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空間データの品質向上

1.実証実験の考察

1.1.はみ出し幅50cm以上が90%を占めるはずでは?

第3回で50cm以下のはみ出し幅が全体の90%が占めていると報告しているが。しかし、今回の図化機からの取得データでは、50cm以下の比率が75.3%となっている。これは次の原因によるものである。

(1) 50cm以下のはみ出し幅が全体の90%を占めるデータは、計画機関に納品したデータであり、はみ出し幅の大きいものを修正していると考えられる。
(2) 今回のデータは、図化機で取得したデータので、はみ出し幅の修正を行っていないので、はみ出し幅の大きいものの数が多いものと思われる。

今後、このような、データを蓄積してゆけば、図化機で取得時のはみ出しと、はみ出し幅の分布状況がわかるようになる。そうすれば、取得方法の改善や、オペレータの教育方法等に活用できるのではないか。
筆者は、企業として例えば、10,000個の座標を入力した場合に、何個のエラー(この場合交差の要求水準以下のはみは出し幅が何個存在しているか)を管理し、目標値を掲げることが必要ではないかと言っている。このような数値を管理することによって、初めて品質管理も、コストダウンも可能になる。現状の水準を把握せずして、何も始まらないのではないか。
2例の実証実験結果、はみ出し幅が現地寸法で50cm囲以下のはみ出しは、94%以上の修正ができることが分かった。残る課題は次のものである。
① マルチパートと始点が領域内にある場合
② 線上にある場合
これらの機能を付け加えれば、ほぼ、100%の自動処理が行うえることがうかがえるまでになっている。この問題は、そう難しい問題ではない。
今後、より多くデータの実証を重ねることで、オペレータの起こしやすい未解決のはみ出しタイプを抽出し、機能強化を図りたいと考えている。(技術に終わりはなく、これで良いと思った瞬間から、その技術の進歩が止まってしまう。むしろ、これからが、自動修正の始まりと考えている。)

1.2.線と線の交差

線分と線分の交差の前提は、始点がはみ出していないことを前提としている。
図は線分Bが線分Aに対して優位にある場合の交差した例である。なお、図1の●は座標点を示し、a1、b1は始点を、矢印は方向を示している。

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図1 修正される交差と修正されない交差

修正は、次の条件を満たす場合に行われる。
線分Bが線分Aに交差した場合に線分Bの最初の交点以降の座標が線分Aから等距離にある閾値の範囲内にある場合に修正が行われる。最初の交点以降の座標が閾値を1点でも超えた場合には修正は行われない。また、a'3からa3の長さ、a2からa'からa'4の長さが微小線分となる場合には、a'3とa'4を1つの点とする等の補正処理を行う。
図3のパターンは、a1始点である。a3、a4、更に座標列がa5、a6、と続いて閾値外の座標列が続けばa1、a2ははみ出している可能性が高くなるので、誤修正を防ぐために自動修正を行わないようにしている。
今回の実証実験における閾値は、レベル2500のデータであったので、50cmとした。しかし、閾値はレベルによって設定すべきで、取得地物の最小形状の1/2以下、図化機で取得する際の表示したスケール等によって値を決める必要があると考えている。

1.3.地物間の交差は優先順位が一義的ではない

地物と地物が交差した場合、優先順位の低い地物を高い地物の外周に外形に合わせる方法で修正を行うようにしている。しかし、現実の世界には例外がつきものである。例えば、道路でも、高速道路が2階建で、高速道路に沿って地表面にも道路がある場合がある。読者から、このような場合を考えていないと言われそうである。このような、ケースの場合、取得段階で、公共測量にとらわれず、地物名を新しく起こして、最上位階、次の階、というようにすれば良いと考えている。例えば、道路縁(最上)、道路縁(中位)道路縁(地面)というように優先順位を付ければ問題を避けることができる。そして、品質検査の後に、地物をマージすれば良いのではないか。公共測量作業規程の準則も生産の途中段階に規定のない地物の分離をしてはいけないとは言っていない。要はどのように、品質向上とコストダウンをするかが重要であると考えている。

 

2.生産性

自動修正ツールは、空間データの生産性を向上させるために作成したものである。
筆者が以前に岐阜県の統合GIS技術部会の10社に、写真測量における全体の工数に占める数値編集作業工数の割合を調査した。その結果は、平均では30%で最大で50%、最少で15%という回答であった。

2.1.処理時間

今回の実証では1図郭あたりの自動処理の処理時間は、42分程度かかっている。今回は、機能を満たすことを何よりも優先して開発してきたので処理時間を後回しにしている。しかし、処理時間は生産性の重要な要因であり、今後も処理時間の短縮に努め、半分以下にしたいと考えている。その実現性は容易であると考えている。

2.2.自動修正による効率

今回の実証実験では、全体のデータに対する交差の平均改善率は表1に示すとおりである。

表1 交差の自動修正前と修正後の要素数の変化

項目 種類 修正前 修正後 改善率 平均改善率
要素総数 89,617 89,617
はみ出し幅0.01m以上の要素数 面交差 881 213 75.8% 73.6%
線交差 182 68 62.6%
はみ出し幅0.5m以上の要素数 面交差 201 201 0.0% 0%
線交差 61 61 0.0%
はみ出し0.5m以下の要素数 面交差 668 12 98.2% 97.6%
線交差 121 7 94.2%

 

自動修正によって、はみ出し幅の修正は、データ全体の73.6%改善される。従って。工数全体の削減は0.736×0.3(平均数値編集工数)=0.2208となり、全体の22.08%工数の削減が可能となる。すなわち原価率が22.8%低減させることができる可能性を示している。
一方、はみ出し幅が0.5m以上の要因を分析して、自動処理以外の方法でも原因を調査し対策を行うことによって、工数全体の改善を図ることも重要であると考えている。

 

