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よくわかる測地成果2000

位置の基準点として役割を果たしてきた国家基準点が、一世紀ぶりに改められる計画が進められています。国土地理院によってこの計画の概要が説明されてきていますが、現実の取り組みになると、様々な疑問が生じてきています。

その一つが地方自治体などから測量業者へ寄せられる問い合わせがあります。もしそうした行政などの問い合わせに十分対応できなければ、せっかくのビジネス機会を逃してしまうのでははないでしょうか。ビジネス機会としてとらえ、測地成果2000関係の受注をした業者もすでにでております。

21世紀の測量事業に関しては,私達測量業関係者もそれなりの責任分担を負う必要があると思います。そこにビジネス機会を見出すことができるのではないでしょうか。

基準点の歴史的役割などを見直しながら,測地成果2000に関する測量業者の役割とビジネス機会などを考えてみたいと思います。

第1回 第1項

2010年7月27日

第1項 明治の地図つくりの教訓

明治のはじめ日本の政府は地図つくりを急ぎました。これは三角測量のような基準点測量に基づかないものでした。こうした地図つくりの手法は、測量誤差のため、出発点から遠ざかるにつれ実際と大きく食いうことが当時の実験的な三角測量で検証されました。そして、三角測量により正確な位置が分かっている基準点をもとにして地図がつくられるようになりました。

(資料:陸地測量部沿革誌)

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宮本さんの家から出発して、篠原さんの家まで宅地の測量を行います。実際の位置は黒線に示したものです。遠く離れた宮本さんと篠原さんの家の測量による図面は赤線だとすれば、これは測量誤差による「ずれ」になります。もっとも一軒一軒の測量による誤差は各宅地面積にそれほど影響はありませんが。

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正確な基準点が配置されていれば、その基準点を基に宮本さんと篠原さんの家の関係は図面に正確に描くことができます。

第1回 第2項

2010年7月28日

第2項 明治の地図つくりの教訓(字限図) 
 
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黒線は地籍図、赤線は字限図
(全国国土調査協会 地積調査のしおり より)

 
 国民の土地の権利関係を示すものとして、登記所に登記簿とその付図が備えてあります。第二次大戦後約50年の歳月を費やし現地復元性のある比較的正確な地籍図をつくっていますが、まだ対象地域の4割り程度の進捗率に終わっています。結局、明治時代のはじめに地租をとりたてるためにつくられた不正確な図が多くの場所で使われています。これは公図と呼ばれたりしますがその大半は字限図(あざぎりず)です。当時の技術水準などやむを得ぬ事情があったといえますが、測量がしっかり行われていなかったため、この字限図の多くは、現地復元性が現況と大きく食い違っている場合があります。
 国民の財産が正確に保証されるためには、基準点に基づく正確な図が必要で早くその実現が望まれます。

第1回 第3項

2010年7月28日

第3項 時代に合わない国家基準点の現状
 
 明治から大正時代に、日本全国に設置された一等,二等,三等三角点は、約39000箇所あり、1市町村に10点の割合です。しかし、100年も前に設置されたもので、地震による地殻変動や採炭などによる地盤変動などのため、これらの三角点の位置は不正確になっている場所があります。

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地震・火山・炭坑などにより三角点が大きく移動した地域
 

 特に、1923年の関東大震災は、関東南部に大きな地殻変動を起こしました。現在国土地理院が公表している基準点成果でも、川崎市と東京都では多摩川を境に数10cmも食い違ったものになっています。同様に、東京都と埼玉など、行政区画毎に基準点成果に不整合があるといわれています。
この地域は首都圏で土地の価格も高く、ことのほか正確な基準点の位置が要求されているにもかかわらず…。

第1回 第4項

2010年7月28日

第4項.関東大震災の影響 
 
 1923年9月1日関東地方を巨大地震(M=7.9)が襲いました。死者・行方不明14万2千人余、家屋全半壊25万4千余、焼失44万7千余の大災害をもたらしました。この地震による地殻変動も大きく、水平方向で最大3m余、上下方向で1m余にも達した地域があります。 
 

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 三角点などの国家基準点も大きな影響を受け、地震後三角点の改測が行われました。地殻変動地域に対してその改測の範囲が狭かったため、変動したにもかかわらず、国家基準点の位置は全面的に修復されませんでした。そのため、関東南部地域の国家基準点の整合性が悪く、1970年代に入り関東南部の一部地域が再び改測されました。その結果、横浜市は1988年(黄色域)、神奈川県川崎市・埼玉県の一部・千葉県の一部(赤色域)は1990年、東京都の一部(緑色域)は 1991年に計算処理された成果が使われています。埼玉県の多くの地域は明治の三角測量のデータ、神奈川県と千葉県南部は関東地震直後の70年以上古い三角測量データが使われています。
 以上のように、関東南部は測量時期の違いや計算処理の違いにより、前頁で述べた自治体の境界で基準点位置に不整合が生じる原因になっているのです。

 

第1回 第5項

2010年7月28日

第5項.阪神・淡路大震災の教訓
 
 1995年1月、M=7.2の大地震が神戸付近を襲いました。阪神・淡路大震災を引き起こした地震です。この地震による地殻変動や地盤変動は、土地の境界をメチャメチャにしてしまいました。地震により移動した建物は、ジャッキアップされ元の位置に戻されるものもありました。しかし、土地の境界が定かでなければ、復元作業は困難となり、結果として紛争が生じている箇所もあります。(1999年 神戸市土地家屋調査会 震災からの復興)。正確な基準点に基づく各家の境界点が設置されていて、住民の行政への信頼感があれば、地震などによる土地移動の復元による土地境界紛争の防止に役立ちます。

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震災により傾いた建物
(震災からの復興 -土地家屋調査士の活動と地元復興への足跡- 兵庫県土地家屋調査士会発行)

第1回 第6項

2010年7月28日

第6項.縦割り行政と基準点
 
 戦後、国土調査のため、四等三角点が約62000箇所に設置されました。この四等三角点に基づいて地籍測量が行われてきています。一方、都市部では、土地の高度利用が要求され都市基準点など公共基準点が設置されてきています。
これまでに

