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空間データの品質

地理情報の様々な標準規格や仕様に際して守るべきルーを決めたJPGISが定められています。それに合わせて、平成17年に地図情報レベル2500データ作成製品仕様書(案)が、平成20年に作業規程の準則が告示されています。これらの規程及び仕様書には、品質規定が明記されています。しかし、計画機関の製品仕様書や品質評価手順書の整備があまり進んでいないようです。そこで、今回は空間データの品質の最終回として品質を取巻く環境について考えたいと思います。

ほとんど市町村で製品仕様書が作成されていない
筆者の調査でも、第三者機関への聞き取り調査でも、市町村が作成する地形図(DM)は、ほとんど製品仕様書を作成しておりません。従来のプロセス管理の手法で作成しています。
国土地理院の方々もずいぶん苦労されて、製品仕様書の講習会を開催しています。しかし、市町村の出席率は極端に悪いようです。その原因は、市町村の担当は業務上で地図を利用することに対して精通していますが、地図を作る技術について手が回っていません。なぜ手が回らないかというと、3年から4年で担当が変わりますから、業務を精通することが最優先で空間データを作成するための測量のことを勉強することは二の次の状態にあります。
従って、市町村が製品仕様書を自ら作成することはほとんど不可能の状態にあると言っても良いでしょう。
実は、市町村でも、発注物件の納品物に製品仕様書の作成を記述している場合があり、すでに製品仕様書が用意されている場合があります。しかし、次の発注にその製品仕様書が使われていないケースがあります。それは次の理由によると考えられます。
(1) 製品仕様書の内容が理解できない。
(2) 理解できたとしても、その製品仕様書が今回の案件に適合しているかわからない。
(3) 庁内決済を得るために、製品仕様書の内容を説明できない。質問に答えられない。

なんといっても、製品仕様書に記述されているXMLは、地方公務員にとってハードルの高いものがあります。地方公務員の技術系職員が、測量やXMLをマスターし、待遇面で優遇されたとしてもマスターすべき最優先課題は、業務に精通するにあります。このようなことから、地方公務員の技術職がXMLの技術をマスターすることに悲観的にならざるを得ません。
一方、空間データを作業機関の生産設備は、XMLで記述した生産システムで生産しているわけではありません。XMLは文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つです。従って、生産システムがXMLで動いているわけではなく、生産した空間データから空間データやメタデータをXMLフォーマット変換に変換しています。同様にGISもXMLフォーマットを読み込めるようにしているにしているにすぎません。
このように考えると、製品仕様書の実施率を上げるためには、次の選択を行う必要があるのではないかと考えています。
(1) XMLを理解した人材がいる部門に空間データ整備の所管を移し、そこで集中的にかつ恒久的に人材を確保する。
(2) 発想を変えて、製品仕様書の形式をXML形式ではなく、自治体の担当者がわかるような書式で行う。
前者は、空間データを整備・更新している部門が複数の部門に渡ります。そして、自治体はXML方式の製品仕様書をそれぞれの担当部門が理解し運用することが困難と考えます。そこで、空間データを整備・更新する部門を統合して、その部門がリテラシーを向上させることによって運用するという考え方です。この方法は、空間データの整備・更新のことだけを解決するには、良い解決策の一つであることは間違いありません。しかし、実現性となると、かなり難しく、庁内の意見の一致をみるまでに、かなりの時間とエネルギーが必要となります。
一方、後者は、自治体の空間データ整備・更新部門がXMLの理解すること自体が困難であると考え、自分たち自身の身の丈に合った製品仕様書で運用しようとする考え方です。
この方法は、前者と比較して容易に自治体の担当者が理解できる仕様書を作ることができます。筆者も幾つかの自治体に対して基本仕様書という形で作成して、利用いただいております。従って、自治体の皆さんが理解でき、作業機関へのポイントをきちっと抑えた情報を記載した方法としてこの形式をお薦めます。