3.おわりに

筆者がこの自動修正を考え付いたのは、今から足掛け10年前の統合型GISを始めた時である。世の中にGISを普及させるには、コストを削減させなければならない、そのためにどうすれば良いか。統合型GISによって空間データの重複投資は避けられるが、更に、コストダウンを図らなければ普及できないと考えていた。また、当時、空間データの品質について大いに疑問を感じたものである。また、生産の現場を見ると、生産機器は進化しているが、データの編集作業はオペレータの感と経験に頼っているのが実情であった。
公共測量作業規程や、その後の地理情報標準は、交差をしてはならないと規定している。これは、従来の紙図と比較して、GISデータは、恐ろしいほどの要求品質にも係らず、測量企業の技術者は平然としている態度には理解しがたいものがあった。当時、筆者が品質検査ツールを開発して、結果を出してみると、はみ出し幅が75cmでも合格するのに何回ものやり取りが必要であった。この費用たるや莫大なものとなることが想像される。
そこで、自動修正ツール作成に当たり、品質検査ツールで交差している実態と原因を調査した。この交差の原因が取得方法や、オペレータの注意によって避けられるものなのか、避けられない問題なのか、いくつかの企業を回って意見を伺って、その結果を基に交差パターンの分類を行った。そして、ようやく自動修正の修正方法を決めることができた。

空間データの生産が製造業であるかぎり、データ生産の生産性の向上は、経営的にも最重要課題であるはずである。また、統合型GISが始まる頃から、データ生産を海外に委託する企業が増えて、測量企業が商社化する危険性を感じられた。このままでは、若い人々に魅力のない業種になってしまう。
そこで、測量企業で自動化は不可能といわれる処理技術を提示することによって、後に続く若い人々が、生産現場における生産技術を高め、コストの低減と品質の向上にチャレンジしていただくために、この自動修正ツールを提示するものである。この程度のツールなら私にもできるという、若い人たちのチャレンジに期待を込めて発表しているつもりである。生産現場における無駄の撲滅と省力化に役に立てば幸いである。

今回で自動修正を終わらせていただきます。長い間お付き合いいただき感謝いたします。

実証実験

これまで申し上げたコンセプトに基づき交差の自動修正のツールを作成し、いくつかの実際のデータを使ってテストを行った。その結果について報告する。

1.実証例1

実証例1は、A市のご協力を得て、X作業機関から図化データを借用してテストを行った。この作業機関は、図化の段階で空間属性の面と線を指定して取得している。そこで、借用した全市の編集前データから無作為に4図郭を抽出した。このデータは、品質検査を行った結果では、地物総数は、89,617で、はみ出し幅0.01M以上の面交差881地物、線交差182地物があった。その内訳は、はみ出し幅が0.5M以上の面交差201地物、線交差61地物で、はみ出し幅0.5M以下の面交差668地物、線交差121地物であった。
そこで、自動修正は、はみ出し幅0.5M以下の交差に対して自動修正を行った。その結果を表1に示す。

表1 自動修正の改善率

項目 種類 修正前 修正後 改善率
地物総数 89,617 89,617
はみ出し幅0.01m以上の地物数 面交差 881 213 75.8%
線交差 182 68 62.6%
はみ出し幅0.5m以上の地物数 面交差 201 201 0.0%
線交差 61 61 0.0%
はみ出し0.5m以下の地物数 面交差 680 12 98.2%
線交差 121 7 94.2%

 

自動修正を行ったはみ出し幅0.5M以下の面交差の改善率((修正前-修正後)/ 修正後×100)は、98.2%、線交差の改善率は94.2%であることがわかる。その結果、全体に占める改善率は、面交差で75.8%,線交差で62.6%改善されたことがわかる。
はみ出し幅0.5M以下の面交差の地物別改善率を表2に、はみ出し幅0.5M以下の線交差の地物別改善率を表3に示す。なお、面交差は空間属性が面と面の地物が交差している場合を分類し、線交差は空間属性が線と線、線と面の地物が交差している場合を分類している。

表2 面交差の地物別改善率

地物 総数 修正前 修正後 改善率
プラットホーム 4 1 0 100.0%
建物 19,688 172 1 99.4%
湖池 37 1 0 100.0%
植生と場地 6,874 359 7 98.1%
石段 209 4 0 100.0%
道路縁(大) 715 147 4 97.3%
合計 27,527 684 12 98.2%

 

表3 線交差の地物別改善率

地物 総数 修正前 修正後 改善率
さく 656 14 1 92.9%
へい 492 8 2 75.0%
河川 1,748 53 0 100.0%
記号道路 548 5 1 80.0%
建物 19,688 25 3 88.0%
石段 209 6 0 100.0%
道路縁(大) 715 9 0 100.0%
合計 24,056 120 7 94.2%

 

図1は建物とさくが交差している。建物とさくが交差した場合、建物が優先されるので、交差後建物の外周をなぞることになるが、補正によってはみ出し幅が最大の建物のコーナーまでさくが移動していることがわかる。
また、道路縁と建物の交差では、建物が道路縁に移動していることがわかる。

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図1 修正された面交差例

今回の検証は、はみ出し幅が0.5M以上の場合は、修正内容に修正する閾値を0.5Mとしている。図2は河川とさくが交差しているが、はみ出し幅が0.5M以上なので修正していない。また、道路縁内に植生界がn点までがはみ出し幅0.5M以内のはみ出しであるが、n+1および、n+2点目のはみ出し幅が0.5M以上であるため、修正されない例である。

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図2 はみ出し幅が閾値0.5M以上のため修正されない例

修正できなかった交差の原因は、表4、表5の通りであった。

表4 面交差の未処理原因

誤差内容 植生 道路縁 建物 合計
マルチパート 5 3 1 9
始点が領域内に存在 2 1 0 3
合計 7 4 1 12

 

表5 線交差の未処理原因

誤差内容 記号道路 建物 さく へい 合計
マルチパート 1 1 0 0 2
始点が同一線上 0 2 1 2 5
合計 1 3 1 2 7

 

未処理の原因でマルチパートは、このツールに組み込んでいないため、未処理となっている。今後、開発する予定である。また、始点が同一線上にある場合は、判別式を変更すれば処置できるので、今後は修正できる。
このデータの自動修正の箇所数と処理時間を表6に示す。
また、使用したコンピュータはDell PRECISION 470で演算速度3.00GHz、メモリー3GBで処理した。