  • 公共基準点(1・2・3級基準点、境界点)
  • 地籍図根点、地籍図
  • 道路台帳図

などが、それぞれ縦割り行政のなかでつくられてきました。自治体によっては、道路局と下水道局がばらばらに測量をし、食い違った座標成果を持つ基準点を設置している場合もあります。特に、都市部ではこうした基準点に基づく図の食い違いが問題になります。


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道路台帳図(黒線)上に示した公共座標(赤丸)の位置。ずれが見える。

 
 関西のある中都市は、基準点の整備を行いました。その上で、各部局で行う測量には基準点の利用を義務づけ、また、土地家屋調査士など民間の事業にも基準点成果を利用することとし、一元化した無駄のない効率的な行政が実施されています。
また、基準点整備はGISデータ整備に直結する利点が生じ、住民サービスに大きく貢献する体制ができてきています。
>このような整備された基準点の統合利用は、行政経費を節約するばかりでなく、民間事業を含めた様々な形で住民サービスに貢献するものです。

第1回 第7項

2010年7月28日

第7項 日本列島の400mのずれ
 
 船舶や航空機の航行の安全に欠かせないのが空港・港湾やそれら航路の位置です。明治時代に天文測量によって決められた日本の世界地図上の位置は、実際より約400m南東に印されています。つまり、正確な世界標準の位置から約400mもずれているのです。このように、日本国内だけに通用する位置の基準は「日本測地系」と呼ばれています。
アメリカやヨーロッパなど外国から来る船舶や航空機は、日本測地系で示された位置を日本付近でいちいち約400mの位置の修正を行わなければなりません。 

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青:世界測地系           緑:日本測地系
 

 そこで国際的な取り決めにより、現在、船舶や航空機の航行に使用する座標は、世界共通の位置基準である「世界測地系」が使われています。
そのため、先進国はもとより多くの国々で、世界測地系が採用されてきています。したがいまして、日本でもこれからの全ての公共的事業は世界測地系で行われることになります。世界がどんどん狭くなる時代で、我が国の空港や港は「日本測地系座標」でよろしい、と言うわけにはいかないと思います。

第1回 第8項

2010年7月28日

第8項 測量業界の役割
 
 測地成果2000の事業は、100年ぶりのもので、世紀の大事業というべき内容です。これは、測量法に基づいて国(国土地理院)が責任をもって実施するものです。実施にあたって地方自治体などのもつ疑問などについても、国土地理院が責任をもって対処しなければならない性質のものです。
しかし、3300の地方自治体が一斉に動き出した場合、国土地理院だけで細かい部分まで対処できない可能性があると考えられます。そこで、こうした世紀の大事業に関しては、測量に関する専門家集団である民間業者が積極的に関わって、その事業の成功に貢献する必要があるように思います。
関東地方のある県の測量設計業協会は「測地成果2000プロジェクトチーム」を立ち上げ、100人規模の勉強会を4回、パンフレット作成による県下市町村関係者への啓蒙活動とそれらの機関の基準点設置状況の実態調査を行ってきています。こうした積極的な活動をつうじて、測地成果2000に関する仕事の創出活動も行っています。
これまでの「受注型」の仕事は、減少傾向を示しています。21世紀の測量業界は、「受注型」から「提案型」へ質的な変換を要求されてきているように思えます。測地成果2000の事業は、そのはしりとして、私達は積極的にこの事業に関わっていきたいものです。

第2回 第1項

2010年7月28日

第1項 測地成果2000は法律により定められた事業
 
 測地成果2000は21世紀の早い時期に実現するものと思われますが、この実現によってどんな利点があるのでしょうか。国土地理院が説明してきたことをまとめると、次の2点になるでしょう。

  • 基準点の位置の整合性がよくなる。
  • 日本の位置が国際標準になる。

結果として、次のようなこともいえます。

  1. 位置が国際標準になるので、船舶や航空機の安全航行に貢献する。
  2. 位置の整合性がよくなるので、行政などがつくる図面などが正確になり、効率的になる。結果として行政経費の軽減になる。
  3. 土地の高度利用を目的としたGIS(地理情報システム)の基準に欠かせないものになり、住民サービスの向上に貢献する。
  4. 21世紀の予測できない事業に貢献できる可能性が高い。例えば、視力障害者のナビゲーションシステムの構築。

そうはいっても、上述のような「効能」について、行政の担当者が十分承知していない場合もあります。担当者の承知の有無とは無関係に、新測量法が成立すれば、地方自治体などはその法律にしたがって、基準点や地図の座標を新しくしなければなりません。この処置を遅らせれば遅らせるほど、経費負担がかさむことになります。

第2回 第2項

2010年7月28日

第2項 測量法適用の対象範囲とビジネス機会
 
前述のように、測地成果2000の計画は、測量法に基づいて実施されるものです。地方自治体などが管理する基準点など改定(座標変換)される対象は、現行測量法に準拠した建設省公共測量作業規程に基づいて得られた次の測量成果です。

  1. 基準点成果
  2. 地形図等成果
  3. 数値地形図等成果
  4. その他の成果

 これらの成果は、測量法が改定された後、若干の猶予期間を経て、新しい座標に改定(座標変換)されなければなりません。測量法が改定された後の測量は、新しいシステムで行われるので、旧成果は早い時期に改定(座標変換)した方が、経費負担が軽減されると思います。
以上の他に、国家基準点に基づいてつくられた各省庁が管理している基準点などの座標変換があります。それらは、次のような測量成果が含まれています。

  1. 地籍図根点,地籍図等(国土庁)
  2. 17条地図(法務省)
  3. ほ場整備関連図等(農林省)
  4. 道路台帳図,都市計画図等(建設省)
  5. 森林基本図等(林野庁)
    等々

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図郭の変換 (国土地理院のパンフレットより)

なお、国土庁は地籍図の座標変換を見積もるため、本年度約1億円の予算を計上して事前調査をはじめつつあります。各省庁の内容をよく調べれば、測量業者のビジネス機会を見出すことができるのではないでしょうか。

第2回 第3項

2010年7月29日

第3項 国土地理院提供による座標変換プログラム「TKY2JGD」によらない座標変換
 
 現在の位置の基準である日本測地系を「正確な整合性」をもったものにし、また、「国際的にも整合」をもったものに改める計画が「日本測地系2000(Japanese Geodetic Datum 2000):略称JGD2000」です。その実現座標が「測地成果2000」です。
この計画の実施の詳細について国土地理院は、次のように説明していました。
 
