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サーベイヤーズ21講座

第3講

2010年7月27日

<<第3講>> 測量で使う高さ

標高の定義
 
測量で使う高さは“標高”と呼ばれ“平均海面からの鉛直方向の幾何学的長さ“で定義されています(下左図)。日本の一等水準測量成果表には、明治以来1975年頃まで“真高”と記されていましたが、最近は“標高”となっています。英語では“orthometric height”と言います。下の右図のQ点からP2点までの間の標高は、P1点より高い位置にあります。しかし、位置のエネルギーはP1点より小さいので、水は標高の低いP1点から標高の高いQP2間の方向に流れます。皆様もご存知のように、”水の逆流”として有名な話ですね。 

 
 03-01.jpg
 
 力学高と標高
 
高さには、標高のほかに“力学高(dynamic height)”と呼ばれているものがあります。上図右において、P1からP2まで水準測量をした場合、静水面に沿った測量なので水準比高がゼロになります。静水面上のP1とP2の高さは、エネルギーのやりとりがないので、力学高の定義では等しい高さになります。水の流れに関係した高さということになりますね。
 
正規正標高(楕円)補正
 
上図左は、2点P1とP2 における標高Hと平均重力gを表しています。P1点から静水面に沿ったP2までの水準測量による水準比高は“ゼロ”になり水準標高はH1=H2になるので、P2の標高H2は次のような補正⊿Hが必要になります。
 
  H2=H1+⊿H
 
前回に述べましたが、 φは緯度、Hは標高として次の楕円補正の式となります。
 
  ⊿H=-5.29H(φ2-φ1)sin (φ1+φ2) 
 
式をみても分かりますが、緯度の関数なので、南北方向の補正が入り、東西方向では補正は不要になります。
 
正規正標高
 
第2次大戦後、携帯用の重力計が開発され、重力測量が容易になり、実測重力分布が詳細にわかるようになりました。その結果、水準測量に対する重力の補正は、実測重力分布に基づく内容になってきました。実測重力から求めた標高と正規重力から求めた標高とを区別する必要が生じたため、正規重力を使った場合の補正を“normal orthometric correction(正規正標高補正)”と呼ぶようになりました。
 
ヘルメルト標高
 
実測重力分布から計算する標高に“Helmert orthometric height(ヘルメルト標高)”があります。改正測量法関連で日本の高さに適用されたものです。
 
ややこしい話になりましたが、以上述べた一部が改正測量法に伴う国土地理院の説明会の内容になっていました。ヨーロッパではもっとややこしい“normal height(正規高)”が使われています。
筆者が測量を始めた頃“水準の神様”という言葉がありました。水準測量は“単純”であるとの前提で、水準測量を専門としていた測量士に対する揶揄(やゆ)した響きをもった内容の“神様”という呼び名でした。とんでもない話ですね。以上見てきましたように、水準測量は高度な内容をもったもので、GPS測量が普及した今日、高さの理論的把握は欠かせない測量技術の一部になりました。詳細を知りたい方は、下記文献をご利用下さい。 
 
参考文献:大滝三夫・中根勝見,水準測量,東洋書店,2000.