表6 処理時間

図郭番号 処理箇所数 処理時間
図郭1 833 46分01秒
図郭2 3,524 1時間10分06秒
図郭3 492 20分30秒
図郭4 558 30分30秒
平均 1,351.75 41分53秒

 

2.実証例2

実証例1は、B市のご協力を得て、Y作業機関から図化データを借用してテストを行った。
この作業機関は、図化の段階で空間属性を線のみで取得している。そこで、借用した全市の編集前データから無作為に4図郭を抽出した。但しこのデータは地形図の更新なので、更新したデータのみである。
このデータの品質検査を行った結果では、地物総数は、48,256で、はみ出し幅0.01M以上の線交差864地物があった。その内訳は、はみ出し幅が0.5M以上の線交差27地物で、はみ出し幅0.5M以下の線交差837地物であった。
そこで、自動修正は、はみ出し幅0.5M以下の交差に対して自動修正を行った。その結果を表7に示す。

表7 自動修正の改善率

項目 種類 修正前 修正後 改善率
地物総数 48,256 48,256 -
全体のエラー数(0.01m以上) 線交差 864 48 94.4%
0.5m以上のエラー数 線交差 27 27 0.0%
0.5m以下のエラー数 線交差 837 21 97.5%

 

自動修正を行ったはみ出し幅0.5M以下の線交差の改善率((修正前-修正後)/ 修正後×100)は、97.5%、であることがわかる。その結果、全体に占める改善率は、94.4%改善されたことがわかる。
はみ出し幅0.5M以下の線交差の地物別改善率を表8に示す。

表8 地物別改善率

要素 総数 修正前 修正後 改善率
さく 1,420 35 4 88.6%
へい 34 2 2 0.0%
記号道路 266 8 2 75.0%
建物 7,277 71 5 93.0%
植生と場地 15,021 84 1 98.8%
石段 28 1 0 100.0%
道路縁(大) 3,371 202 2 99.0%
道路縁(中) 6,081 36 5 86.1%
分離帯 1,376 398 0 100.0%
合計 27,417 837 21 97.5%

 

へいの修正ができないのは道路縁と建物が同一線上にあり、現在のロジックでは、へいを更にその上に重ねることができないため未修正となっている。今後、改善する余地がある。しかし、おおむね目標とした修正ができている。

交差パターンと修正方法

1.線交差

オブジェクトの空間属性が線と線の交差および線と面の交差を線交差と呼ぶこととする。線交差を修正することを考えて6種類のパターンに分類した。

20121026_01.png

図1 線交差のパターン

ここで、オブジェクトのチェインは、座標列の2点を結ぶ線分の連結線分と定義しているので、すべての座標点を端点と表現する。

交差は、交差の回数と、交差後のチェインの端点数によって表現できる。交差の回数は、前回も述べたように、チェインの始点が交差していないとすると次のことが言える。

(1) 交点が1点の場合は、交点以降のチェインの終点までがはみ出していることを示している。
(2) 交点が複数の場合、交点1から交点2の区間がはみ出しいる状態にあり、交点2から交点3の区間がはみ出していない状態にある。
(3) 交点が2点以上の偶数交点の場合は、奇数交点から偶数交点の間がはみ出していて、偶数交点から奇数交点までがはみ出していないことを示している。
(4) 交点が2点以上の奇数交点の場合は、奇数交点から偶数交点の間がはみ出していて、偶数交点から奇数交点の間がはみ出していなく、なおかつ、最後の奇数交点から以降のチェインの終点までがはみ出していることを示している。

修正の原則は、はみ出し区間の交差するオブジェクト間に優位差がある場合と同順位の場合に、はみ出し区間のはみ出し幅が閾値以内(描画誤差程度の現地寸法40~50cm程度を想定)の場合に修正を行う。
図2は、線分kと線分qの関係で優位差がある場合の線分kが優位とした場合と、同順位の場合を示す。また、図2の赤線は修正した線分を示している。

20121026_02.png

図2 交差と修正

注)図2の修正するはみ出し幅は、理解しやすいように実際に修正するはみ出し幅より強調して描いてあります。

1回交差同一辺交差後の端点が1点の場合は、交差する地物の優位差に関係なく、交点以降をカットする。
1回交差同一辺交差後の端点がn点の場合で優位差がある場合は、交差後オブジェクトqのみ出し区間のチェインをオブジェクトkのチェインの線上に移動させる。優位差がない場合には、双方のオブジェクトをはみ出し幅の半分を反対方向に移動させはみ出しを解消させる。
以下、2回交差同一辺交差後1点、2回交差同一辺交差後端点n点、2回交差異辺交差後1点、2回交差異辺交差後n点も上記と同様に、優位差がある場合は、交差後オブジェクトqのみ出し区間のチェインをオブジェクトkのチェインの線上に移動させ、優位差がない場合には、双方のオブジェクトをはみ出し幅の半分を反対方向に移動させはみ出しを解消させる。
また、面と線の交差の場合は、オブジェクトkを面とすると、原則的に面が優先するのでオブジェクトqの交差後のチェインをオブジェクトkのチェインの線上に移動させる。

2.面交差

オブジェクトが異なる場合の面と面の交差で優位差がある場合の修正は、交差後の優位差の低いオブジェクトのチェインのはみ出し区間を、優先順位の高いオブジェクトのチェインの線上に移動させる。
オブジェクトが同種の場合の面と面の交差の修正は、同順位の交差となる。修正は、図3のように行なう。
タイプAは、交差が同一辺にある。このタイプは同一辺の交点がX1,X2の2点で交差し、交差後の端点が1点以上である。
点Q2,Q3それぞれから線分P1P2に垂線を下ろし、どちらか長い距離の半分の距離分だけ線分P1P2を平行移動させ、線分P'1P'2を求める。線分P'1P'2と線分Q2Q3の交点を求め、交点から線分Q2Q3に向かって垂線を下ろし、その距離を求める。求めた距離分だけ線分Q2Q3を平行移動させ線分Q'2Q'3を求める。修正後の形状は、オブジェクトPがP'1,P'2,P3P4、オブジェクトQがQ'1,Q2,Q'3Q4となる。
タイプBは、交点が異なる辺にあり交差後の端点が1点で2つのチェインの交点を結ぶ線分X1X2に端点Pi,Qjが異なる側にあるものをいう。
チェインのはみ出し部分で構成する端点[X1,Pi,X2,Qj]のうち対角となる2点を線分で結び、この線分と選択されなかった2点からの離れ距離をd(A⊥BC)として表現すると、この組合せは以下の4通りがある。