国家基準点の一・二・三等三角点約39000点については、国土地理院が最新処理した世界測地系の値を提供する。
四等三角点約62000点,公共基準点,及び地籍図根点などは、国土地理院が提供する座標変換プログラム「TKY2JGD」により世界測地系へ座標変換する。
 
 しかし、6月号で述べましたように、地震による地殻変動地域、採炭などによる地盤変動地域及び火山活動による地殻変動地域などでは、基準点の整合が失われている場所も多くみられます。こうした地域では上述の「TKY2JGD」プログラムが使用できない可能性があります。
昨年11月国土地理院は、「TKY2JGD」プログラムの全国的な検証を基にして、各地域に適した座標変換を行うための「測地成果2000導入に伴う座標変換対応マニュアル(案)」(以下「マニュアル案」)を定めました。つまり、地震や火山の地殻変動などで国家基準点座標の整合性が良くない地域においては、「TKY2JGD」によらない別な座標変換方法を定めました。  

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有珠山の火山活動 (建設省HPより)
 

 

第2回 第4項

2010年7月29日

第4項 国土地理院提供による座標変換プログラム「TKY2JGD」
 
 国や地方自治体などが管理する基準点や図面などは、新測量法の制定とともに、世界測地系に座標変換しなければなりません。「TKY2JGD」座標変換プログラムにより、機械的に座標変換が行われれば簡単な事業になります。実際はそんな単純なものではなく、測量屋さんの出番があるのです。ビジネス機会が存在するということです。
まず、「TKY2JGD」座標変換プログラムの内容を考察してみましょう。これまでに、国土地理院が説明会や学会などで報告してきた内容をまとめてみます。
 
「TKY2JGD」の内容
 
図に示すように新旧座標差から、内挿により未知点の座標変換を行います。

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既知点は、全国約39000点の一・二・三等三角点です。旧座標は現在使われているものです。新座標は、最新のGPS観測値などを使って再計算したものですが、約8割の三角点が明治時代を中心とした三角測量データです。
測地成果2000の目的が、整合性の良い国家基準点をつくることにあります。しかし、「TKY2JGD」の要素となっている座標は、整合性を改めるべき現行国家基準点座標です。こうした根本的矛盾を内包した「TKY2JGD」をたよりにして、整合性のよい新しい基準点座標を得ることは、かなり難しい技術が要求されます。

第2回 第5項

2010年7月29日

第5項 「TKY2JGD」の適用除外地域
 
 国土地理院が1999年11月に公表した「測地成果2000導入に伴う座標変換マニュアル(案)」によれば、次のような場合に「TKY2JGD」の使用について適用除外の対象になっています。(第3条運用基準)
 
① 公共基準点設置時に使われた国家基準点が、その後精密測地網二次基準点測量等による成果改定が行われた地域。
② 精密測地網二次基準点測量等による成果改定が行われた地域と成果未改定地域の境界地域。
③ フリーネット解法により設置された公共基準点等。

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 ①の場合                        ②の場合

日本全国に約33000点の三等三角点が設置されていますが、精密測地網二次基準点測量として改測された点は約3300点です。例えば川崎市の場合、平成2年に国家基準点が改定されています。「TKY2JGD」は平成2年に設置された国家基準点座標を基につくられていますので、それ以前に設置された地籍測量の図根点には「TKY2JGD」は適用できません。地域によっては、明治の測量、地震後の改測、二次基準点測量などが入り乱れています。
現在こうした情報は整理されたものとして公開されていませんが、近々国土地理院によって整理されたものが公開されるものと思われます。
なお、国家基準点の整合性がよくない地域において、国家基準点座標成果を固定しないで、フリーにして処理したものが「フリーネット解法」です。この方法は、昭和52年国土地理院により、公共測量の処理として公認されたものです。

第2回 第6項

2010年7月29日

第6項 「TKY2JGD」の適用除外地域 その選択基準とビジネス機会
 
 前述しましたように、地震による地殻変動地域などにおいては、「TKY2JGD」の使用には注意を要します。それではどのような条件のもとにおいて、「TKY2JGD」による処理でなくその地域に適合した座標変換を行うか、その選択基準は示されていません。
その選択は、事前調査により決められることになります。机上による測量記録の調査または実測による調査、これらの組み合わせによる調査などが必要になります。今のところ、調査方法およびその基準など示されていません。
基準がないということは、地域により異なった選択肢があり、測量コンサルタントとしてのビジネス機会が生まれたことになると思います。国土地理院の「座標変換マニュアル案」がこれまでのマニュアルと決定的に異なる点は、これまでの「受注型」測量ではマニュアルを「理解」すればよかったわけですが、この「マニュアル案」は「応用動作」が求められ、「提案型」測量の内容が含まれていることです。

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図は、建設省報告による測量業の契約金額の推移を示しています。この5年間を通算すると、契約金額は約 3/4にまで落ち込んできています。国や地方の財政事情などから推測すれば、この落ち込みが改善される期待は少ないように思えます。仕事の創出には、従来型の「受注型」測量業から「提案型」測量業への転換が求められているのではないでしょうか。測地成果2000の座標変換作業は、その提案型への訓練の場として良い機会ではないでしょうか。

第3回 第1項

2010年7月29日

第1項 全国測量技術大会2000の議論からみた測地成果2000
 
 さる6月28~30日の3日間、東京ビッグサイトにおいて、標記の催しが盛大に行われました。弊社も21世紀の測量支援システムである新製品「WingNeo」及び「ATWAIS」を展示し、多くのお客さんから絶賛を得たところです。この催しでは、各社の製品の展示もありましたが、パネルディスカッションなど講演も多くありました。そのなかで、測地成果2000の事業を進めるにあたり参考になる講演などもみられました。
29日午前に行われたシンポジュウム防災GISにおける奈良大学の碓井先生の「防災GISと電子国土の建設」も、測地成果2000事業の成功なくして成り立たない内容のものでした。同日午後のシンポジュウムGIS=品質管理と公共測量作業規程においては、プロセス管理とプロダクト管理について議論がなされました。測地成果2000に関する「マニュアル案」は、これまでの作業規程と異なりプロセスが事細かに定められているわけでなく、良い仕事をするためには、測量士の能力が強く要求される内容になっています。プロダクト管理的要素が幾分高められた感じの「マニュアル案」になっています。30日午前に行われた「社員教育」においては、マニュアル化人間からの脱皮なども議論になりました。プロセス管理に対応できる技術者の養成は、これからの社運を決めるものになりそうです。
 
