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地積測量図の世界座標付与方法(特許第4088234号)

要約

【課題】
GPS測量等により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図をその形と大きさをゆがめることなく任意座標から世界座標に変換して適合させることを可能にする地積測量図の世界測地系座標付与方法を提供すること。

【解決手段】
地積測量図の世界座標付与方法は、GPS測量等により得られた各引照点の世界座標(ξi,ηi)とトータルステーション(TS)測量により得られた各引照点の任意座標(Xi,Yi)とに対し最小バイアス計算を行うことにより、各引照点の任意座標(Xi,Yi)を世界座標(Xi´,Yi´)に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】
本発明は、地積測量図に対して世界座標を付与する方法に関する。

【背景技術】

【0002】
地積測量図は、周知のように、トータルステーション(TS)の距離測定部、水平角測定部及び高度角測定部によって引照点から地積測量図の境界点までの距離、水平角及び高度角を観測し、これら観測データをデータコレクタに送り、データコレクタで集積したデータをパソコンに送り、パソコンで最良線形計算を行うことによって作成されており、この作成された地積測量図は、正確な面積を記述して法務局に任意座標で登記されている。

【0003】
政府のe-Japan計画に基づく不動産登記法の改正が予定されており、ここでは地積測量図のデジタル化が予定されている。

【0004】
一方、2002年度から改正測量法が施行されるようになり、基本測量及び公共測量が従うべき測量の基準のうち、経緯度の測定は、これまでの日本測地系に代えて世界測地系(測量法第11条第3項)に従って行わなければならなくなり、このため、土地家屋調査士事務所などで、法務局に登記されている地積測量図を取り寄せ必要な作業を行う場合などに、地積測量図に対して世界測地系座標(世界座標)を付与する必要が生じている。

【0005】
そこで、例えば、地積測量図の基準点となる引照点の世界座標を求め、この引照点の世界座標を基に、地積測量図を任意座標から世界座標に変換する必要がある。ここで、引照点の世界座標を求めるにあたっては、引照点にGPS受信アンテナを設置し、GPS衛星の発信電波をGPS受信アンテナで受信し、この受信したGPSデータを携帯電話によりGPSデータセンターに送信し、GPSデータセンターで処理された引照点の世界座標を携帯電話を通じて受信機で受信し、データコレクタに集積する。

【発明の開示】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】
しかし、トータルステーション(TS)測量では、地積測量図のような比較的狭い距離範囲の相対位置関係を正確に測定できるのに対し、GPS測量では、測定距離の大小とは関係無く一定範囲(2cm程度)の測定誤差が常に生じることから、そもそも引照点を正確な世界座標で示すことができない。したがって、図4(A)に示すような、トータルステーション(TS)測量による相対位置関係が正確な地積測量図の各引照点の任意座標系における位置(任意座標位置という。)P1,P2,P3,P4と、図4(B)に示すような、GPS測量による各引照点の世界座標系における位置(観測世界座標位置という。)p1,p2,p3,p4との間に、ズレが生じるようになり、GPS測量により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図を単純な方法によって任意座標から世界座標に変換して適合させようとすると、図5に示すように、トータルステーション(TS)測量によって得られた正確な形と大きさを有する地積測量図がゆがめられてしまうおそれがある。

【0007】
本発明は、上記のように引照点をGPS測量によって求める場合に限定されるものではなく、国土地理院などが設置した基準点や地方自治体が設置した公共基準点の世界座標を用いる場合にも適用可能であるが、上記のような問題点を解決し、GPS測量等により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図をその形と大きさをゆがめることなく任意座標から世界座標に変換して適合させることを可能にする地積測量図の世界測地系座標付与方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】
本発明による地積測量図の世界座標付与方法は、GPS測量等により得られた各引照点の世界座標とトータルステーション(TS)測量により得られた各引照点の任意座標とに対し最小バイアス計算を行うことにより、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換することを特徴とする。

【0009】
本発明によると、最小バイアス計算により、GPS測量等により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図をその形と大きさをゆがめることなく任意座標から世界座標へ変換して適合させることができる。

【発明を実施するための最良の形態】

【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

【0011】
図1は、本実施形態を実施するためのシステムの概略的な流れ図の一部、図2は、同システムの概略的な流れ図の残部を示している。なお、図1及び図2は、引照点の世界座標をGPS測量によって求める場合に対応しているが、他の実施形態として、国土地理院などが設置した基準点や地方自治体が設置した公共基準点の世界座標を引照点の世界座標として用いる場合にも本発明は適用可能である。

【0012】
図1において、ステップ1〜ステップ3は、引照点及び地積測量図の任意座標を得る処理手順を表している。具体的には、まず、複数からなる引照点の各引照点にトータルステーション(TS)を設置し、トータルステーション(TS)の距離測定部、水平角測定部及び高度角測定部によって引照点から地積測量図の境界点までの距離、水平角及び高度角を観測し、これら観測データをデータコレクタに送り、データコレクタで集積したデータをパソコンに送る(ステップ1)。次に、パソコンは、送られてきたデータに対して最良線形計算を行い、地積測量図の任意座標を作成する(ステップ2)。この作成された地積測量図及び引照点の任意座標は、後述する世界座標付与処理に供される(ステップ3)。