a1=d(Pi⊥QjX2) a2=d(X1⊥QjX2) ・・・①

b1=d(Qj⊥PiX2) b2=d(X1⊥PiX2) ・・・②

c1=d(Pi⊥QjX1) c2=d(X2⊥QjX1) ・・・③

d1=d(Qj⊥PiX1) d2=d(X2⊥PiX1) ・・・④

上記①~④組合せのうち、それぞれ長い方の距離を選択する。

amax=a1 (a1>a2) or amax=a2 (a1<a2)

bmax=b1 (b1>b2) or bmax=b2 (b1<b2)

cmax=c1 (c1>c2) or cmax=c2 (c1<c2)

dmax=d1 (d1>d2) or dmax=d2 (d1<d2)

選択した線分の構成点が同じ端点(PiまたはQj)をもつもの同士で組み合わせる。
各組み合わせの2つの距離のうち、短いものを選択し,その距離の1/2を修正移動距離とする。

tp=bmax/2 (bmax<dmax) or ・・・⑤

tp=dmax/2 (bmax>dmax)   ・・・⑥

tq=amax/2 (amax<cmax) or ・・・⑦

tq=cmax/2 (amax>cmax)   ・・・⑧

選択した短い距離の対辺となる線分を垂直方向に上記で求めた距離分を平行移動させる。
タイプ Bのうち、2点を結ぶ線分の長さをd(A,B)と表現すると、次の条件を満たすものをタイプCとする。

d(X1,Pi)<d(Pi,X2) & d(Qj,X1)<d(X2,Qj)

または

d(X1,Pi)>d(Pi,X2) & d(Qj,X1)>d(X2,Qj)

この場合の修正方法はタイプBと同じであるが、計算式⑤~⑧の移動距離がタイプBではbmax,dmax,amax,cmaxの距離の1/2であるのに対して、タイプCは1であるところが異なる。
交点が異なる辺にあり交差後の端点が1点で、2つのチェインの交点を結ぶ線分X1X2に対して端点Pi,Qjが同じ側にある場合をタイプDとする。
チェインの端点のうち、互いのチェインとはみ出しの端点を結んだ線分PiQjの中点を求め点Aとし、チェイン1の線分Pi-1Piをその傾きを保ったまま点Aを通るように平行移動させた線分をl1とする。同様に線分PiPi+1をその傾きを保ったまま点Aを通るように平行移動させた線分をl2とする。線分Pi-2Pi-1と線分l1の交点をP'i-1とし、線分PiPi+1と線分l2の交点をP'i+1とし、線分l1と線分l2の交点をP'iとする。また、チェイン2も同様に処理し,修正を行う。

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図3 面と面の同順位の交差と修正

注)図3の修正するはみ出し幅は、理解しやすいように実際に修正するはみ出し幅より強調して描いてあります。

3.補正処理

交差が図4のように面オブジェクトの線オブジェクトが面オブジェクトのコーナーを横切る場合、面オブジェクトを面オブジェクトの外周によって修正した場合に、線オブジェクトに微小線分の発生、直線性の喪失が発生する。そこでこのような場合には面オブジェクトの突起している端点を挿入することによって線オブジェクトの微小線分発生の防止と、直線性を維持している。

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図4 コーナーを横切る場合の補正

このように、修正は、オブジェクトの空間属性、オブジェクト間の優位差、交点数、交差後の端点数、修正後の補正等を考慮して行う。

次回は、このアルゴリズムに基づいたツールを使って検証した、実証例について紹介することとする。

交差の修正

1.はじめに

大縮尺の一般図作成は、航空写真測量の写真を基にデジタル図化機で作成することが多い。図化機で作成したオブジェクトは、すべて線分で取得する場合と、線と面で取得する場合がある。しかし、最近の図化機では、データ作成の生産性を向上するため、オブジェクトを線または面で取得し複数の標準的なフォーマットで出力ができるようになっている。
図化機で作成したデータには、オブジェクト間の交差が残っているので、通常は編集機で編集するが、この編集段階での交差の修正作業を自動処理によって交差の解消することを目的としている。
自動修正は、次のプロセスを経て修正される。

(1) 交差抽出と抽出されたオブジェクトに対して、はみ出し幅が閾値以内にあるか判定し、以内であれば次のプロセスへ、閾値以上であれば、非修正として次のオブジェクトの交差抽出を行う。
(2) はみ出し幅が閾値以内の場合には、交差するオブジェクトAB間のはみ出し区間の修正方法を優先順位テーブルによって優先、同等、非修正の判定をする。
(3) 交差パターンを判別し、そのパターンによって決められた修正方法を実行する。
(4) 修正したオブジェクトが修正によって新たな交差が生じていないを品質検査する。新たな交差が生じている場合には交差パターンに戻り、パラメータ等を変更して修正する。新たな交差が生じていない場合には、(1)の次のオブジェクトの交差抽出に進む。