具体的に考察してみましょう。

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第3回 第2項

2010年7月29日

第2項 21世紀の測量業、ゼネコン依存から情報産業へ
 
 20世紀の測量業は、道路や橋の建設に伴って仕事がつくられてきました。測量業の受注金額は、建設業の1%程度といわれ、ゼネコンに寄生して生きてきたといってもよさそうです。
一方、地籍測量は国家の根幹をなすものですが、その予算は年間200億円余りで、50年経過してもその進捗率は40%程度です。この年間額をそのまま50年間に延長しても、その総額は1兆円余りです。東京湾横断道路の総工費1兆4千億円余りに比較してみれば、ゼネコンの道路1本にも満たない額で、測量業の主体性の欠如が分かります。私が技術協力で仕事をしていたアフリカのケニアでは、測量局の仕事の8割りが地籍測量です。こうした途上国より日本の地籍は遅れていると言えます。結果として、東大教授の村井先生が指摘している”地積後進国日本”ということになります。

私は新市場の開拓を勧めます。何と言っても地籍後進国の日本で、唯一希望の持てるのは地籍の大事業化です。経団連の提言にも書いてあるように、世界中でこれほど遅れている国は日本以外にない。・・・・・・・・
(村井俊治,APA,No74,1999,7頁)

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東京湾横断道路 (株式会社トライ ホームページより)

碓井先生の講演によれば、20世紀の測量業が道路や橋の建設に付随したものから、21世紀の測量業がGISと結びついたものになり、本質的に変化すると述べられていました。GISの本質は、道路、住所、などなどあらゆる地物などが位置情報と結びついたものになっていることです。あらゆる地物が、時空間的な情報と結びついてきます。21世紀の測量成果は、単なるゼネコンのためばかりでなく、それらは自動的にGISのデータとして、情報の社会基盤の骨格をつくります。例えば、リアルタイムのGIS情報は、防災における住民の生命財産を守る重要なものになります。
このように、20世紀におけるゼネコン依存の測量業は、21世紀には空間データ基盤という情報基盤の骨格をつくる情報通信産業の測量業へと本質的に変化していくのではないでしょうか。その根幹をなすものが、世界測地系座標で記述された正確な位置情報を与える「測地成果2000」の事業であると思います。従いまして、測地成果2000構築にしっかり取り組んだところが、21世紀の発展の基礎つくりに成功するものといえます。すでに「豊中方式」などと呼ばれているように、大阪の豊中市(人口約40万人)は数億円の経費をかけて公共基準点を整備し、それに基づいてGISを発展させて住民サービスを効率的に行ってきています。

第3回 第3項

2010年7月29日

第3項 GISと測地成果2000
 
 GISの本質は、地物などが正確な位置座標と結びついていることです。それぞれの地物は、個別のレイヤに数値化され、複数のレイヤを重ね合わせて解析できます。例えば、道路と下水道の関係から、下水道やマンホールの位置が道路上から把握でき、下水道の敏速な修理などに役立ちます。もし、道路局と下水道局が、別個の測量を行い位置に食い違いがあれば、相互の正確な位置関係は正確に把握できません。
紙地図であれば、少々の測量誤差は食い違いとなって現れませんが、数値化されたデータでは測量誤差がそのまま現れてしまいます。
国際的に空間データを相互利用する場合、それらに関する国際的な標準化が必要になります。このことにより世界中の多様な空間データを同じ手続きで扱うことができます。21世紀におけるGISの利用の上からも世界測地系座標に基づいた空間データでなければならないと思います。

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 こうしたGISを骨格とした情報通信社会において、行政の住民サービスなどが飛躍的に豊かなものになると期待できます。従来の地図は電子情報として伝達でき、また、住所と関連づけられています。行政への提出書類も住所を示せば、自動的に地図が添付されたことになり、紙地図の提出は不必要になります。或いは、宅配便のナビと住所を関連づければ、お客さんから住所を聞けばカーナビで間違いなく配達できます。
測地成果2000により位置が正確に決められていれば、建設CALS/ECとGISの結合が可能になり、地方自治体の住民サービスなどが質的に向上するものと期待できます。そのはしりは、前述の豊中市の例にみられます。

第3回 第4項

2010年7月29日

第4項 測量成果の品質管理
 
 測量成果の品質管理については、公共測量作業規程などを例に議論がなされました。現在の公共測量作業規程などは、使用機器,観測方法,成果の記載フォーマットなどが事細かに定められています。ほとんど測量者の創意工夫の入る余地がないし、また、新技術導入の余地もありません。例えば、筆者は5年以上昔に、TSとGPS観測値を結合処理する3次元網平均を開発しました。しかし、商品化はしておりません。つまり、作業規程に異種観測値の結合処理(combined adjustment)に関する定めがないため、商品化しても使用者が現れないしそして売れないからです。
現在は測量作業のプロセス(行程)すべてが事細かに決められていて、人件費などの単価も定められています。その結果、受注金額は誰が積算してもほとんど同じ額になります。こうした状況下での業者間の競争は、単なる低価格競争になり、業者の技術開発競争が起こり得ない状況になってきています。国土地理院のHPに示された契約情報をみれば、どこの会社がダンピングしているか一目瞭然です。

件名 1/50000数値地形図修正編集作業(全国1)
入札日 平成12年6月7日 (単位:円)

 

業者名 第1回 摘要
太平洋航業(株) 7,500,000  
三和航測(株) 6,300,000  
北海道地図(株) 6,800,000  
(株)共栄地図 4,300,000  
緑川地図印刷(株) 4,240,000  
(株)パスコ 6,900,000  
(株)中庭測量コンサルタント 8,500,000  
日測・技研・大和共同企業体 8,700,000  
カート・日成共同企業体 8,000,000  
国際航業(株) 7,000,000  
○×△(株) 2,480,000 落札

