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サーベイヤーズ21講座

執筆者の中心は、弊社技術顧問・元国土地理院研究官・工学博士・技術士 中根勝見です。

講座内容としましては、

  • 第1講:回転・地球・準拠楕円体
  • 第2講:水準楕円体
  • 第3講:改正測量法と基準面
  • 第4講:鉛直線偏差の必要性
  • 第5講:天文座標系・測地座標系
  • 第6講:投影法におけるGPSの観測方程式
  • 第7講:正確な座標変換手法・他

よろしくご愛読をお願い申し上げます。

第1講

2010年7月26日

<<第1講>> 回転・地球・準拠楕円体

私達測量士が使う地球モデルである「楕円体」について、その基礎を考察してみましょう。

  • 回転楕円体(rotational ellipsoid)
  • 地球楕円体(earth ellipsoid)
  • 準拠楕円体(reference ellipsoid)

まず、上記用語の区別をはっきりさせましょう。

回転楕円体

 楕円体は3軸不等ですが、地球が自転していることから、地球モデルとして回転する楕円体を仮定し、赤道面が円になるようにa=bとした楕円体を「回転楕円体」と呼んでいます。

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楕円体   回転楕円体

地球楕円体

 回転楕円体は、具体的な大きさである半径aおよびbが定められていません。具体的に長半径aおよび短半径b(または扁平率f)が定められた楕円体が、「地球楕円体」と呼ばれています(日本測地学会、現代測地学、1994.8.70頁)。日本測地系で使われた地球楕円体は、1841年にベッセルによって定められた幾何定数を採用しています。

準拠楕円体

何らかの方法で、実際の地球に結合された地球楕円体が「準拠楕円体」です(日本測地学会、現代測地学、1994.8,76頁)。この結合には、剛体の自由度に相当する6パラメータを定めなければなりません。

日本測地系の準拠楕円体は、東京の経緯度原点における天文測量と水準測量による結果を使って、ベッセル楕円体が地球に結合されました。つまり、天文経緯度及び方位を測地経緯度及び方位と仮定し、5パラメータを定めさらに、水準測量により1パラメータを定め、合計6パラメータを定めたわけです。

改正測量法における準拠楕円体

02年度からの改正測量法では、地球楕円体として「測地基準系1980 (略称GRS 80)」が使われています。国土交通省告示第185号により、日本経緯度原点座標を次のように定め、GRS 80を地球に結合させています。

X=-3959340.090m Y=3352854.541m Z=3697471.475m

楕円体の幾何定数である長半径及び扁平率は、測量法施行令第2条によって定められています。

なお、国土地理院は旧法において、準拠楕円体について二つの異なった定義を行っていました。一つは、上記に示した定義です(公共測量作業規程1997年判解説と運用72頁)。もう一つは、ジオイド面を準拠楕円体と定義していました(同97頁)。後者の定義によれば、準拠楕円体は場所により異なり、無限に存在することになります。他に例を見ない国土地理院独特の定義のようです。

第2講

2010年7月26日

<<第2講>> 水準楕円体

前回は、古典的な楕円体に関する基礎的な考察を行いました。
今回第2講では、最近の楕円体の扱いである「水準楕円体(level ellipsoid)」について考察してみます。 
 
水準楕円体
 
例えば、ベッセル楕円体は、長半径aと扁平率f(または短半径)の2つの幾何定数をもっています。こうした楕円体は、幾何学的楕円体を表していますが、地球の物理的性質を表しているわけではありません。
上記の2つの幾何定数に、地球の総質量 M と自転角速度 ω の2つを加えた4つの定数で、地球の形と大きさを表します。この場合の楕円体の表面は、等ポテンシャル面を形成しています。例えば、「GRS 80」及び「 WGS 84」楕円体は、4つの定数で定義され、これらの楕円体面は等ポテンシャル面を形成しています。  
 
 02-01.jpg
 
改正測量法に伴いGRS 80楕円体が採用されました。
現在は当然にして、次に述べます楕円補正の式として、GRS 80が定めた物理定数に基づく正規重力式が使われていると思います。
 
水準測量と楕円補正
 
測量で使う高さは、“平均海面からの幾何学的長さ”で定義されます。“幾何学高”と呼んでもよいかもしれません。 
 
 02-02.jpg
 
図は、2点P1とP2における標高Hと平均重力gを表しています。P1点から静水面に沿った、P2までの水準測量による水準比高は、“ゼロ”になります。
そのままでは、H1=H2になるので、P2の標高H2は、次のような補正⊿Hが必要になります。 
 