作業機関は品質を軽視していないか
筆者の経験と、第三者機関への調査結果でも、品質検査及び品質検定を一回で合格することがまれです。
石油ストーブ、自動車等に見られるように一般産業界の企業において、品質管理はもし事故を起こしたら企業の存続に影響を与えかねないだけに、大変重視しております。また、自治体が発注する土木や建築案件が、検査に不合格になった場合には、次年度の入札に参加することができなくなる場合があります。しかし、空間データは間違っていても、人が死なないためか、このような不合格、又は納品後に欠陥が見つかった場合でも、入札参加資格を停止するという措置を行った例を見たことがありません。このように品質の良否が企業経営に影響を与えていないことが、1回で合格していないことに影響しているのでしょうか。
入札参加資格の停止はともかく、作業機関が社内検査で合格としたものが、第三者機関で不合格とされている現状は、正常な状態ではありません。作業機関の中には、第三者機関の判定に、不満をもつ方もおいでになりますし、同様に、第三者機関の方にも、どうして1回で合格するデータを提出しないのか不満を持つ方もいらっしゃいます。
筆者は、ヒヤリングをした第三者機関の方々に、温情で合格するまでの複数回の検査費用を無償にしているようですが、そのことが作業機関の品質向上を遅らせていると申し上げました。例えば、作業機関が検定を合格するのに3回要したとすれば、その費用はばかにならず、経営者は、必ず1回で検定を合格するように社内の調査と対策を立てざるを得ないでしょう。一体、作業機関の経営者の方で、自社の空間データの品質検定の結果が何回で合格しているかをご存じの方は何人居られるでしょうか。
品質検定を1回で合格しないことは、業界全体と第三者機関を交えて原因の調査と対策に取り組む問題ではないでしょうか。業界の努力に期待したいものです。

1つの空間データを異なる検査プログラムで処理した結果は同じ結果になるのか
筆者がGISのコンサルタントをしていると、作業機関から “品質検査のプログラムはどのプログラムを使っていますか”という言葉を聞きます。また、“そのプログラムで検査しますから、それをください”とおっしゃいます。
また、第三者機関への調査では、第三者機関が同じ空間データをそれぞれが検査を行って、その結果が全ての第三者機関で同じ結果となるかを調査したことはないと言っています。
このことは、何を意味するかといいますと、作業機関は、自身が持っている検査プログラムの仕様と、計画機関あるいは第三者機関が持っている検査プログラムの仕様が異なっているということを、経験的に知っているのではないかと推測しています。なぜなら、完全性の検査、論理一貫性の位相検査で指摘したように、エラーの定義が統一あるいは規格化されていないことにあります。従って、現状では、同じ空間データを異なる機関が検査した場合に、異なる結果が出ることが当然の結果であると考えています。

このような現状を考えると、早急に次の作業を行う必要性があると考えています。
(1) エラー定義を統一あるいは規格化する。
(2) 同じ空間データ(標準検査用空間データ)で第三者機関、作業機関、計画機関の所有しているプログラムで処理して、それぞれの結果がどのように異なるかを分析し、問題を抽出する。
(3) 検査プログラムのガイドラインを作成する。
(4) 検査プログラム開発者は、このガイドラインを満たしていることを明示する。
(5) 社内検査には必ず検査プログラムの名称とガイドラインの内容を明示する。

エラーの定義は、一度で終わるものでなく、仕様の変更や、今まで見過ごされていたものが発見されることが予想されます。そこで、エラー定義を管理運営する機関を設ける必要があります。この機関を仮にA機関とします。計画機関、及び第三者機関が新たなるエラーが発見された場合には、A機関に報告するものとします。A機関は報告を受けて、ニュースレターを発表することとします。品質検査プログラム開発者は、この情報によりプログラムの対応と処置を行い、その改良したプログラムの検定をA機関に持ち込みます。A機関は、テストデータで試験を行い、ニュースレターの内容が処理されているかを判定して、承認を行います。
従って、国土地理院、第三者機関、計画機関は、検査した検査プログラムのリリースバージョン又は承認番号によって成果物の信頼性を知ることができます。
このようなシステムを作り上げることによって、品質結果の水準を一定に保つことができると考えています。

おわりに
品質は空間データの要です。そのためには、計画機関である自治体が理解できる製品仕様書でなければなりません。また、関係者が一致して共通のエラーの定義を明確にして、その定義を厳格に運用した検査ソフトによって品質検査を行ってこそ品質が保たれるものと考えています。そのようにすることによって、初めて公正なる品質が維持できるとものと信じています。


9回に渡り『空間データ品質』についてお付き合いいただきまして、ありがとうございました。今回で『空間データ品質』を終了させていただきます。
調査等に2カ月程準備をいただい

