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サーベイヤーズ21講座

第18講

2010年7月28日

 <<第18講>> χ 2検定
 
重量p は、次式のように“分散σ2の逆数に比例する”として定義されます。 
 
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ここに、 σ 02 は基準分散で定数です。
σ 02 =1とおき各観測値を標準化し、標準正規分布n(0,1)を仮定して処理します。方向及び距離の重量は次式となります。 
 
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このような重量を使えば、あらゆる観測値は標準化され、標準正規分布n(0,1)で処理されます。事前に与えた標準偏差が「 σ02 =1」ですから、網平均計算処理をして得られた事後の標準偏差が「=1」に近ければよいことになります。このような検定は、「χ 2 検定」と呼ばれています。つまり、次の仮説 H0 が成り立つか調べます。  
 
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この関係が成り立たない、つまり、仮説H0が棄却される原因として次の3つが考えられます。
 
 (1)重量が適切でない場合
 (2)既知点座標が悪い場合
 (3)観測値が悪い場合
 
 
具体例
 
国土地理院HPに示された「BL網平均」の計算例は、平均的観測距離は3,000m程度の39の辺長観測と14点における角度の観測から成り立っています。事前に与えた方向の標準偏差は1.4″、距離に関してはa=5mm、b=2×10 -6です。各観測値の重量は、方向の事前標準偏差1.4秒を1としていますので、計算結果から得られた単位重量当たりの標準偏差は秒単位となり、0.68″が示されています。
 
同じ観測値を使って、標準正規分布のもとで処理しますと、検定統計量は次の結果となります。 
 
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信頼度98%として、χ 2分布表から信頼区間を求め、次の結果を得ます。この網の観測値の数から未知数の数を引いた自由度は18です。 
 
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 上に計算された検定統計量「4.10」は、信頼区間7.0-34.8の内側に落ちません。事前に与えた規準分散と事後の基準分散は等しくないものとされ、仮説H0は棄却されました。棄却された原因は、事前に与えた観測値の重量が適切でなかったものと思われます。
 
事前の標準偏差が1.4″に対して事後の標準偏差は0.68″でありその差が大きすぎます。そこで、事前の標準偏差としてσ t=1.0″を使うと検定統計量は次の結果となり、信頼区間内に落ち、仮説H0は採択されました。  
 
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適切な重量の採用
 
公共測量では、事前に与えられる標準偏差の要素が定められています。距離観測の場合、観測距離に無関係な誤差は「0.01m」、距離依存誤差は「5×10 -6×距離」 となっています。この数値はTSが普及する以前から使われているもので、筆者の調査によれば、最近のTSの機器性能は向上していて、観測距離に無関係な誤差は「0.003m」程度が適切です。
適切な重量を使うことによって、異種観測値の処理結果の精度管理が可能になります。
 
参考文献
中根勝見:測地測量における地上観測値の誤差モデルとそのパラメータの決定,写真測量とリモートセンシング,40,pp.48-54,2001.
中根勝見(2001)、測量データの3次元処理、東洋書店