  H2=H1+⊿H
 
2点の位置のエネルギーは等しいので、次式が成り立ちます。
 
  H1g1=H2g2
 
ここで重力としては、Helmertが1884 年に定めた次式が採用されたといわれています。ただし、φは緯度です。
 
  gφ=978.0(1+0.00531sin2φ )
 
これらの式を整理して、次の楕円補正の式を得ました。
 
  ⊿H=-5.31H(φ2-φ1)sin (φ1+φ2) 
 
ここで使われた標準重力式は、ベッセル幾何楕円体とは全く無関係でした。GRS 80楕円体のように正規重力と地球楕円体が関係づけられていなかったのです。
なお、1975年から上式の定数が-5.29に変更されましたが、筆者が調べたかぎり、元になった重力式は不明です。

第3講

2010年7月27日

<<第3講>> 測量で使う高さ

標高の定義
 
測量で使う高さは“標高”と呼ばれ“平均海面からの鉛直方向の幾何学的長さ“で定義されています(下左図)。日本の一等水準測量成果表には、明治以来1975年頃まで“真高”と記されていましたが、最近は“標高”となっています。英語では“orthometric height”と言います。下の右図のQ点からP2点までの間の標高は、P1点より高い位置にあります。しかし、位置のエネルギーはP1点より小さいので、水は標高の低いP1点から標高の高いQP2間の方向に流れます。皆様もご存知のように、”水の逆流”として有名な話ですね。 

 
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 力学高と標高
 
高さには、標高のほかに“力学高(dynamic height)”と呼ばれているものがあります。上図右において、P1からP2まで水準測量をした場合、静水面に沿った測量なので水準比高がゼロになります。静水面上のP1とP2の高さは、エネルギーのやりとりがないので、力学高の定義では等しい高さになります。水の流れに関係した高さということになりますね。
 
正規正標高(楕円)補正
 
上図左は、2点P1とP2 における標高Hと平均重力gを表しています。P1点から静水面に沿ったP2までの水準測量による水準比高は“ゼロ”になり水準標高はH1=H2になるので、P2の標高H2は次のような補正⊿Hが必要になります。
 
  H2=H1+⊿H
 
前回に述べましたが、 φは緯度、Hは標高として次の楕円補正の式となります。
 
  ⊿H=-5.29H(φ2-φ1)sin (φ1+φ2) 
 
式をみても分かりますが、緯度の関数なので、南北方向の補正が入り、東西方向では補正は不要になります。
 
正規正標高
 
第2次大戦後、携帯用の重力計が開発され、重力測量が容易になり、実測重力分布が詳細にわかるようになりました。その結果、水準測量に対する重力の補正は、実測重力分布に基づく内容になってきました。実測重力から求めた標高と正規重力から求めた標高とを区別する必要が生じたため、正規重力を使った場合の補正を“normal orthometric correction(正規正標高補正)”と呼ぶようになりました。
 
ヘルメルト標高
 
実測重力分布から計算する標高に“Helmert orthometric height(ヘルメルト標高)”があります。改正測量法関連で日本の高さに適用されたものです。
 
ややこしい話になりましたが、以上述べた一部が改正測量法に伴う国土地理院の説明会の内容になっていました。ヨーロッパではもっとややこしい“normal height(正規高)”が使われています。
筆者が測量を始めた頃“水準の神様”という言葉がありました。水準測量は“単純”であるとの前提で、水準測量を専門としていた測量士に対する揶揄(やゆ)した響きをもった内容の“神様”という呼び名でした。とんでもない話ですね。以上見てきましたように、水準測量は高度な内容をもったもので、GPS測量が普及した今日、高さの理論的把握は欠かせない測量技術の一部になりました。詳細を知りたい方は、下記文献をご利用下さい。 
 
参考文献:大滝三夫・中根勝見,水準測量,東洋書店,2000.

第4講

2010年7月27日

<<第4講>> 改正測量法と基準面

02年度から改正測量法が施行されました。旧法と最も異なるところは、第11条に定められた“距離及び面積の基準面”です。旧法では“水平面”であり、改正測量法では“回転楕円体面”となっています。今回は、測量で使う基準面について考察してみましょう。
 
投影法と展開法
 
測量で得られた角や距離などの観測値は、準拠楕円体面で処理されなければなりません。いわゆる「投影法」処理です。ジオイド高及び鉛直線偏差が分からない時代、ジオイド面を楕円体面にみたてて処理してきました。観測値をジオイド面に展開することから、「展開法」と呼ばれているもので、この展開法は略式処理です。 
 04-01.jpg
 
