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空間データの品質向上

開発の経緯

1.はじめに

筆者は統合型GISの導入を図るため、NSDIPAの一員として活動していたが、その時感じたことは、一般産業界では、社内の生産部門ごとにプロセス管理を行い、出荷する際に企業として品質保証部門が製品としての品質検査を行っている。しかし、空間データの生産は、部門ごとのプロセス管理の結果が発注者に提示されるようになっている。このため生産部門のミスが企業の直接対外的な信用度に影響してしまう欠点を持っている。空間データの品質が必ずしも満足されていない現状を考えると、このような二重チェック体制が必要であると立場から、統合型GISでは、空間データの品質を従来のプロセス管理から、品質管理にすべきであると主張していた。その結果として、公共測量作業規程の準則では、このような二重チェックの品質検査も取り入れられていると考えている。
一方、GISを導入する障害として空間データの整備費の削減が求められていた。従って、統合型GISを推進するためには、整備費の8割以上を占めるデータ整備費の削減と、空間データの品質を向上させる必要があった。

2.2004年当時のDMデータの品質

2004年に24市町村のDMデータから任意に1図郭を抜き取りの品質検査を行った例である。作業機関は、大手を含む7社が作成したもので、作成年度は、1999年度から2003年度までのデータである。また、このDMデータは第三者機関の検査結果が合格としたデータである。上段の10mm,50mm,100mm・・・・・はそれ以上の距離をエラーとする値である。

エラーの種類別誤率

検査内容 検査数 10mm 50mm 100mm 200mm 400mm 600mm 750mm 1000mm
線分の交差 587,633 3.99% 2.65% 2.00% 1.31% 0.70% 0.42% 0.32% 0.22%
線の連続性 587,633 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27%
面の交差 91,897 2.68% 1.22% 0.62% 0.28% 0.11% 0.06% 0.05% 0.03%
微小線分 587,633 0.02% 0.11% 0.24% 0.54% 1.23% 2.10% 2.77%  
検査内容 検査数 誤率
自己交差 587,633 0.21%
とげ 587,633 0.08%
始終点不一致 91,897 24.44%

 

このように、エラーの大半は線の交差、面の交差、線の連続性であることがわかる。線の連続性は、地物が同じで、始点と終点が一致する場合に1つの地物として修正すればよいので簡単にできる。
そこで、交差の自動修正に取り組むこととした。交差の自動修正に取り組むには、交差の事例を調査分析し、そこに普遍的な性質を見出す必要がある。

3.交差の自動修正ツールの開発経緯

当時の公共測量作業規程は、プロセス管理で行われており、その多くは抜き取り方式でかつ、目視検査で行われていた。目視検査は必ずしも悪いとは言わないが、目視検査の結果でもエラーが残っている現実を考えると、検査方法にも課題があると考えた。
位相一貫性では、地物が位相属性を含む幾何属性の一貫性が保たれていることを要求しており、地図情報レベル2500の製品仕様書では適合品質要求は0%を要求している。
この品質要求は、それまでの品質と比較すると、青天の霹靂ともいうべき要求であり、位相一貫性の品質要求を%とすると、目視による修正では多大なコストが必要であることが想定される。
一方、2000年以降、データ整備費・更新費の単価は、年々下がり、併せて自治体の発注量の減少も伴い、作業機関の収支も悪化の一途をたどってきている。そのためか、海外生産が盛んになってきた。筆者は作業機関とは製造メーカであると考えている。製造の要は生産技術である。このまま行けば、測量業は衰退してしまうことを深く憂いているものである。そこで、複数の大手作業機関のトップとお会いして、線交差と面交差の自動修正プログラムの共同開発を打診した。ところが、筆者の仁徳のいたらないためか、技術担当役員、および技術部長のお話では、これらの自動修正プログラムの開発は技術的に不可能であるとの見解から、参加できないとのお話であった。しかし、地理情報のGISを推進するためには、品質の向上とコストダウンを図る必要が絶対的条件であると考えた。幸いにも、アイサンテクノジーが理解していただき、筆者と共同で交差の自動修正ツールを開発することとなった。

4.品質検査ツール

交差の自動修正をツール作成するには、順序としてエラーの抽出を行う必要がある。エラーの抽出とはすなわち品質検査ツールである。この品質検査ツールの内容については、地理情報システム学会のGIS-理論と応用のVol.16 No.1で発表している。
この品質検査ツールは、2004年には岐阜県の統合型GISの共有空間データの受け入れ検査に活用されたが、その特徴は、後に基盤地図情報(原型DB)製品仕様書でも取り入れている交差の閾値を設けているところにある。
交差に閾値を設けた理由は次のとおりである。

20120801_01.png

例えば、図は線分cdのd点を線分ab上に接続したいとする。ところが、図の破線で描かれたグリッドは入力最小単位とすると(例えば、縮尺2500のDMでは、1cm)実際に記録される d点はd1~d4のいずれかになってしまう。この場合、d1,d2は交差していることになり、d3,d4はダングロ(アンダーシュート)となってしまう。公共測量作業規程に交わる際には、必ず、双方の線分に同一点を挿入しなければならないことを規定しない。
従って、交差はほとんどの場合に発生する。このため、多くの品質検査ツールでは、このような場合にエラーとして扱い、取り除くことができないのでOKエラーとして報告している。この種のエラーが1図郭で数百か所に及ぶ。OKエラーがこのように沢山あると、OKエラーの内容によって品質の評価が異なってしまうことになる。
第三者機関にしても、発注者にしてもOKエラーが数百か所あるけれども、合格ですと言われて、ではどのように確かめるのか。大変な問題である。
そこで、理論的に交差をなくすことができないのであれば、交差していても、ある一定の距離までであれば(この値を閾値とする)、OKとする判定式を作成するとした。
線分cd1またはcd2が線分abと交差して交点からd1または交点からd2までの距離が閾値以下であれば、エラーとしない、とする判定方式である。その後、この考え方は、基盤地図情報でも採用されている。

次回から5回に渡り、交差の自動修正を行うために、交差のどのような点に着目し、どのような普遍性に着目してプログラム化を行ったかについてシリーズでお伝えしたいと考えている。