第8回 位置正確度検査の課題と提案

位置正確度の検査は、JPGISでは絶対位置正確度と相対位置正確度を行うことになっています。絶対位置正確度とは、検査対象の絶対位置の真又は真と見なす座標がわかっている場合に、座標値と真又は真と見なす座標を比較して誤差を求めることを言います。また、相対位置誤差とは、任意に決められた原点と品質評価の対象となる相対位置の真又は真と見なす座標がわかっている場合に、相対位置と真又は真と見なす座標を比較して誤差を求めることを言います。しかし、位置正確度については、実際の方法を調べてみると多少問題があるように思います。そこで、ここでは、位置正確度の検査の現状と課題を提起させていただきます。

位置正確度1.75mの疑問

測量機器の進歩は、フイルム撮影から、GPS付デジタル撮影へ、アナログ図化機からデジタル図化機へ、平板測量から、GPS測量へと目覚ましいものがあります。しかし、昔から縮尺1/2,500の位置正確度は、機器が進歩して、精度も上がっているはずなのに、変わらず標準偏差で1.75m以下とはどうしてでしょうか。
筆者の知る限りでは、少なくとも30年以上変わっていないのではないでしょうか。変わっていないということは、①位置正確度が昔は入っていなかったが、今ようやく精度に入るようになった。②位置正確度が昔も今も入っている。のいずれかでしょうか。しかし、残念なことにデータがありませんので比較することはできません。真剣に検討して見る必要がなると考えています。
次に、標準偏差で1.75m以下ということは、一部の空間データの位置正確度が3mや5mのずれがあっても“良し”としています。しかし、一方で、接合は、両者の線分が1.75m以内のずれ場合に両者のずれの中間線で接合することになっています。但し、1.75m以上のずれがあった場合には、測量等をし直して接合するようになっています。このことに筆者は、矛盾を感じています。位置正確度で標準偏差1.75m以内なら合格であるとするなら、接合も両者の中間線で接合すれば良いわけで、1.75m以上のずれの場合に接合しないとするなら、位置正確度の標準偏差をなくして、位置正確度の仕様を1.75m以下とすれば良いわけです。
空間データを利用する人にとって、着目する地物とその座標はそれぞれ異なります。位置正確度の誤差が1.75m以内のあると思って解析したところ、その点が万に1つの5mもずれていたのでは泣くに泣けないでしょう。
位置正確度ではOKを出しておきながら、接合ではNOとする矛盾をなくすためにも、位置正確度から標準偏差を取るようにすべきだと考えますが、現状の技術では出来ないものでしょうか。できないとしたら、何を改善しなければならないでしょうか。

最近起きた事例

筆者がコンサルを行っているA市で発生した事例についてご紹介いたします。
A市で、地形図の更新を行うため、国土地理院に地形図更新の実施計画書を申請し、国土地理院からは、次の助言をいただきました。
助言には、“隣接地域に基盤地図情報があるので、境界部において位置座標を基盤地図情報に接合されたい。”
しかし、筆者は、この助言に対して次の疑問を感じています。

  1. 境界部を基盤図情報に接合させることは、新しいものを古いものに合わせるということで、隣接部の経年変化を無視することになり合理的でない。
  2. 境界部を基盤図情報に接合させることは、一元的に基盤地図情報の隣接地域の位置座標が正しいという前提であり納得できない。

A市の地形図の整備更新は、市域の外側10mの全地物の取得、道路、鉄道については50mまで整備することになっています。従って、完全に隣接市と空間データがオーバーラップすることになっています。また、新規の場合の位置正確度の検査は、GPS測量で1図郭2点以上を行い、更新の検査は、GPS測量で加除訂正箇所の5%以上を行うことになっています。また、毎年度オルソ画像を1/1,000の精度で作成しています。
隣接付近のA市が行ったGPSデータと空間データ7点の差は0.07m~0.30mの誤差に入っていますが、基盤地図情報とGPSデータの差は、0.73m~2.3mとなっています。
もちろん、地図情報レベル2,500の位置正確度は、標準偏差で1.75mとなっていますので、2.3mの誤差のものがあっても、位置正確度を満足していないと言うつもりはありません。しかし、接合は、正しい方に悪い方を合わせるしかないと考えています。
ちなみに、岐阜県では、複数の異なる計画機関(市町村、県)が作成した空間データから県域統合共有空間データの更新における更新部分と非更新部分との接合は、全体調整として別に整合作業を行っています。整合作業は、どちらの位置正確度が高いかを調べて、精度の高い方に合わせていていますが、そのためには、作業機関における社内検査時の現地測量、受入品質検査時における現地測量のデータは有効な情報と言えるでしょう。