自動修正は、以上のプロセスで行うものとする。

2.交差抽出とはみ出し幅の閾値

通常、大縮尺の一般図作成のための航空写真測量の編集段階で、交差の編集作業は、背景図にオルソ画像等を重ねて編集作業を行ってはいない。これは、作業者が地形をある程度頭に入っていることもあるが、作業規程で地図情報レベル2500では双方のずれが1.75M以下のずれ場合には双方の中間点で結ぶことを規定している等、あえてオルソ画像等を重ねて作業を行う必要性を感じていないように思える。オペレータは長年の経験からあるべき現況を推測して修正しているものと思われる。このことは、修正のロジックをあるべき現況を推測して構築すれば、交差の自動化の可能性を窺わせるものである。
はみ出しが生ずる原因としては、描画の際に生ずる位置決めのあまさと(以下描画誤差という)、思い違い等が考えられる。筆者が調査した岐阜県の24市町村のDMデータ24図郭、587,633要素では、はみ出し幅(はみ出し幅の定義は第2回を参照)が50cmまでの交差エラーがエラー全体の90%を占めていることが分かった。この原因は、実世界の地物が密接している場合、描画の際に生ずる描画誤差や端点の挿入不足によってはみ出しが生じているものと考えられる。しかし、はみ出し幅が大きい場合には、複数の原因が存在し、しかも個々の交差の原因が特定できない。このような状況である特定ロジックで修正を行うと、その修正が必ずしも正しい修正とは限らず、形状の変形や位置正確度のオーバー等が生ずる原因ともなり、むしろ弊害が大きいと考えられる。今までの自動修正の論文を見るとこの点を着目されていないことが課題であった。
そこで、自動修正の対象は、このはみ出し幅が50cm程度の描画の際に生ずる描画誤差程度の修正を対象としてエラー全体の90%程度を修正することを目標とした。
交差判定は、通常の品質検査ツールの交差判定の機能を使って交差のオブジェクトを抽出する。通常の品質検査ツールは、オブジェクトAとオブジェクトBが交差しているか、否かを判定し、交差している時点でエラーと判定すれば良いが、自動修正はオブジェクトの全てのチェインのはみ出し区間を修正する必要から終点までのはみ出し区間を確かめる必要がある。
はみ出しは、空間属性が面と面、面と線の場合は面の領域判定によって、始点が領域内にあるか否かを判別できる。しかし、線と線の場合は領域判定ができない。そこで、始点がはみ出しているか否かを実際のデータで分析したところ、ほとんどのはみ出しは中間点または終点であることが分かった。従ってここでは一義的に、線と線の場合の双方のチェインの始点がはみ出していないとする。
そこで、自動修正を行う範囲を閾値として設定し、閾値以下のはみ出し幅の場合には修正を行い、範囲を超えた場合には修正を行わないこととした。

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図1 はみ出しと閾値の関係

図1は、チェインK,P,Qの始点が交差していないとした場合で、チェインPはチェインKとc1とc2で交点を持ち、チェインQはc3とc4でチェインKと交点を持っている。また、チェインK,P,Qのチェインの端点は番号の若い順番から昇順になっているものとする。また、閾値は、チェインKの等距離にある領域を示している。
チェインPは交点c1で交差し、p2,p3を経由して交点c2で突き出ているので、はみ出し区間はc1からc2となり、その区間にあるp2,p3が閾値の領域の内側にあるので修正の対象となる。
また、チェインQは交点c3で交差し、q2を経由して交点c4で交差している。チェインQは始点が交差していないので、はみ出し区間はc3からc4となり、その区間にあるq2は閾値の領域の外側にあるので修正の対象とならない。
さて、ここで一番心配なのは、線分と線分の交差の場合、一義的に始点は交差していないとしたが、そのことがどのような影響を与えるかについて吟味して見ることとする。
図2は線分と線分の交差状況を示したものである。
線分同士の交差は、始点が交差して“いる”とするか、“いない”とするかで交差区間は全く逆になってしまう。ところが、公共測量作業規程では、オブジェクトのチェインの方向(データをp1~p4またはp4~p1のいずれの順序で取得するか)も規定していないので交差区間が定まらない。
そこで、DMデータを中心にして、多くの交差の状況について調査した結果、交差はチェインの途中の端点で発生しているケースが圧倒的に多いことが分かったので、ここでは一義的に始点は交差していないとすることとした。
では、このように定義した場合のケースについて検討を加えることとする。

20120920_02.png

図2 チェインの交差

図2は線分と線分の交差状況を示したものである。
チェインKとチェインPの始点p1が交差していない場合の求めるオブジェクトのチェインPは、p1,c1,p2,p3,c2またはp1,c1,k2,c2,p4を期待し、チェインPの始点p1が交差している場合には、c1,k2,c2または、c1,p2,p3,c2を期待するものと思われる。
現況がチェインKとチェインPの始点p1が交差していない場合には、p2とp3が閾値以下の範囲にあるので、期待した修正ができる。また、現況がチェインKとチェインPの始点p1が交差している場合には、p1とp4のいずれも閾値を超えているので修正を行わないので、誤った修正を防ぐことができる。
現況がチェインKとチェインQの始点q1が交差していない場合の求めるオブジェクトのチェインは、交点が1点なのでc3,q2,q3,q4期待し、チェインQの始点q1が交差している場合にも、c3,q2,q3,q4を期待するものと思われる。
ここでの修正は、交点が1点で、始点の次に交点がある場合と交点の次に終点がある場合にかぎり、始点q1を交点c3に移動、終点を交点に移動させる。このように処理することによって、端点が閾値を超えている場合には、修正を行わないので、誤った修正を防ぐことができる。
交差前の端点が複数ある場合には、始点が交差していないとして、交差後の端点がはみ出しているものとして処理する。

3.交差優先テーブル

図1のはみ出しと閾値の関係で、チェインKとチェインPのc1からc2の間を修正すれば良いことが分かったが、チェインKのc1,k2,c2間を修正すれば良いのか、チェインPのc1,p2,p3,c2の間を修正すれば良いのかわからない。そこで、チェインK、チェインPのいずれかを修正するかについては、次の考えに基づいて行う。
紙図の表記法を規定した国土基本図図式の図表第2に「双方が立体関係にある場合には、特定の場合を除き、下方の記号を間断して表示する」と表記を規定し、重なった場合の表示方法をA列とB列のマトリックスで例示している。また、準則では、図式の45条等に「交差した境界の下になる部分を間断する」としている。
表記法は、紙図からデジタル情報に代わっても、転移の条項に変化があるとしても、立体関係の表記法は変わっていないと判断できる。
そこで、仮に道路縁をAとし、建物をBとすると、両者が重なった場合に道路縁Aを優先して移動せず、建物Bを道路縁にはみ出さないように道路縁Aに沿って輪郭を修正することとする。この場合の両者の関係をAとBにおいてAが優先しているとする。
また、建物Aと建物Bが重なっている場合は、AとB双方の輪郭を修正する。これ場合の両者の関係をAとBにおいて同位とする。
そして、送電線のようにどのようなオブジェクトと重なっても、重なりを許す関係を非修正とする。
修正は、交差したオブジェクト間の修正するタイプすなわちAを修正する、Bを修正する、修正しない等のタイプを決めたテーブルによって、チェインKのはみ出し区間を修正するか、チェインPまたはQを修正するかを決定する。
このようにオブジェクト間の修正方法を決定するための交差優先テーブルを作成し、それに基づいて交差した場合のどちらのオブジェクトを修正するかを定義することとした。
図1に示す交差優先テーブルの作成は次の考えに基づいて作成している。