 
改正測量法施行以前は、展開法処理でした。改正測量法により投影法処理の法律的根拠がつくられ、正規の測量計算処理ができるようになりました。
 
距離の傾斜補正
 
旧法ではジオイドが基準面であったから、斜距離の傾斜補正は、次の2種類の式を使うことができました。 
 
 

04-02.jpg (1)
(2)
ただし、Vは高度角です。

 
改正測量法下では (1) 式はそのままでは使えません。鉛直線偏差の補正が必要なので鉛直線偏差が分からない場合は、(2)式の標高 H の代わりに楕円体高 h を入れたものを使はなければなりません。 
 04-03.jpg
 
 
国土地理院(2003),測地成果2000構築概要,31頁 によれば、“公共測量のように測量範囲が狭い場合、三角点間の相対座標への影響は小さい。”と鉛直線偏差の影響を無視できるかのように評価しています。鉛直線偏差の影響は2点間の標高差⊿Hに関係し、座標への影響は⊿Hsinε となります。東京付近の鉛直線偏差は20秒を超えることもあり、標高差が100mあれば、座標への影響は1cmとなります。
誤差を1cm程度を期待している東京都の公共基準点の計算処理では、鉛直線偏差の影響を無視できないでしょう。東京都の場合、先進国のように投影法処理に基づく正確な基準点測量作業規程をつくらなければならないかもしれません。

第5講

2010年7月27日

<<第5講>> 鉛直線偏差と角への補正

ジオイドと鉛直線偏差
 
実際の地球が作るポテンシャルWのうち、水準楕円体のもつポテンシャルU0と等しいW0がジオイドと定義されます(図参照)。ジオイドの概念は、“平均海面とその陸地への延長”です。鉛直線偏差はジオイドの傾きですから、ジオイド高を微分することにより求まる量です。 
 
 05-01.jpg
 
鉛直線偏差の角度に及ぼす影響
 
鉛直線偏差は準拠楕円体の法線を基準にした鉛直線の微小な傾きですから、鉛直線偏差が水平角に及ぼす影響は、図のようにセオドライトの鉛直軸の傾きに相当します。 
 
05-02.jpg 
 
その影響は、次のラプラスの式によって水平方向の補正量⊿α及び高度角への補正量⊿V を計算できます。
 
⊿α=ηtanφ+(ξsinα-ηcosα)tanV
⊿V=-(ξcosα+ηsinα)
 
ただし、ξ:南北成分,η:東西成分,V:高度角,α:方位角 
 
 05-04.jpg
 
図は国土地理院提供による“日本のジオイド2000(GSIGEO 2000)”です。重力から求めたもので、“重力ジオイド”と呼びます。ここに示されたジオイドの傾きが“ジオイド鉛直線偏差”になります。

第6講

2010年7月27日

<<第6講>>鉛直線偏差

地表鉛直線偏差・天文鉛直線偏差
 
前号でも述べましたように、セオドライトの鉛直軸の方向と楕円体の法線方向は僅かに異なります。この差は、鉛直線偏差と呼ばれているものです。地表で測られる角の観測値を楕円体法線に化成する場合、地表上の鉛直線偏差が必要になります。天文測量は地表で測られるので、天文鉛直線偏差が、地表鉛直線偏差といえます。下図の左上参照。
下図は、戦後半世紀にわたって国土地理院が行った約450点の天文測量の結果から求めた天文鉛直線偏差です(中根,2001)。緯度方向5′経度方向7.5′の格子点上の値です。 
 
 06-01.jpg
 
鉛直線偏差は、日本のジオイド2000の傾きでもあります。この場合の鉛直線偏差はジオイド上のもので、地表上の鉛直線偏差ではありません。ジオイド鉛直線偏差と地表(天文)鉛直線偏差は異なったものなのです。
 
地表鉛直線偏差とジオイド鉛直線偏差の差
 
地表(天文)鉛直線偏差とジオイド鉛直線偏差の差が10″を超える地域を下図に示してあります(中根,2002)。北海道の日高山脈と南アルプス地域で10″を超える値が見られます。平地ではその差は大きくなく、平地で実施することが多い公共測量では、国土地理院が提供するジオイド2000のジオイド高をから求めたジオイド鉛直線偏差を使っても問題がないことになります。 
 
 06-02.jpg
 
日本の基準点測量では鉛直線偏差の影響が無視されています。電子計算機が発達した現在、ほとんど計算者の負担なしに、日本のジオイド2000を使って鉛直線偏差の処理ができます。日本はGDP世界第2位の大国です。大国にふさわしく、欧米など先進国並の処理をしたいものですね。
 
参考文献
中根勝見(2001):統合網平均の考察-鉛直線偏差の決定-,測地学会誌47,pp.719-726. 
中根勝見(2002):日本の鉛直線偏差2000,写真とリモートセンシング,Vol.41,No5,pp.15-19.