第三者機関による検査方法

第5回に「第三者機関の測量成果検定と課題」で、調査した3機関のDMデータの位置正確度の検査方法は、①基準点の検査、②測量成果簿の検査、③検査していない、のいずれかの方法で検査しています。DMデータは、写真測量によって空間データを作成しているので、これを前提として話を進めます。
第三者機関が位置正確度を検査していないことは、問題外ですが、基準点の検査、測量成果簿による点検にしても問題があると考えています。
位置正確度を基準点の検査で行っているということについては、アナログ図化機で作成していた時代は、地上に対空標識を設置して基準点、水準点、標定点をもとに調整計算を行ってきました。しかし、最近の撮影は、GPS/IMUを搭載した機器で行っており、対空標識はほとんどの場合に設置しておりません。基準点は、単にその座標を空間データとして取り込んでいるだけであり、図化機からの読み取りや、現地測量等の他の地物の座標とは独立して存在している関係にあります。従って、空間データ上における基準点の位置が精度内に入っていると言っても、それ以外の地物が精度以内に入っているという保証は何もないというのが現実です。従って、基準点の検査は位置正確度の検査としては全く意味がありません。
また、位置正確度を測量成果簿の点検で行っているということについても、問題があると考えています。なぜなら、準則では、絶対位置正確度は、地物の位置の座標と、より正確度の高い参照データの座標との誤差の標準偏差を計算することになっており、絶対位置正確度の計測では、図化機による写真画像からの計測ではなく、別の計測方法によって取得した座標と空間データの値との比較によって算出すべきであると考えています。
位置正確度の検査方法は、第三者機関でも、作業機関でも準則に基づいて行われていません。従って、位置正確度の検査方法については、問題があると考えていますが皆様はいかがお考えでしょうか。

提案する検査方法

筆者は、検査とは、絶対的に正しい真値、又はそれに近い値と、検査する成果物とを比較して、許容値に入っているかを調べることにあります。そのためには、作成時と同じ方法で行ったのでは、作成に係る誤差が含まれており、検査とは言えません。位置正確度を検査する場合に、写真で検査しても、そこに含まれる誤差は、写真が持つ誤差と、オペレータの位置決めのための誤差が含まれています。準則では、写真測量の調整計算は、基準点のどれか1点を用いて調整計算を行った後、その他の点を検証点として精度点検を行い、GPS/IMUにおける検証点の許容標準偏差は、地理情報2,500レベルで水平位置が0.9m以内と規定しています。また、調整計算簿を用いて点検を行い、精度管理表を作成し、その値が地理情報2,500レベルで水平位置が0.75m以内と規定しています。ご理解いただきたいことは、これから、取得したい空間データの原典資料は、本質的に地理情報2,500レベルでは、水平位置が0.75m以下の誤差を含んでいる可能性があります。この0.75mは地図情報レベル2,500の許容誤差の43%にあたります。従って、位置正確度の検査は、この誤差を含まないものと比較する必要があると考えています。図化機で検査した場合には、その誤差は、単にオペレータの位置決め誤差を計測したにすぎないことを理解して欲しいものです。
そこで、筆者は、位置正確度の真値を求めるため、GPSによる現地測量を行って、その値と空間データの値を比較することにしています。
岐阜県では、県域統合共有空間データの整備の当初から位置正確度の検査をGPSによる現地測量と空間データを比較して検査することにしています。但し、現地測量の課題は、私有地に入れないという課題があり、現状では、道路の現地測量に限られています。

おわりに

位置正確度は、測量機器が発達してきているにもかかわらず、長年に渡って“入っていない”“隣の市町村と合わない”という声が言われ続けてきました。しかし、残念なことにいまだその位置ずれの原因分析が完了しているとは言い難いものがあります。
位置正確度の検査方法は、地図情報レベル2500データ作成製品仕様書(案)では、“ロットごとに、ロット全体の面積の2%の検査単位を抽出する。検査単位の 1/2(1%分)は監督員が指定するメッシュを対象とし、残りの1/2(1%分)は無作為抽出によってメッシュを選択する。無作為抽出は、250m メッシュに一連の番号を付し、乱数表を使用して抽出する。ただし、不適当なメッシュを抽出した場合は、隣接メッシュを採用する。”
また、基盤地図情報では、“2%のうち,半分の1%は監督員の任意抽出,1%は無作為抽出で抽出する。検査単位の抽出は,地理情報レベル 2500 の場合,整備地区を経緯度方眼(3 次メッシュを横3 等分,縦2 等分:東西15”×南北15” 東京付近で東西約 380m×南北約 460m 約0.175k ㎡)または距離方眼(長辺500m×短辺400m 0.2k ㎡)で区切り,地区の左上方隅より順次一連番号を付し,監督員が危険度の高い地域から任意に1%を抽出し,別に乱数表により無作為に1%を抽出する。”としています。
しかし、この表現で不足している情報は、①位置正確度の検査は、全地物に対して行うものか、特定地物に対して行うものか、わからない。②1%とは、その分母は全地物数なのか、特定地物数なのかわからない。このようなあいまいさが、検査密度をどんどん粗くする要因となっているように思います。
筆者は、この抽出数(%)がどのような根拠で決まったものかわかりません。しかし、現実の問題として、位置正確度の誤差が発生しております。このようなことから、誤差の発生源の基礎的調査の上で、抽出数を再検討する必要があるのではないかと、考えております。