(1) 道路中心線は、2線の道路縁で示されるその中心を示す線で、道路縁を交差して道路中心線も交差していることは、前項で述べた閾値を大幅に超えているので、処理時間を節約するため、非修正としている。
(2) 横断歩道橋、地下横断歩道橋、石段同士等の図式で表現しているオブジェクトが交差している場合は、現況が異なる地物の場合と、本来1つの地物を分けて作成しているものか不明なので、ここでは非修正とした。将来的に取得方法(入力ポイント)と図式の関係が標準化された時点で修正することを検討する。
(3) 県市町村界、町字界は他のオブジェクトと交差を許しているので、非修正とした。

表1 交差優先テーブル

地物型名


(中)





(中)













































道路縁(中) 1                          
道路中心線(中) 1 1                        
記号道路 < × 1                      
建設中の道路 < × > 1                    
道路のトンネル > × > > 1                  
横断歩道橋 × × × × × ×                
地下横断歩道 × × × × × × ×              
石段 < × × × × × × ×            
地下街・地下鉄等の出入口 < × × × × × × × ×          
県市町村界 × × × × × × × × × 1        
町字界 × × × × × × × × × × 1      
軌道 < × < < < < < < < × × 1    
鉄道橋 < × < < < < < < < × × × 1  
建物 < × < < < < < < < × × < < 1

表の>は左のオブジェクトが優先、<は上のオブジェクトが優先、1は同順位、×は非修正を示している。
このようにオブジェクト間に交差があった場合、交差優先テーブルに基づき交差したどちらのオブジェクトのチェインを修正するかを定義している。

交差エラーとは

1.交差をしてはならないとしているが

公共測量作業規程の準則は、5条の3項で「計画機関は、得ようとする測量成果の種類、内容、構造、品質等を示す仕様書(以下「製品仕様書」という。)を定めなければならない。」と規定している。しかし、筆者が調査し以前に報告した内容(空間データの品質の第4回)では、ほとんどの計画機関が製品仕様書を作成していないと回答している。
準則は、品質を公共測量標準図式の45条、線の連続性で次のように規定している。

(1) 連続するデータは、座標一致で連続しなければならない。
(2) 真幅道路等は街区面が構成できるように、袋小路や施設入り口等の表現上、開放部においても当該取得分類に間断区分を設定して取得するものとする。
(3) 河川等において道路橋等の下を通過する箇所は、間断区分を設定して取得するものとする。但し、出入り口の調査が困難な用水路等はこの限りではない。
(4) 線の中間に別の線データが接する場合には、別の線データの端点座標は、接する線の線上になければならない。

また、46~48条には射影のある非対称記号、面データの特例、座標の方向について記載がある。このように交差に該当する部分は、(4)の線の中間に別の線データが接する場合には、別の線データの端点座標が接する線の線上になければならないとしている。ところが、この線上になければならないということが、ほとんどの確率で不可能である。
交差とは次のように定義することができる。
面オブジェクトは、その周辺境界を表現するのに、端点のみで2直線分が接続する閉じた連結線分群で、また、線オブジェクトは、端点のみで2直線分が接続する連結直線分群で表現し、それらの線分群をチェインとする、また、オブジェクトは,分岐やドーナツ状になっている内側の穴(ホール)の表現等で複数の連結直線分群で構成したものを1つのオブジェクトにするマルチパートも含む。
面オブジェクトのチェインが、閉じた連結直線分群で構成しているとすると、面オブジェクトと面オブジェクトの交差とは、それぞれのチェインが共通点を持ち、面オブジェクトAのチェインを構成する線分の端点(以下,チェインの端点)が、面オブジェクトBのチェインの内部にある場合をいう。また、面オブジェクトと線オブジェクトの交差とは、線オブジェクトのチェインが面オブジェクトのチェインと共通点を持ち、線オブジェクトのチェインの端点が面オブジェクトのチェインの内部にある場合をいう。そして、線オブジェクトと線オブジェクトの交差とは、それぞれのチェインの端点以外で共通点を持つ場合をいう。
そこで、航空写真測量における入力単位と描画端点とファイル上のチェインの端点の関係について説明することとする。
図1は、チェインabの線上にチェインcdのd点を一致させる場合の課題を例示したものである。図の破線で示されたグリッドは、入力単位を示している。作業規程の準則では、入力単位の最小値が1cm又は1mmと規定している。
図1で、チェインabの途中の線上にチェインcdを描画しようと場合、チェインabの線上のd点が入力単位のグリッド上にないため、結果的にファイル上のチェインの端点の座標はグリッド上の座標でしか記録されないので、d1~d4のいずれかの端点座標が記録される。ここで、チェインabとチェインcdの交点からd1またはd2をはみ出しとし、その幅または長さをはみ出し幅p1と表現することとする。
チェインabとチェインcdの交差をなくすためには、d点が必ずグリッド上の座標であることが必要であるが、作業規程では交差する双方のチェインに交点d点を挿入することを規定していないので、はみ出しとはみ出し幅p1が存在する。従って、チェインの途中で接続する場合で、数学的にチェインabとチェインcdに交点が存在し、p1がp1=(√2)/2以内のはみ出し幅のある場合の修正は、不可能と考えなければならない。