【0013】
図2において、ステップ4〜ステップ6は、地積測量図及び引照点を任意座標から世界座標に変換する処理手順を表している。具体的には、まず、各引照点にGPS受信アンテナを設置し、GPS衛星の発信電波をGPS受信アンテナで受信し、この受信したGPSデータを携帯電話によりGPSデータセンターに送信し、GPSデータセンターで処理された引照点の世界座標(GPS座標)つまり観測世界座標を携帯電話を通じて受信機で受信し、データコレクタに集積し、データコレクタで集積したデータをパソコンに送る(ステップ4)。次に、パソコンは、各引照点の観測世界座標とステップ3で得た地積測量図及び引照点の任意座標とに基づいて最小バイアス計算を行い(ステップ5)、世界座標で記述した地積測量図を得る(ステップ6)。

【0014】
最小バイアス計算について以下に説明する。

【0015】
まず、引照点の任意座標位置をPi、任意座標を(Xi,Yi)、引照点のGPS測量による観測世界座標位置をpi、観測世界座標を(ξi,ηi)、変換後の世界座標位置をPi´、世界座標を(Xi´,Yi´)とし、任意座標から世界座標へ変換するための変換モデルを定める。任意座標で記述された地積測量図の形と大きさをゆがめず、正確な世界座標を付与するのに最適なモデルは次式(1),(2)で表される相似変換である。

【0016】
Xi´=x0+kcosθXi+ksinθYi (1)
Yi´=y0-ksinθXi+kcosθYi (2)
ここで、x0,y0は平行移動、θは回転、kは縮尺率である。

【0017】
また、i=1〜4とした場合、世界座標位置P1',P2',P3',P4'が観測世界座標位置p1,p2,p3,p4に最も適合したものとなるために、最小バイアスを示す次式(3)を満足させるようにする。

【0018】
x12+x22+x32+x42=最小 (3)
ここで、
x1=p1P1'=[x1,y1]T
x2=p2P2'=[x2,y2]T
x3=p3P3'=[x3,y3]T
x4=p4P4'=[x4,y4]T
である。なお、Tは転置を表す。

【0019】
観測世界座標(ξii)と上記式(1),(2)に示した世界座標(Xi´,Yi´)との関係は次式(4),(5)で表される。

【0020】
xi=Xi´-ξi=x0+kcosθXi+ksinθYii (4)
yi=Yi´-ηi=y0-ksinθXi+kcosθYii (5)
上記式(2)に示す最小バイアスの条件に基づいて4つのパラメータ(x0, y0, kcosθ, ksinθ)を求める。解s(=[x0, y0, kcosθ, ksinθ]T)は、最小2乗法と等価な値で、次式(6)で示される。

【0021】
s=(ATA)-1ATL (6)
ここで、
【数1】

【0022】【数2】

【0023】
である。

【0024】
このようにして求めた4つのパラメータ(x0, y0, kcosθ, ksinθ)と任意座標(Xi,Yi)を上記式(1),(2)に代入することにより、世界座標(Xi´,Yi´)を得ることができ、世界座標で記述された地積測量図が得られる。なお、パラメータ(kcosθ, ksinθ)は縮尺率kが関係しており、地積測量図の面積(大きさ)を変えない場合、k=1とし、パラメータ(kcosθ, ksinθ)の代わりに(cosθ, sinθ)を用いる。

【0025】
なお、上記式(3)から次式(7),(8),(9)が導きだされる。

【0026】
x1+x2+x3+x4=0 (7)
y1+y2+y3+y4=0 (8)
(x1Y1+x2Y2+x3Y3+x4Y4)-(y1X1+y2X2+y3X3+y4X4)=0 (9)
これら3式のうち式(7),(8)は、トータルステーション(TS)測量による任意座標位置P1,P2,P3,P4の座標の中心と、GPS測量による観測世界座標位置p1,p2,p3,p4の座標の中心とが一致していることを示している。また、式(9)は、任意座標位置P1,P2,P3,P4の図形とGPS測量による観測世界座標位置p1,p2,p3,p4の図形の回転が固定されていることを示している。

【0027】
図3は、引照点A,B,Cの3点において6回のGPS測量を行った結果を示す。各3点におけるGPS座標のばらつきは、A=10mm、B=20mm、C=16mmと大きいが、3点A,B,Cの中心位置のばらつきは、6mmと小さくなることが分かる。

【0028】
以上説明したように、本実施形態による地積測量図の世界座標付与方法は、GPS測量等により得られた各引照点の世界座標とトータルステーション(TS)測量により得られた各引照点の任意座標とに対し最小バイアス計算を行うことにより、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換するようにしたため、GPS測量等により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図をその形と大きさをゆがめることなく任意座標から世界座標へ変換して適合させることができるようになる。