第7回 論理一貫性検査の課題と提案

 

論理一貫性の検査は、JPGISでは書式一貫性、概念一貫性、定義一貫性、位相一貫性を行うことになっています。書式一貫性、概念一貫性、定義一貫性は、完全一致ですから問題がなく、実施されているように思われます。しかし、位相一貫性については、多少問題があるように思います。そこで、ここでは、位相一貫性の検査の現状と課題を提起させていただきます。

位相一貫性の誤差とは

空間データを作成すると、空間データの地物自身と地物相互の関係において、重複取得、データの取得方向(時計回り、反時計回り)、同一地物の複数線分構成、交差、アンダーシュート、自己交差、微少線分、トゲ、建物等の鍵廻り等が起こります。

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図1誤差の種類

重複取得とは、図1の重複で示すように同じ地物を複数回取得していることを言います。重複取得は必ずしも形状が同一とはかぎりません。また、交差がない場合もあります。
データの取得方向とは、地物の座標を取得する場合に、始点から時計方向に回るように取得することを言います。一般的にポリゴンの場合は、時計方向を取得し、ホールを反時計方向に取得することを指定しています。この方向がばらばらになると、形状の認識が異なることになりますので大きな影響を与えます。
同一地物の複数線分とは、1つの地物を示すのに、複数の線分で始点と終点を同じくして、地物を表すことを言います。線で取得した空間データを利用者がポリゴン化する場合に影響があります。また、1つの地物を複数の地物で取得すると、空間上で数を検索する場合に誤った個数となってしまいます。
交差とは、地物と地物が重なり又はオーバーシュートしていることを言います。
アンダーシュートとは、本来交わるものが交わらないで手前でストップしていることを言います。線分がアンダーシュートしているとポリゴン化できませんし、ネットワークを作りたい場合には、ネットワークができなくなります。
自己交差とは、線分またはポリゴンがねじれて線分自身が交差を持つことを言います。
微少線分とは、地物を短い線分で構成することです。筆者の経験で等高線を現地寸法で20〜30cmの線分が多数存在して、このため空間データの容量が1.5倍にもなってしまった納品物に出くわしたことがあります。また、道路を取得時にアンダーシュートが発生したため、それを計算処理でアンダーシュートを解消したのは良いのですが、最後の座標(p1)を交差する道路に移動せずに、最後の座標の後に交点(p2)の座標を追加しているため、P1−P2の距離が微少線分となっている例等があります。これらは、いずれも、精度に影響のない無意味な座標が多数存在して、GISを活用する場合に、レスポンスに影響を与えています。 トゲとは、連続線分にトゲ状の突起があることを言います。この突起は、地物としての形状に不自然な印象を与えます。この原因は、突起の前後の座標取得の誤りの場合と、突起の位置の取得が間違っている場合におきます。
建物における鍵廻りですが、最近は建物のコーナーが直角でないケースもあるのですが、多くの場合、直角で建てられています。鍵廻りの角度が鋭角の場合、コーナーの取得ミス等が考えられます。もし、コーナーの取得ミスであれば、精度的にも問題となります。
これらとは別にDMデータのように図郭単位に空間データを作成する場合には、図郭を跨る地物の線分が図郭線上の同一座標で取得されているかを検査する必要があります。

筆者が2005年に岐阜県の24市町村のDMデータの24図郭(地物総数668,470)を調査した。また、このデータは7社の作業機関が携わっています。但し、調査したDMデータは、第三者機関の検査で合格したものですが、この図郭を検査しているか不明です。
品質検査した際の誤差の定義は次のとおりです。
同一地物の複数線分は、同一座標に同じ種類の地物の始点と終点があるもの。線交差、面交差は重なりが10cm(以下寸法値は、現地寸法で表す)以上あるもの。自己交差は、自分自身に交差があるもの。微少線分は、座標列間の距離が10cm以下のものがあるもの。トゲは、αが15cm以下でβが20°以下のものを誤差としました。