20120822_01.jpg

図1 入力単位と端点の関係

なぜなら、この概念は交差の修正を行う場合に大変重要で、入力単位×(√2)/2 以下の場合を修正しようとしても、解が見つからず無限ループに落ち込むからである。
論理一貫性の位相一貫性の交差の判定がプログラムで判定することが一般的である。しかし、多くの品質検査ツールは、はみ出し幅0mmで判定している。
筆者がある自治体の全域のDMデータを調査した交差の誤率は次の通りであった。

表2

対応 総要素数 エラー数 誤率
はみ出し幅0mmをエラーとして検査した場合 350,257 216,567 61.8%
はみ出し幅が10mm以上をエラーとした場合 350,257 780 0.2%

 

このデータを見ても、修正不可能な入力単位以下の交差がいかに大半を占めていることがわかる。
筆者は、例え数学的に交差があるとしても、修正不可能な交差は、作業規程が間違っているのであって、エラーとはみなさないという見解である。また、品質検査ツールがはみ出し幅を0mmとして判定を行った場合は、入力単位以下の交差をエラーとしているが、目視によってOKエラーとしている。目視の時間(製造者にとって時間はお金である)と、その目視判断の結果が品質に重大な影響(合格のものを不合格とし、不合格のものを合格とする)を及ぼすこととなる。最初からOKエラーとするならば、品質検査ツールにその機能を持たすべきであると考えている。
市場に出回っている品質検査ツールの点検と、エラーの定義の見直しを行う必要があると考えている。また、筆者は交差のエラーを"はみ出し区間におけるはみ出し幅が入力単位×(√2)/2 以上の場合をエラーと定義する"ことを主張するものである。

2.交差パターン

交差の種類を表1で示すように分類することができる。

表1 空間属性と交差の関係

空間属性 線と線
交差回数 1回交差(奇数交差) 2回交差(偶数交差)
交差辺 同一辺 同一辺 異辺
交点後端点数 1点 n点 1点 n点 1点 n点
空間属性 面と線
交差回数 1回交差(奇数交差) 2回交差(偶数交差)
交差辺 同一辺 同一辺 異辺
交点後端点数 1点 n点 1点 n点 1点 n点
空間属性 面と面
交差回数 1回交差(奇数交差) 2回交差(偶数交差)
交差辺 存在しない 同一辺 異辺
交点後端点数 存在しない 存在しない 1点 n点 1点 n点

 

交差には、空間属性が線と線、線と面、面と面の交差がある。
交差の特徴を述べるには、最初のチェインの端点が交差しているか否かが重要で、面と面面と線の場合は領域判定によって交差の状況を判定できる。しかし、線と線の場合は交差がわからない。そこで、ここでは、線と線の交差では、最初のチェインの端点が交差していないと仮定した場合について述べる。

(1)交点回数は、奇数回と偶数回がある。
(2)交点が1回の場合は、交点以降のチェインが交差している状態にある。
(3)交点が2回以上の交点が偶数回数の場合は、奇数交点から次の交点(偶数交点)までが交差している状態で、最後の偶数交点から最後の端点までが交差していない状態である。
(4)交点が2回以上の交点の奇数回数の場合は、奇数交点から次の交点(偶数交点)までが交差している状態で、最後の奇数交点から最後の端点までが交差していない状態である。

交差後のチェインの端点数に着目すると、次の特徴がある。

(1)交差後チェインの端点が1点の場合と、数回存在するn点の場合がある。
(2)交差は、交点が相手側の同じ辺に交点がある場合と、異なる辺に交点がある場合がある。

これらの代表的な交差パターンを図2に示す。

20120822_02.jpg

図2 交差例

3.はみ出しとはみ出し幅

はみ出しとはみ出し幅とは次のように定義する。
はみ出しとは、面オブジェクトAと面オブジェクトBが交差している場合、面オブジェクトAのチェインが面オブジェクトBの内部にあるチェインを、面オブジェクトAが面オブジェクトBにはみ出したチェインと呼ぶこととする。同様に、面オブジェクトBのチェインが面オブジェクトAの内部にあるチェインを、面オブジェクトBが面オブジェクトAにはみ出したチェインと呼ぶこととする。また、面オブジェクトと線オブジェクトが交差している場合、線オブジェクトのチェインが面オブジェクトの内部にあるチェインを、線オブジェクトが面オブジェクトにはみ出したチェインと呼ぶこととする。
線オブジェクトA,Bが交差している場合,交差を境に交点の前後のいずれがはみ出しているかを特定できない。しかし、筆者が線交差のエラーを分析したところでは、オブジェクトのデータを入力する際に最初に入力した点をチェインの最初の端点とすると、最初の端点は、はみ出している例はほとんどなく、それ以外の端点でのはみ出しが圧倒的に多いことが分かった。そこでここでは、線オブジェクトA,Bのチェインの関係において、線オブジェクトA,Bのチェインの最初の端点が交差していないと仮定し、線オブジェクトAのチェインが線オブジェクトBの奇数交点から偶数交点までのチェインが線オブジェクトAにはみ出したチェインと呼ぶこととする。同様に線オブジェクトBのチェインが線オブジェクトAの奇数交点から偶数交点までのチェインが線オブジェクトBにはみ出したチェインと呼ぶこととする。また、はみ出し幅とは、はみ出しにおける一方のチェインの交差後の端点から他方の線分に下ろした垂線の足までの距離のうちで、一番長いものとする。
例えば、これを図で示すと、図3は、交差のはみ出しとはみ出し幅を示したものである。直線Aと直線Bは●が始点で、矢印がチェインの方向を示し、それぞれの始点ははみ出してしていないものとする。はみ出しの区間は、交点1から交点2までと、交点3から交点4までの区間で、交点1~2区間のはみ出し幅は一番長いp、交点3~4区間のはみ出し幅は一番長いqとする。