国土地理院HPより

こうした閉塞した制度は、改められる傾向になってきています。建設省の規制緩和推進3カ年計画においては、16事項130項目が規制緩和の対象とされています。そのうち、測量に関する規制については、「新技術の導入を促進するため、プロセスに柔軟性を持たせ、測量成果の品質確保に事業者がより責任を持つよう…所用の措置の検討を行う。」とされています。すなわち、「プロセス管理」から結果を重視する「プロダクト管理」に比重が強まる流れができつつあります。
そのような流れに必要なのが、「人材」であると思います。

第3回 第5項

2010年7月29日

第5項 「受注・マニュアル」型から「提案・応用」型へ
 
 千葉工業大学の小泉先生の司会による「社員教育」の議論が30日午後行われました。この議論の背景にあるのが、受注型とマニュアル依存型の従来制度の反省にあると思います。最初に述べましたように、情報通信技術としての測量業へと質的に変化が要求され、提案型による事業の創出が必要になり、それを実現する柔軟な思考をもった応用型の人材育成が強く求められているのではないでしょうか。
例えば、昨年11月に定められた「測地成果2000導入に伴う座標変換対応マニュアル(案)」に基づいて品質のよい座標変換を行うためには、プロセスに柔軟性があるため、測量士の専門知識が要求されます。このことは、7月に既に述べたところです。

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 日本の測量教育の量的な役割は、全国に16校ある測量専門学校です。少子化と不況の影響で、測量専門学校の生徒数は、1996年の3731人から2000年の2309人へと4年間に1422人も減少しています。これら測量専門学校の入学に際しては、入学試験を行いますが、受験者のほとんど全員が合格するとのことで、事実上無試験状態のようです。一方最近の新聞紙上から、有名大学でも四則演算も満足にできない学生もいるそうですから、こうした状況では四則演算も満足にできない測量士が誕生する可能性もでてきています。
3年前の「社内教育」において、小泉先生は民間測量会社の社内教育に関するアンケート結果を報告しました。回収率50%のなかで、回答をよせた149企業の約70%の企業は、何らかの研修を実施しています。しかしそこでは、①時間がとれない②講師の選定③研修内容、の社内研修の3大障害が報告されました。この3年間に測量業の環境は大きく縮小しています。時間がとれないなどの困難さを言い訳にするのでなく、障害を乗り越えて社内研修を実現する経営者の決意、それが決定的役割を果たすのではないか、一段と厳しい経営状況のなかで、経営者の姿勢の大切さを今回の討論のなかで強く感じました。

第4回 第1項

2010年7月29日

第1項 地籍後進国-その原因
 
 「地籍後進国日本」について、東大の村井先生の講演を引用して、前回述べました。地籍測量は太閤検地以来の事業といわれながら、半世紀を経過した平成11年度末における進捗率は、全国の調査対象面積の43%です。そのうち、都市部については17%程度で、都市部の遅れが目立ちます。
「土地所有者の権利意識の向上」にその遅れの原因を求める論調がよく見うけられます(例えば、日本土地家屋調査士会連合会、調査・測量実施要領II、2頁)。確かに、地籍測量でいう一筆地調査(E工程)における境界の確定は、所有者・所在・地番・地目などの確定を伴って大変な仕事ですし、事業の担当者にすれば、その遅れを「土地所有者の権利意識の向上」に求めたくなる気持ちは理解できます。しかし、地籍測量などの本来の目的として、「土地所有者の権利の確定」がその一つにあげられます。その目的からすれば、当事者の苛立ちは、その事業目的と本質的に矛盾を持ったものとも言えなくもありません。何れにしても国民の意識向上と共に、事業の進捗率が目的化され「国民」を忘れてはならない事を、国民の一人として願うばかりです。

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全国3252市町村の地籍調査の実施状況(平成11年度現在)
国土庁パンフレットより

 更に言えば地籍測量の遅れの本質的な要因は、「国民の権利意識」にあるのではなく、国の政策だったとも言えます。
1兆円規模の海峡横断道路は、四国に3本と東京湾に1本、計4本です。これまでに要した地籍測量経費は、この橋の建設費1本分にすぎません。計画当時の経済情勢やその背景から来る価値観が、大幅に変貌した現在とは言え、東京湾横断道路の交通量は予想の35%程度で¥100の収入を得るのに、現在¥316も経費がかかる大赤字道路である事も事実です。ITにおける情報資源として、地籍データが重要な役割を果たすことを、我々業界人が広く提言して行く事が望まれます。

第4回 第2項

2010年7月29日

第2項 地籍測量促進の具体策
 
 1999年8月国土庁は、「国土調査に関する懇談会」を開き、2000年度から始まる「第5次国土調査事業十箇年計画」の方向を決めました。そこで示されている地籍測量の促進方法は、大まかに次の3点になります。

  1. 筆地調査の民間委託
    これまでは境界の確定にあたるこの作業には、市町村の職員が立ち会っていましたが、それらを民間業者へ委託するものです。
  2. 地籍情報緊急整備事業
    官-官、官-民、民-民の境界確定にあたり、手間のかかる民-民を省略して骨格だけを先行して調査するものです。
  3. 土地異動情報追跡型地籍調査事業
    土地家屋調査士の方々が測量した結果を地籍測量に取り入れるものです。この場合、測量結果が国家座標と関連づけられなければなりません。

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国土庁発行パンフレット「地籍で進めるまちづくり」(平成12年度版) より

第4回 第3項

2010年7月29日

第3項 国家基準点に準拠した地積測量
 
土地家屋調査士の方々が測量した地積測量結果に、国家座標を与えるいわゆる「座標づけ」を行い、地籍測量に組み込みます。これが「土地異動情報追跡型地籍調査事業」で地籍測量を促進する一つの方法です。余談になりますが、大阪府の豊中市では既に、この方法を取り入れていると聞いています。さて、ここで紛らわしい「地籍」と「地積」の意味について、はっきりさせておきましょう。「地籍」は土地の「戸籍」に関することです。「地積」は土地の「面積」に関することです。
昭和25年に土地家屋調査士制度が創設され半世紀が経過しました。土地家屋調査士の方々の測量は、どちらかというと面積を正確に求めることが重要な役割でした。面積の測量では、その土地が地球上のどの場所に位置するかは分かりません。境界標がなければ、隣接の土地との区別が分からないのです。これは境界紛争のもととなります。そうした制度の欠陥を正すために、地積測量図への境界標の記載や筆界点と近傍にある恒久的地物である引照点との位置関係の記載などが、平成5年の不動産登記法の改正で定められました。最近では、地積測量図に国家座標をもたせるような動きもあります。
以上述べましたように、筆界点が正確な座標で決められていれば、境界標は紛失しても、筆界点は復元されます。また、結果として正確な面積も求められます。