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図2誤差の閾値

誤差のタイプ別の誤差率は次のとおりでした。

表1誤差の誤率

誤差タイプ 平均誤率 最小誤率 最大誤率
同一地物の複数線分 0.53% 0.10% 44.79%
始終点不一致 5.40% 0.00% 24.44%
線交差 2.40% 0.07% 25.46%
面交差 0.62% 0.00% 5.08%
自己交差 0.03% 0.00% 0.24%
微小線分 0.24% 0.01% 1.56%
トゲ 0.01% 0.00% 0.09%

この結果を見ると、最大誤差と最少誤差のばらつきが、いかに大きいかということがご理解いただけると思います。このばらつきの原因は、次のことが考えられます

(1) 検査を行っていない。あるいは地物を限定して行っている。

(2) 誤差の定義が明確でないため、検査を行っているが、誤差とする数値が異なる。

JPGISでは、交差やねじれ(自己交差、微少線分、トゲ等)については記載がありますが、その誤差の値の表示がありません。また、検定の段階において、第5回の「測量検定の現状と課題」で示したように、検査する項目と検査していない項目があるというところが課題であると思います。検査を行わないということは、少なくとも、品質を保証しない又は、誤差と見なさないということですから、品質に大きな差ができることを意味しています。従って、位相一貫性の誤差とする種類と、その形状がどのようなものをとし、値を幾つにするかの定義の必要性を提起する理由があります。

位相一貫性の検査地物の範囲

DMデータの製品仕様書が作成されていない現状から、位相一貫性の検査の地物は、一部の地物に限定して行われている現状があります。第三者機関の調査結果から見ても、従来のDM検査方法と、JPGISに基づいた方法の2つの方法が並行して行われています。そして、従来方法のDMデータの位相一貫性の検査は、必ずしも全地物を対象としていないところに課題があります。 多くの計画機関は、まず、DMデータを作成し、そのデータを元にGISデータを作成しています。DMデータを作成する作業機関と、GISデータを作成する作業機関は必ずしも同じとは限りません。必ず両者の間にトラブルが発生することは否めないでしょう。品質要求は一本化すべきであると考えていますが、皆様いかがでしょうか。

社内の検査ツールは交差の閾値が設定できますか

最近、筆者がある自治体のコンサルタントを行っていて起きた出来事です。
3年前に地形図を新規整備して、今回、その更新を行う大手の作業機関が中間検査の席で、“新規整備データの交差の品質要件を満たしていません”と発言しました。筆者は、この受入検査も担当していますから、懸命に調査をして、間違いがないことを確かめました。そこで、作業機関に“先日、交差の品質要件を満たしていないと言いましたが、閾値は何cmにしましたか”と言いましたところ、“0cmです。”と答えましたので、“品質手順書は、その新規整備時、20cm、今回は10cmと規定していますが、あなたは、手順書を見ていますか”と問いかけてみたところ、“見ていません。”とのことでした。
課題は次のところにあります。

(1) 製品仕様書及び品質検査手順書をよく読んでいない。

(2) 閾値そのものの概念を知らない。

(3) 社内品質検査ツールは、閾値の設定が出来ない。

閾値の問題は、第4回の「計画機関の発注時における「品質要件」の記載状況と課題」の「閾値0は適切か」について述べました。そもそも、地物が重なった場合、境界を共有する場合、地物の途中から分岐する場合に、空間データは、数学的な交差を発生する環境にあります。閾値0又は0より大きい値を誤差として抽出した場合には、その誤差を目視で、一々判別しなければならず、この作業が大変であろうと思います。
品質的に5cmや10cmの重なりや突抜けが精度的、経路的に問題となるのでしょうか。むしろ、精度の面で言うならば、位置正確度が情報レベル2500で1.75mの方が問題ではないでしょうか。
筆者は、デジタル情報の性格上、交差することが悪いのではなく、突き抜ける量が問題だと思っています。皆様はいかがお考えでしょうか。ある交差の許容量=閾値を持って、数学的には交差しているが、空間データの誤差としては誤差としない。というのが筆者の考えであり、この考え方は、最近の基盤図情報の考え方にも採用されています。
筆者の研究では、閾値と誤率の関係は次のようになっています。

