぞや?的な質問もきているので、今回は業務要求水準書から少し離れて測位補強に関して綴っていきたいと思います。

衛星測位は、複数の衛星と自己位置の距離を測る事で位置を知る仕組みです。この衛星との距離は実際に距離を測るのではなく、電波の速度と、到達までの時間により算出されるため、疑似距離と呼ばれています。高精度な(正確な)疑似距離が得られれば、当然位置も高精度になります。しかしながら様々な要素によって疑似距離の精度は劣化します。受信機側の精度劣化を除いた、測位誤差の要因は大きくわけて、電波の到達が遅延、計測する時間に誤差、そして衛星自体の位置の誤差の3つになります。さらに電波の到達遅延に関しては、大気圏での電離層に起因するものや、大気圏中の水分等に起因するもの、または反射波(マルチパス)による伝達経路が延びてしまう等があります。補強信号はこれらの疑似距離が含む誤差要因を補正するための情報を提供する信号となります。

QZSSの補強信号は、位置のわかっているモニター局、電子基準点網(GEONET)等を利用して、要素毎の誤差を分析し地上から誤差情報を準天頂衛星にアップリンクして衛星から配信する仕組みとなります。衛星軌道誤差、衛星時刻誤差、電離層遅延、大気圏遅延等のパラメータを利用する事で疑似距離の誤差を縮小し、測位精度を向上させる仕組みです。ただし、観測点の環境による遅延(マルチパス等)の補正情報は含まれていない事に注意してください。つまり補強信号を利用してもマルチパスの影響は受けます。しかしながら準天頂衛星を利用してマルチパスを検出する手法等の研究開発も進められています。

TTFF

サブメータ級測位補強サービスには、測位精度の向上のためのサービスと同時に、初期補足時間(TTFF)の短縮サービスがあります。これは、GPS観測を開始してから、測位可能になるまでの時間を短縮するためのサービスです。現在一般的には、GPS等の衛星補足を順に探しながら行うため、40秒〜1分程かかりますが、L1Saに含まれる衛星の軌道情報を利用する事で、TTFFを15s以下にする事を仕様値としています。準天頂衛星初号機「みちびき」の利用実証でも多くの参画者がこの補足時間の短縮に期待しており、いくつか質問等もうけていました。利用実証では[L1SAIF+]という名前でSPAC殿より配信される信号にはこのTTFF機能が含まれています。例えば位置情報を付与できるカメラ等では位置情報が取得できなければシャッターがきれないでは困りますし、そのために常に位置情報を取得していたらバッテリーの消耗も激しく、使いたいときに使えないカメラになってしまいます。また現在は衛星測位ではGPSが主流ですがGLONASSをはじめ複数のGNSSが利用可能になった場合、補足のために探す衛星も増え今以上に初期補足時間が長くなってしまう事も考えられます。こういった意味でもTTFFは非常に強く望まれています。ただし注意しなければいけないのがTTFFはあくまでも測位補足時間の短縮を行うものであり、その代償として位置精度は劣化してしまいます。(時間がある程度たち通常の観測状況になれば当然解消されるため、徐々に真値に近づくようなイメージになります。)

メッセージタイプ

業務要求水準書には初号機「みちびき」のL1SAIFとのメッセージタイプの比較表が掲載されています。ただし表のL1Saは静止軌道衛星のL1Saのみです。(※GEOとは静止軌道衛星のことです。)文中にあるように信号の仕様自体はIS-QZSS 準天頂衛星システム ユーザインターフェース仕様書に記載されたものであり、この仕様書に記載のない静止軌道衛星のみ表に記載されています。またICAOの規定に従ってメッセージタイプが決められています。そのためまだ調整が必要な点も多くあり、業務要求水準書(案)内では国と協議をして決定するとしており、業務要求水準書(案)に掲載されている表は最終決定されたメッセージタイプでは無い事に注意してください。

- アベイラビリティ
1)コンステレーションサービスアベイラビリティ:0.99以上
2)衛星1機ごとのサービスアベイラビリティ
・準天頂軌道衛星:0.97以上
・静止軌道衛星:0.97以上
3)高仰角のコンステレーションサービスアベイラビリティ:0.92以上
衛星の配置は当然同じなので、補完サービスと同じ値の様な気がするのですが、若干補完サービスより高いオーダーになっています。この値設定の理由は私も聞いていないので、あくまでも想像としてですが、補完信号の役割のためではないかと思います。補強信号はQZSSのみではなくGPSの補強も行います。このためQZSSの補完サービスが利用できない場合でも、サブメータ級の測位精度が維持できるように高めにオーダーされたのではないかと思います。技術的面としても、衛星の配置が重要になる補完サービスに対し、信号が届けばいい(極論マルチパスでも信号が届けば利用可能)補強サービスは補完信号より低仰角であっても利用可能な様です。(初号機「みちびlき」の利用実証では、補完は利用できなくても補強は利用できる事はよくありました。)

ー 継続性
継続性は、補完サービスと同様の1-2×10の-4乗/hour以上とされています。

ーインティグリティ
誤誘導情報の発生しない確率は補完サービスと同様の1×10の-5乗/hourですが、警報時間は10秒以下と補完サービスに比べかなり短いです。初号機「みちびき」の警報時間は24秒でしたが、実用化に向け誤りのある位置情報を利用される事を少しでも減らすため要求が高くなっているのでしょう。信号は地上で生成され、衛星にアップリンクした後に衛星から配信される訳ですが、信号をアップリンクするまでの地上インフラの時間、アップリンク時間、衛星内での配信までの時間、衛星からユーザに届くまでの時間を考えると、10秒以内というのは、ロス無しで瞬間で届くという事になります。警報情報を含むメッセージまでインティグリティ情報が配信できないと、この値の実現は不可能ですので実際はメッセージの利用不可フラグを利用するのではないかと思います。(ここは運用会社次第?)

※衛星が自立してインティグリティを生成するシステムもあるような事を小耳にはさんだのですが、理解不足です。初号機でも実は衛星が自動インティグリティを発信する事も可能だがOFFになっているとか、なっていないとか・・・衛星の位置自体もGPS衛星等を利用して把握する(システム内相互監視??)とりくみもある様ですし、まだまだ衛星測位は技術革新が進んでいくのでしょうね。

 

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