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 地籍測量の場合は、上図に示すような面倒な工程を経て、国家座標が決められています。国家座標に代わって公共基準点を使うこともできます。これらの面倒な技術基準は、「調査・測量実施要領II(技術基準)」に示されています。

第4回 第4項

2010年7月29日

第4項 測地成果2000と国家基準点
 
 国土地理院は、「測地成果2000」の計画を進めています。これまでにもふれて来ましたので、今回の主題である地籍測量や地積測量に関したこと以外についての内容は省略します。
 一口に「座標づけ」といっても、公共基準点などが密に配置されていない地域においては、前述のように、図根三角測量のような基準点測量を行わなければなりません。かなり専門知識や技術が要求されますので、土地家屋調査士の方々が簡単に基準点測量をこなすことはできません。しかし、測地成果2000が実現すると、国家座標が「カーナビ操作」感覚で簡単に決められます。

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電子基準点アンテナ
(国土地理院パンフレットより)

測地成果2000に関する法律は、来年度の国会を通過すると思われますが、この法律の施行に伴って電子基準点を使ったGPS測量が公認される見通しです。現在でも国土地理院は、全国に約1000点の電子基準点を設置してあるデータを公開していて、一定の手続きを行えば誰でも入手できます。電子基準点を使った基準点測量が行われるようになれば、公共基準点などが配置されていなくとも簡単に座標を求めることができます。つまり、地積測量図に国家座標を持たせることが、簡単になります。

第4回 第5項

2010年7月29日

第5項 仮想電子基準点
 
 

全国に約1000点の電子基準点が配置されています。点の間隔は、25~30kmです。
中間で10km余りですからGPS測量は電離層などの影響を受けるので電子基準点からの距離に制限を受けます。
その影響を少なくするために現状では2周波のGPS受信機が必要になるでしょう。。
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 安価な1周波GPS受信機で、正確な位置を求めるために、仮想電子基準点を使う方法があります。仮想電子基準点は、図に示すように周囲の電子基準点A,B,Cから仮想的につくられるものです。あたかもそこに電子基準点があるかのように扱えます。

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画像データ:スペクトラ・プレシジョン社より

 この技術は、ほぼ確立しているといわれ、昨今EU諸国で実用化され始めていますが、国土地理院も既に実験準備に入ったようです。こうした技術が使えれば、土地家屋調査士の先生方も極めて簡単に「座標づけ」ができるのではないでしょうか。

第4回 第6項

2010年7月29日

第6項 まとめ
 
 現実の世界に戻ってみましょう。グラフは登記所で管理されている地図です。現地復元性のあるいわゆる「17条地図」は全体の半分にもなっていません。17条地図277万枚のうち,235万枚が地籍図です。図の「数値化」は実験段階のようです。
 
 
 

04-06-1.jpg 1997年4月1日現在

 1998年11月10日、経団連情報通信委員会は、「地理情報システムの高度利用のための提言」を発表しました。いわゆる「電子国土」の基礎つくりの内容をもったものであると、筆者は理解しています。この提言内容を実現するには10兆円近い経費が必要であるという人もいます。
この提言のなかに、測量士資格や測量作業規程に関して大胆な規制緩和を求める内容がありました。この提言に対して、私の知る限りの測量関係者は、「規制緩和により測量業が成り立たなくなるのでは」というような防御的態度をとっていたようです。規制緩和はともかく、8月にも述べましたように、ゼネコンの下請けから脱した測量関係業の自立・独立が求められている、という客観的な流れを理解する必要があるのではないでしょうか。
なお、アイサンテクノロジーは、土地家屋調査士業務を統合支援管理するシステム:ATWAISを発売しました。そのメイン・システムである「MIFキャビネット」では、国土地理院が先導的に具体化した空間データ基盤:数値地図2500CD-ROM(財団法人地図センター発行¥7500-)が利用できます。具体的には、CD-ROMから展開したデジタル・マップ上、目印・図面マークと様々な情報・図面をリンクさせ、全般に測地成果2000も考慮した「国家座標」管理を意識しています(特許出願済)。 
前述の「5.仮想基準点」の実用研究を含め、こうした新発想、ニュー・テクノロジーを足場に、より高度化する皆様方の業務支援を行いたいと考えています。

第5回 第1項

2010年7月29日

第1項 日本の面積は100万坪減少する?
 
 前回は、地積測量図の「座標づけ」についてお話をしました。今月は、その話を技術的に立ち入って進めていきたいと思います。まずは、測地成果2000の基準によれば、日本の面積が100万坪減少する、という「お遊び」の話から・・・。
測地成果2000の計画が実現すると、日本国土の面積は100万坪減少します。正確な面積を測定することに「命」をかけてきた土地家屋調査士の方々からすれば、びっくりする話であると思います。

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 図に示すように、現在私達が使っている距離や面積は、平均海面上で表されます。土地の表面積は、平均海面上の面積に引き直されるのです。ところが、測地成果2000の基準面は、現行の平均海面から約35m下方の準拠楕円体面上となります。地球の半径を6370000mとすれば比例配分により、は次のように縮小され100万分の5.5短くなります。

6,370,000-35 0.9999945

6,370,000

面積は平方なのでその縮小率は,次の計算のように100万分の11減少して

0.9999945×0.9999945=0.999989

となり、現在の日本総面積は約37万k㎡なので測地成果2000の面積は,次の様に369996k㎡と4k㎡縮小します。

0.999989×370000=369996.0

4k㎡を坪数にすれば,120万坪になります。約100万坪の減少です。

第5回 第2項

2010年7月29日

第2項 測量法で定められた測量の基準面
 
 測量法第11条では、測量の基準が次のように定められてされています。

  1. 地球の形状及び大きさは、ベッセル楕円体による。
  2. 位置は、経緯度及び平均海面からの高さで表示する。
  3. 距離及び面積は、水平面上の値で表示する。

 筆者は新測量法の条文をみる立場ではないため、これまで国土地理院が学会などで公表してきたことから推定すると、これらの定めは、測地成果2000では次のように改定されると思われます。