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図3閾値と誤率の関係

作業機関がDMデータの要素が線と面を社内検査で交差を未検査又は目視検査、プログラム検査をしているデータにおける誤率を閾値と誤率の関係で示したものです。閾値が10cmの場合と1cmの誤率は2倍〜8倍多いことがわかります。従って、閾値0とすれば、誤率が何十倍にもなる可能性があります。

交差は交差後1点とは限らない

多くの閾値の説明では、1回交差同一辺交差で交差後の座標が1点のみの場合しか説明しておりません。しかし、交差は、交差後の座標が1点とは限りません。むしろ、交差後の座標列が複数ある場合の方が多くあります。 筆者は、線分の交差のパターンを次の6種類に分類しています。

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図4線交差のパターン

同一辺に交差する場合は、おわかりでしょうが、異辺交差の場合の閾値のある誤差の判定はどのように考えれば良いでしょうか。筆者は次のように考えています。

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図5閾値の考え方

線分K(黒線)の座標列に半径を交差閾値の円を描き、線分Kと平行な円の頂点間を結ぶ線を引くと、Kの閾値が赤線で示されます。赤線の上端線をKi(緑線)、下端線をKp(青線)とします。
他の線分が線分Kに左下より右上に交差する例をとると、交差とは、線分KpとKに交わり、kiと交わらない場合には、誤差ではないと判定し、線分KpとKとKiと交わった場合に誤差であると判定します。このようにすれば、交差後の異辺に何回交差しても判定できます。なお、当社の品質検査プログラムは、このような考え方に基づいて作られています。

おわりに

論理一貫性の検査で課題となるのは、位相一貫性です。位相一貫性の課題には次のものがあります。

(1) 誤差の種類が統一されていない。

(2) 誤差の閾値の概念が認知されていない。

(3) 作業機関に閾値を設定できる検査ツールが少ない。

特に閾値については、閾値の概念が認知されていないので、作業機関が行う社内検査のツールに閾値を設定できるものは少ないのが実情です。社内検査は、閾値0で処理をして、そのエラーリストから、目視で誤差を抽出しています。このため、作業量の増大と、あいまいさが生じています。
これまで、空間データは、整備主体である計画機関が誤差に対する定義を独自に定めても問題は起きなかったのですが、県域にまたがる整備、基盤図情報等の状況を考慮すると、誤差に対する共通の仕様が必要ではないかと考えます。従って、空間データの品質表示の信頼性と、作業時間の効率化のためにも、誤差の定義、閾値を設定できる検査ツールの普及と、誤差とする閾値の数値の統一化を望むものです。

完全性検査でエラーがあるか否かの判定を行うためには、その前提条件として、エラー(誤差)とは何かを明確にしておかなければなりません。しかし、JPGISでも適合水準、全数検査又は抜取検査等の定義はありますが、残念ながらこのエラーの定義がはっきりしておりません。

そこで、ここでは、エラーの定義の必要性と、現状の検査の課題を提起させていただき、課題解決に対する提案をさせていただきます。

第5回 第三者機関の測量成果検定と課題

計画機関が空間データを公共測量の成果とするために、国土地理院に公共測量実施計画書を提出すると、作業規程15条により検定機関で測量成果の検定を受け、測量成果提出の際には証明書を提出することを助言されます。このことは、測量成果の承認が第三者機関の品質保証が前提となっているようです。
筆者は、GISのコンサルタントとして計画機関の受入検査等をしていますが、作業機関から、“どのような検査プログラムを使っていますか。そのプログラムを提供してくれませんか。” という言葉を良く耳にします。これはひょっとすると、作業機関が検査するプログラムによって、エラーの結果が異なることを知っているためではないかと予想しています。

ものを計るということでは、計量法に規定されており、公共測量作業規程の準則においても、測量機器の検定が定められています。しかし、空間データは、測量機器の検定も必要ですが、精度を保証する測量機器で測量したとしても、その後の編集作業で図式化、接合等を行うことで、端点の移動や追加が発生しています。従って、測量機器の検定と同様に空間データの品質検査も重要であると思っています。そして、どのような品質検査が行われているのか、その実態を調査する必要があると感じています。 そこで、これまで品質検査の長い歴史と経験を持っておられる第三者機関の皆様に検査方法についてヒヤリングさせていただきましたので、その結果を報告さていただきます。