第7講

2010年7月27日

<<第7講>>測地成果2000と鉛直線偏差
 
測地成果2000の構築概要
 
国土地理院は、2003年に470頁に及ぶ「測地成果2000構築概要」を発行しました。このなかで、改正測量法に対応した新座標である「測地成果2000」に関する説明がなされています。その概要は、次のようになっています。
 
鹿島VLBI観測点が世界座標系の一つであるITRF94に結合された。
VLBI観測点を既知点として電子基準点がITRF94に結合された。
一次基準点3,000点及び二次基準点3,500点が電子基準点を既知点としてITRF94に結合された。
三等三角点3万点余りが上記で決定された点を既知点としてITRF94に結合された。
四等三角点は上記の結果から得られた座標をもとにしたTKY2JGD座標変換プログラムによりITRF94に結合された。
 
 
 
経緯儀の鉛直軸誤差
 
ここで注目するところは、三等三角点3万点余の処理です。日本測地系に近い「Tokyo97」という座標系で処理されており、「Tokyo97」は平均的に17″の鉛直線偏差を持っています。このことは、三等三角点測量において、経緯儀の鉛直軸が一律に17″の誤差を持っており、それを無視して処理したことに相当します。
経緯儀の鉛直軸誤差は、鉛直軸の傾きを測定して補正する以外に取り除くことができず、三角測量時代は鉛直軸誤差の除去が厳しく行われました。 
 
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三等三角測量における方向誤差
 
三等三角測量における三角形の閉合差の許容範囲は、10″です。1方向あたりの許容範囲は方向数6の平方根で割り算して4″を得ます。
鉛直線偏差の影響により、4″を超える方向をもつ三等三角点の分布を下図に示しました(中根、測量データの統合処理に関する研究,2002)。 
 
 07-02.jpg
 
前述の「測地成果2000構築概要」では“鉛直線偏差の影響は、検証の結果少ないと判断できる。”と述べていますが、どのような検証が行われたのか、その方法は示されていません。

 

第8講

2010年7月27日

<<第8講>>公共測量と鉛直線偏差
 
ラプラスの式
 
鉛直線偏差が位置誤差(⊿α)をつくりだすのは,その大きさと高度角(V)です。その関係は,下に示す「ラプラスの式」であらわされています。
 
⊿α=ηtanφ+(ξsinα-ηcosα)tanV
 
ただし,ξ:南北成分,η:東西成分,V:高度角,α:方位角
 
ラプラスは約200年前の学者です。我が国でも戦前の教科書には載っていた式ですが,最近の測量教育ではすっかり無視されているのが現状です。 
 
地球楕円体
 
回転楕円体は、具体的な大きさである半径aおよびbが定められていません。具体的に長半径aおよび短半径b(または扁平率f)が定められた楕円体が、「地球楕円体」と呼ばれています(日本測地学会、現代測地学、1994.8.70頁)。日本測地系で使われた地球楕円体は、1841年にベッセルによって定められた幾何定数を採用しています。
 
鉛直線偏差の計算
 
ジオイド高Nを次式のように2次曲面で近似します。ここに,x,yは公共座標、未知数はu12.6の6個です。6箇所以上の座標既知点においてジオイド高を与え未知数uを決めます。
 
  N=u1+x・u2 +y・u3 + xy・u4 + x2・u5 + y2・u6 
 
ジオイド高Nをx,yでそれぞれ微分し,鉛直線偏差の南北及び東西方向の成分(ξ,η)を次のように得ます。
 
  ξ=∂N/∂x = u2 + y・u4 + 2x・u5
  η=∂N/∂y = u3 + x・u4 + 2y・u6
 
都市部ではビルの屋上でGPS観測が行われることが多く,その点の座標は地上点に取り付けられます。このような取り付け観測では,高度角が大きいので鉛直線偏差の影響をまともに受けます。次の表は,川崎市における公共基準点の地上点への取り付け観測データから位置誤差を見積ったものです。前述の式により計算した鉛直線偏差は,ξ=-8″,η=16″です。ちなみに,天文鉛直線偏差は,それぞれ,ξ=-9″とη=18″になります。
 
表=屋上点から地上点への取り付け観測結果 

  高度角 距離 方位角 座標誤差
点番号 ° ′ ″ ° mm
2031 29 24 33 204.0 330 11.2
2030 17 7 7 294.4 155 8.8
2039 23 25 50 217.5 290 6.7
2039 9 10 32 507.9 110 5.8
127 32 18 16 106.8 10 5.3
2029 19 22 17 114.3 140 3.8
2039 13 45 50 132.3 206 1.9
2040 12 6 42 155.7 30 1.7
2039 5 24 36 665.0 70 0.7