  1. 地球の形状及び大きさは、GRS80楕円体による。
  2. 位置は、経緯度及び平均海面(ジオイド)からの高さで表示する。
  3. 距離及び面積は、準拠楕円体面上の値で表示する。

 現行における距離や面積は水平面上という平均海面上で表示されていますが、測地成果2000では準拠楕円体面上で表示されることになります。

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 平均海面を陸地へ延長した静水面は、「ジオイド」面と呼ばれています。準拠楕円体面から平均海面であるジオイドまでの高さは、「ジオイド高」と呼ばれています。日本における測地成果2000のジオイド高は、図に示してありますように約30~40mです。平均的なジオイド高は約35mです。面積を表示する基準面が、平均海面から35mほど地球重心に近いGRS80準拠楕円体面となるため、前述のように日本の面積が小さく表示されることになるわけです。
ただし、住民の所有する地表面の面積が変わるわけではありません。表示方法が少し変わるだけですから何の問題もありません。くれぐれも誤解のないようにして下さい。

第5回 第3項

2010年7月29日

第3項 測量の基準面(平均海面)
 
 地球全体で見たとき、地球の形に最も近いGRS80「準拠楕円体面」と「ジオイド面」とは、最大最小±100mほど離れています。日本の陸地では、前述しましたように、30~40m離れています。

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図のように、地球を代表するモデルは「楕円体」と「平均海面」の2つです。楕円体は人間が勝手につくったものですから、いろいろな楕円体があります。測地成果2000では、現在世界で公認された地球に最も近い「GRS80(Geodetic Reference System):測地基準系1980」が採用されます。日本で100年間馴染んできた「ベッセル楕円体」はお役御免となります。楕円体に対して、平均海面という静水面が存在すると仮定すれば、それは人間の意思とは無関係に客観的に存在することになります。
地球に結合された楕円体は、「準拠楕円体」と呼ばれ、緯度・経度などの水平位置の基準となります。一方、平均海面を陸地まで延長した「ジオイド」面は、高さの基準となります。高さは水の流れと関係ある量で定義した方が実用的だからです。
本来距離や面積は、水平位置に関係したものですから準拠楕円体上で扱われなければなりません。日本におけるジオイド高は半世紀以上昔から分かっていましたが、それは極めて大雑把なもので、最近ようやく正確なジオイド高が求まるようになりました。その結果、前頁に示した地表と準拠楕円体の位置関係が正確に求まるようになり、距離や面積の表示が本来の基準面で定められるようになりました。測地成果2000における距離や面積は、ようやく本来の定めるところに落ち着くことになったことになります。

第5回 第4項

2010年7月29日

第4項 測量結果の基準面への補正(傾斜の補正,標高の補正)
 
■ 傾斜の補正
 
 距離や面積は基準面で表示される、このことは前述したとおりです。私達が測量する土地は水平なものだけではありません。求める面積における土地の高さは、異なります。傾斜のある土地の距離を測量した場合、水平距離にしなければなりません。「傾斜補正」と呼ばれているものです。例えば、傾斜が30度の斜距離は、水平面の距離にすると次のようになります。

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 図に示す30度の傾斜地の表面積「1000坪」は、水平面の面積にすると次のように「866坪」なります。

水平面面積=(傾斜地の表面積:1000坪)×0.866=866坪

ここで示しました「傾斜補正」は、基準点測量・地籍測量・地積測量・用地測量……などほとんどの測量で使われるものです。
 
■ 標高の補正
 
 前述した地表面から基準面へ引き直す「標高の補正」は、必ずしも計算されていません。例えば、地籍測量における「放射法による細部図根測量」ではこの計算が行われていません。古い時代の測量では、計算の手間暇のかかる割合にしては利益が少ないと判断されたのでしょう。
標高500mの高原における別荘地の距離は、標高0mの基準面上では何mになるのでしょうか。計算してみましょう。

6,370,000 0.9999215

6,370,000+50

約1万分の1だけ減少します。1万分の1は誤差範囲として無視されてきた訳です。その標高における地表面積300坪は、何坪になるのでしょうか

6,370,000 2 ×300坪 299.95坪

6,370,000+50

約1万分の2だけ面積の減少が起こります。

第5回 第5項

2010年7月29日

第5項 楕円体面から平面への補正 
 
 以上述べてきました内容は、地表の距離の測定値または面積を基準面のそれに引き直す計算です。現行の基準面は「平均海面」であり、測地成果2000の基準点面は「準拠楕円体面」です。小範囲であれば、この距離や面積は平面上のものとして扱えます。

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 楕円体を平面で近似するには、楕円体面を細切れの小地域に分割することによって、歪みを小さくすることができます。楕円体面上の距離と平面上の距離の差を1万分の1以内のおさめるために、日本列島を19分割しました。上図の各座標系の中央に座標原点をつくった19平面直角座標系が、公共測量において採用されています。

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19分割された各座標系の原点において、楕円体面上の距離Sと平面上の距離sの比である縮尺係数は、m0=0.9999に定められています。東西方向に90km離れた縮尺係数はm=1.0000で、東西方向に130km離れた縮尺係数は1.0001となっています。
地表での距離の測定値は、「傾斜の補正」「標高による基準面への補正」「楕円体面から平面への補正」という3つの補正により、平面座標の距離へ変換されます。

第5回 第6項

2010年7月29日

第6項 まとめ
 
 アメリカでは、地表面水平距離と基準面距離の割合を「標高係数」および楕円体面と平面の距離の割合を「縮尺係数」と呼んでいます。2つをひっくるめて「合同係数」というように呼んでいます。地籍測量における「放射法による細部図根測量」では、この合同係数の計算は行われていません。土地家屋調査士の方々の測量においても同様に、この合同係数の補正は省略されていると思います。なお、縮尺係数は「s/S(エスバイエス)」とも呼ばれています。