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図3 交差のはみ出しとはみ出し幅

これからシリーズで述べる交差の自動修正ツールの交差の定義は、この考え方を前提としているのでぜひ、記憶にとどめておいていただきたい。

開発の経緯

1.はじめに

筆者は統合型GISの導入を図るため、NSDIPAの一員として活動していたが、その時感じたことは、一般産業界では、社内の生産部門ごとにプロセス管理を行い、出荷する際に企業として品質保証部門が製品としての品質検査を行っている。しかし、空間データの生産は、部門ごとのプロセス管理の結果が発注者に提示されるようになっている。このため生産部門のミスが企業の直接対外的な信用度に影響してしまう欠点を持っている。空間データの品質が必ずしも満足されていない現状を考えると、このような二重チェック体制が必要であると立場から、統合型GISでは、空間データの品質を従来のプロセス管理から、品質管理にすべきであると主張していた。その結果として、公共測量作業規程の準則では、このような二重チェックの品質検査も取り入れられていると考えている。
一方、GISを導入する障害として空間データの整備費の削減が求められていた。従って、統合型GISを推進するためには、整備費の8割以上を占めるデータ整備費の削減と、空間データの品質を向上させる必要があった。

2.2004年当時のDMデータの品質

2004年に24市町村のDMデータから任意に1図郭を抜き取りの品質検査を行った例である。作業機関は、大手を含む7社が作成したもので、作成年度は、1999年度から2003年度までのデータである。また、このDMデータは第三者機関の検査結果が合格としたデータである。上段の10mm,50mm,100mm・・・・・はそれ以上の距離をエラーとする値である。

エラーの種類別誤率

検査内容 検査数 10mm 50mm 100mm 200mm 400mm 600mm 750mm 1000mm
線分の交差 587,633 3.99% 2.65% 2.00% 1.31% 0.70% 0.42% 0.32% 0.22%
線の連続性 587,633 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27% 7.27%
面の交差 91,897 2.68% 1.22% 0.62% 0.28% 0.11% 0.06% 0.05% 0.03%
微小線分 587,633 0.02% 0.11% 0.24% 0.54% 1.23% 2.10% 2.77%  
検査内容 検査数 誤率
自己交差 587,633 0.21%
とげ 587,633 0.08%
始終点不一致 91,897 24.44%

 

このように、エラーの大半は線の交差、面の交差、線の連続性であることがわかる。線の連続性は、地物が同じで、始点と終点が一致する場合に1つの地物として修正すればよいので簡単にできる。
そこで、交差の自動修正に取り組むこととした。交差の自動修正に取り組むには、交差の事例を調査分析し、そこに普遍的な性質を見出す必要がある。

3.交差の自動修正ツールの開発経緯

当時の公共測量作業規程は、プロセス管理で行われており、その多くは抜き取り方式でかつ、目視検査で行われていた。目視検査は必ずしも悪いとは言わないが、目視検査の結果でもエラーが残っている現実を考えると、検査方法にも課題があると考えた。
位相一貫性では、地物が位相属性を含む幾何属性の一貫性が保たれていることを要求しており、地図情報レベル2500の製品仕様書では適合品質要求は0%を要求している。
この品質要求は、それまでの品質と比較すると、青天の霹靂ともいうべき要求であり、位相一貫性の品質要求を%とすると、目視による修正では多大なコストが必要であることが想定される。
一方、2000年以降、データ整備費・更新費の単価は、年々下がり、併せて自治体の発注量の減少も伴い、作業機関の収支も悪化の一途をたどってきている。そのためか、海外生産が盛んになってきた。筆者は作業機関とは製造メーカであると考えている。製造の要は生産技術である。このまま行けば、測量業は衰退してしまうことを深く憂いているものである。そこで、複数の大手作業機関のトップとお会いして、線交差と面交差の自動修正プログラムの共同開発を打診した。ところが、筆者の仁徳のいたらないためか、技術担当役員、および技術部長のお話では、これらの自動修正プログラムの開発は技術的に不可能であるとの見解から、参加できないとのお話であった。しかし、地理情報のGISを推進するためには、品質の向上とコストダウンを図る必要が絶対的条件であると考えた。幸いにも、アイサンテクノジーが理解していただき、筆者と共同で交差の自動修正ツールを開発することとなった。

4.品質検査ツール

交差の自動修正をツール作成するには、順序としてエラーの抽出を行う必要がある。エラーの抽出とはすなわち品質検査ツールである。この品質検査ツールの内容については、地理情報システム学会のGIS-理論と応用のVol.16 No.1で発表している。
この品質検査ツールは、2004年には岐阜県の統合型GISの共有空間データの受け入れ検査に活用されたが、その特徴は、後に基盤地図情報(原型DB)製品仕様書でも取り入れている交差の閾値を設けているところにある。
交差に閾値を設けた理由は次のとおりである。

20120801_01.png

例えば、図は線分cdのd点を線分ab上に接続したいとする。ところが、図の破線で描かれたグリッドは入力最小単位とすると(例えば、縮尺2500のDMでは、1cm)実際に記録される d点はd1~d4のいずれかになってしまう。この場合、d1,d2は交差していることになり、d3,d4はダングロ(アンダーシュート)となってしまう。公共測量作業規程に交わる際には、必ず、双方の線分に同一点を挿入しなければならないことを規定しない。
従って、交差はほとんどの場合に発生する。このため、多くの品質検査ツールでは、このような場合にエラーとして扱い、取り除くことができないのでOKエラーとして報告している。この種のエラーが1図郭で数百か所に及ぶ。OKエラーがこのように沢山あると、OKエラーの内容によって品質の評価が異なってしまうことになる。
第三者機関にしても、発注者にしてもOKエラーが数百か所あるけれども、合格ですと言われて、ではどのように確かめるのか。大変な問題である。
そこで、理論的に交差をなくすことができないのであれば、交差していても、ある一定の距離までであれば(この値を閾値とする)、OKとする判定式を作成するとした。
線分cd1またはcd2が線分abと交差して交点からd1または交点からd2までの距離が閾値以下であれば、エラーとしない、とする判定方式である。その後、この考え方は、基盤地図情報でも採用されている。

次回から5回に渡り、交差の自動修正を行うために、交差のどのような点に着目し、どのような普遍性に着目してプログラム化を行ったかについてシリーズでお伝えしたいと考えている。

空間データの品質向上に関する記事を公開していく予定です。