 表によれば,1cmを超える位置誤差を生じます。私の開発した3次元網平均計算プログラムには,サブルーチンとして鉛直線偏差の計算を組み込んであります。

 

第9講

2010年7月27日

<<第9講>>天文座標系と測地座標系


測量に使う座標系は、位置を決める仕組みといえます。最近は、GPS測量が本格化したことから、全地球的な座標系が必要になってきました。今回は、これらの座標系について考察してみます。
 
天文座標と地平座標
 
宇宙測量が実用化する以前、全地球的な座標系は“天文座標系:astronomic system”でした。座標は天文緯度・経度(φ・λ)です。最近は、標高H加えた3次元座標で扱うこともあります。天文座標系と対をなす観測点の座標系は“地平座標系:horizontal system”です。地平座標系は“局所天文座標系:local astronomic system”とも呼ばれます。天文方位角A、鉛直角V、標高Hが座標で“自然座標”と呼ばれることもあります。
 
測地座標系
 
地球重心を原点、自転軸をZ軸などとした3次元直交座標系は“測地座標系:geodetic coordinate system”と呼ばれます。測地座標は、3次元直交座標(X,Y,Z)と(緯度φ,経度λ,楕円体高h)で記述できます。前者は“測地直交座標:geodetic Cartesian coordinates”、後者は“測地曲線座標:geodetic curvilinear coordinates” と区別して呼ばれています。これらの関係は、Nを卯酉線曲率半径として次式で換算が可能になります。 
 
 09-01.png
 
我が国の測量分野では、測地曲線座標という用語に馴染みがなく、(φ,λ)を「楕円体座標」と呼名ぶ方がおります。楕円体座標は別の定義で使われていますので、まぎれをなくすために「楕円体面の座標」とした方がよいかもしれません。
 
局所測地座標系
 
観測点の座標が(n,e,h)で表される場合、この座標系は“局所測地座標系:local geodetic system”です。測地座標系と対になった座標系です。  
 
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局所測地座標系における測地方位α、楕円体天頂角ζ、 空間距離sの関係は、次式で表されます。 
 
 09-03.png
 
測地直交座標系の基線ベクトル[x,y,z」Tと局所測地座標[n,e,h]Tの関係は、次式で表されます。 
 
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なお、公共測量作業規程の偏心計算式に定められた楕円体天頂角ζの鉛直線偏差は無視されています。また、名称も“局所測地座標”ではなく“局所地平座標”という特殊用語を使っています。

 

第10講

2010年7月27日

<<第10講>>旧法におけるGPS観測方程式
 
展開法と投影法
 
旧測量法第11条における距離及び面積の基準面は「水平面」でしたが、改正測量法では「回転楕円体面」に改定されました。
水平面というのはジオイドを楕円体面にみたてた面です。楕円体に対するジオイドの凸凹の位置誤差への影響は、200年ほど昔から研究がされてきています。例えば、ストークス積分によるジオイド高の決定(1849)は研究成果の一つです。わが国では、熱海(1933)による天文ジオイド決定の研究があります。
こうした研究があったものの、回転楕円体(準拠楕円体)面上で処理できる投影法の実現までにいたらず、旧測量法で定めたように、観測値はジオイド面に展開される「展開法」処理が行われてきました。結局わが国では、投影法の処理は、21世紀までその実現を待たなければなりませんでした。
 
旧法におけるGPS測量の観測方程式
 
日本測地系3次元直交座標軸とGPS測量の重心系座標軸は、実用的には平行と仮定して処理されています。日本測地系の準拠楕円体は、GPS測量の重心系準拠楕円体と約東西12秒及び南北12秒の偏りがあり、合計:√(122+122)=17秒の傾きがあります。 
 
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GPS測量の3次元網平均に使う観測方程式は、旧公共測量作業規程で次式のように定められていました。 
 
 10-03.png
 
ここに、(ξ,η)は、調査地域の平均的な鉛直線偏差の南北及び東西成分であり未知数です。α及びsはそれぞれ網の水平方向の微小回転及び伸縮率で未知数です。このように旧法では、未知数(ξ,η)を導入して、GPS観測値をジオイド面へ展開していました。
なお、旧測量法時に、日本のジオイド96を使ってジオイド高と標高から楕円体高を求めて処理する場合は、左図に示す日本測地系準拠楕円体上での処理となっていました。こうして得られた3次元網平均結果は何らかの方法で、得られた座標をジオイド面に変換させなければなりませんでした。