計画機関の発注時における「品質要件」の記載状況と課題

自治体が地形図等のDMデータを整備・更新する場合は、一般的に特記仕様書、製品仕様書、品質評価手順書等を条件として測量企業に委託することになっています。

特記仕様書は、整備・更新の方法について記載します。製品仕様書は、適用範囲、データ製品識別、応用スキーマ、参照系、データ品質、メタデータ、描画のための辞書とカタログ等を記載します。品質評価手順書は品質検査の方法について記載します。品質要求を表示するものとして、製品仕様には、国土地理院が例示している「地図情報レベル2500データ作成の製品仕様書(案)」がありますし、品質手順書には、JPGISの「品質の要求,評価及び報告のための規則」等があります。

最近、GISのコンサルタントをしていて、測量企業の社内検査も、第三者機関の検査も合格の書類はあるのですが、何を根拠に合格としているのか理解に苦しむことがあります。

そこで、2010年9月に4社の測量機関にお願いして、最近、各社が受託した20自治体の合計80自治体の発注条件についてアンケート調査を行いました。その結果を表1に示します。表のA,B社は大手測量会社で、C,D社は地方の測量会社です。

第3回 差分抽出

2010年9月13日

差分抽出はなぜ必要か

主題図のGISデータ更新は、現況の変化を忠実にGISデータに反映させることが目的です。したがって、次の2つを満足させることが必要であると考えています。

  1. 現況の変化を正確にGISデータに反映させていること。
  2. 受託の責任範囲である作業範囲を明確にすること。

GISデータの更新は、現状の変化を忠実に反映させる作業ですから、完全性の検査を厳密に行う必要があると考えています。しかし、主題図のGISデータの完全性は、そのほとんどが現況の変化の地物等の真値が分からないことから、取得データの抜取検査で行われています。このため、完全性は、確率の問題として曖昧な問題を抱えています。但し、現状の変化数が把握している例外として、完全性を最も重視する固定資産では、別に地番、家屋の課税マスターがありますので、真値とするデータがあります。比較する真値があれば、完全性の検査を自動化することができます。

資産税では、家屋の異動判読に前年の画像と今年度の画像を比較して、色の変化を差分抽出することによって、家屋の異動を判別することを手助けする製品等もあります。しかし、残念ながら、現時点では、真値が分からない地物の品質の完全性を担保するための自動化は、今後の技術開発を待たなければならないようです

一方、受託の責任範囲である作業範囲を明確にする目的は次の項目があります。

  1. 加除訂正の内容を明らかにする。
  2. 契約の条件である加除訂正した範囲の品質を担保する。

加除訂正の内容を明らかにするとは、一般産業界で行われている修理や、改良で、調子が悪いので、良くするため(測量では現況の変化、誤差等に相当)、モジュールの追加、部品交換、修理等を行い、その明細はかくかくです、に相当します。主題図のGISデータが製造物ですから、他の産業界のように、加除訂正の明細を提出することが計画機関の信頼を勝ち得るためにも加除訂正の明細が必要ではないかと考えています。

次に、契約条件である加除訂正した範囲の品質担保をするためには、加除訂正した、削除、訂正、追加の地物抽出し、そのデータが品質要求を満足することを保証する必要があります。そこで、このような目的を達成するため、差分抽出ツールが必要であると考えています。

作業機関の皆様も、契約範囲外の誤差(エラー)を直せといわれる理不尽な要求から解放されたいと思いませんか。

第2回 測量の不思議

2010年8月24日

測量の不思議

筆者は、今から15年ほど前から空間データに携わることになりましたが、それまで、およそ年、電気、建築、医学、プラント等の業界の設計に関係する仕事を行ってきました。

現在、筆者は自治体のコンサルタントを行っていますが、測量に携わって不思議だなと感じたことを述べさせていただきます。

第1回 加除訂正していない座標が移動している

空間データの更新作業を行っている作業機関の皆さんで、論理一貫性の位相一貫性の交差等の品質検査を社内でしっかり行ったのに、計画機関から交差の重なりの品質が守られていないと、クレームが来て修正したという経験をおもちでありませんか。このような経験をお持ちの技術者は、少なからず居られるようです。

筆者の経験したところでは、新規作成データの品質検査の交差の結果が品質要求に満たないので、誤差箇所を提示して作業機関に修正するように指示しました。ところが、修正されたデータを見ると、今度は別の箇所に誤差が見つかってしまい、怒り心頭に達したことがあります。

そこで今回は、このような、更新データの社内検査を行って交差の品質要求に適合するデータであるにもかかわらず、計画機関や計画機関のシステムベンダーからクレームが来る原因について議論して見たいと思います。