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 地籍測量における土地の面積は、平面上のものが使われます。測量法第11条の定義によれば、「距離及び面積は水平面上の値で表示」となっています。上の図のA点付近における平面上の面積は、水平ではありません。また原点付近とB点付近においては、平面距離と基準面距離は1万分の2違います。面積にすれば、1万分の4異なります。原点付近の土地所有者は、1万分の2だけ小さく登記しています。買い手は得をしますが、売り手は損します。B点付近は逆です。A点の地主とB点の地主が等面積交換した場合、損はAかBか?
現在はこうした誤差については一切無視し、土地の面積表示を行っています。最初に「測地成果2000の面積表示で日本の面積が100万坪減少する」と述べました。この誤差は10万分の1ですから、楕円体面を平面として扱った誤差の20分の1程度で極めて小さいものです。最初に「お遊びの話」と言ったことがご理解いただけるものと思います。
 原点付近上の標高1000mにおけるダムの堤防の長さ100mを平面座標と比較してみましょう。標高係数は、0。999843です。縮尺係数は0.9999なので合同係数は0.999743になり、平面距離は99.974mになります。この場合約3cm異なり、決して無視できない量です。土木測量において平面直角座標系を使って処理する場合、十分な注意が必要です。
 今回のお話は,地積測量における「座標づけ」の知識に欠かせない内容のうち、極めて初歩的なものだけを取り上げました。地籍測量の「基準点測量作業規程準則」または土地家屋調査士用の「調査・測量実施要領II(技術基準)」などは、電子計算機がなかった手計算時代の水準を色濃く残したままのものです。電子計算機が普及した現在、これらの規程は現代的なものになるよう大幅な改定が必要なのではないでしょうか。測地成果2000はその絶好の機会と言えるのではないでしょうか。

第6回 第1項

2010年7月29日

第1項 日本の位置の大きなずれ(日本測地系)
 
 原点の地点が東京に選ばれ、その地点における天文測量で原点の経緯度などが決められました。日本の「経緯度原点」と呼ばれているものです。これは、地球の形と大きさは「ベッセル楕円体」を採用し、経緯度原点において地球に結合させています。一方、「日本列島の形と大きさ」は三角測量で決められ、経緯度原点および楕円体面上に結合されています。今から約100年昔の明治時代につくられた日本の位置を表す取り決めです。最近は「日本測地系」と呼ばれだしました。三角測量や三辺測量などのような地上測量を行っている限りは、日本測地系などを意識する必要もありませんでした。
 90年代に入りGPS測量が実用化すると、事情は一変しました。日本だけに通用する「日本測地系」とGPS測量に必要な汎世界(グローバル)的な「世界測地系」の使い分けが必要になってきたのです。

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 日本測地系が採用しているベッセル楕円体や原点の経緯度が実際の地球に正確に結合していれば問題がないのですが、ベッセル楕円体の半径は実際の地球の半径より約700mも短いのです。さらに世界地図上では、日本の経緯度原点の位置は実際の地球上の位置より南東約450mのずれたところに印されているのです。また、日本測地系のベッセル楕円体の中心位置は、地球重心から約850mも離れています。

第6回 第2項

2010年7月29日

第2項 公共測量GPSに必要な座標(WGS84)
 
 精密なGPS測量では、衛星からの電波を2点PとQ点で受信して、受信電波の「波の数」を処理して、座標差(x,y,z)を決めます。地球上の経緯度や高さが決まるのではありません。この処理計算では、P点の経緯度と高さが必要になります。同じ電波信号でも位置によって計算される座標差(x,y,z)が異なってきます。その位置は、大雑把に地球上の位置で±10mの正確さであればよいと思います。既にお分かりと思いますが、私達が日本で使っている約400mもずれている経緯度は使えないのです。

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 GPS測量において座標差(x,y,z)を計算する事を「基線解析」と呼んでいます。この基線解析に必要な大雑把な座標を求める目的で「TKY2WGS」という座標変換プログラムがつくられました。国土地理院がつくったものです。「TKY」はTokyo Datum(日本測地系)の略、「2」は「to」の略、「WGS」はWGS84座標系の略です。つまり、私達が使っている座標を基線解析のためのWGS84座標へ変換するのです。くどいようですが、この座標変換で得られたWGS84座標は基線解析を目的としたものですから、大雑把なもので、メートル単位の誤差があります。基準点測量では、「基線解析以外に使ってはならない」ものです。

第6回 第3項

2010年7月29日

第3項 座標系の混乱
 
 既に述べましたように、GPS測量の基線解析では、±10m程度の地球上の位置が必要になります。そのために公共測量では「WGS84」が使われています。基線解析が終われば、WGS84座標は一切無関係なものになります。公共測量作業規程では、基線解析結果の座標差である「基線ベクトル」(x,y,z)は何らの座標変換なしに、そのまま日本の座標系で扱います。
基線ベクトルはWGS84座標系で扱わなければならないもの、と勘違いしている例が時々みられます。三角点の経緯度座標を「TKY2WGS」で座標変換し、得られたWGS84座標を使って網平均計算を行うように考えている方もみかけられます。くどいようですが、「TKY2WGS」は基線解析に使う大雑把なWGS84座標を得るためのものです。別な言葉で言えば、日本の現行座標とWGS84座標との正確な座標変換プログラムは存在しません。

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 「GPS測量」イコール「WGS84」と思い込んでいる例が数多く見られます。基線解析目的で新たな座標系が入り込んできたため、混乱しているのです。GPS測量では何が何でも「WGS84」を使わなければ気が済まないといった言葉・文書などがしばしば見受けられます。
 ある事例では「ITRF/GRS80」としていました。どうもおかしいので筆者が追求したところ「WGS84」座標系が使われていました。「ITRF」を「WGS84」に座標変換していたのです。全く不必要な余分な座標変換の計算をしていました。

第6回 第4項

2010年7月29日

第4項 測地系、座標系、楕円体
 
 「日本測地系」を「ベッセル」、或いは「ITRF」を「GRS80」などと、測地系や座標系を楕円体名で呼ぶ例がみられます。"地球上の位置を表すための基準面・原点・三角網の体系を「測地系」と呼んでいる(日本学術会議測地学研究連絡委員会、平成10年10月28日)"というように、楕円体は、測地系や座標系を指すものではありません。

測地系 座標系 楕円体 主な観測値
地球重心系
(世界測地系)
国際地球基準フレーム
(itrf)
なし vlbi
wgs84 wgs84  
日本測地系2000
(jgd2000)
itrf94 grs80 vlbi,三辺・△・gps測量
tokyo97 測地曲線座標系
3次元直角座標系
ベッセル vlbi,三辺・三角・gps測量
日本測地系
(tokyo datum)
測地曲線座標系 ベッセル 三角測量,天文測量
各国測地系
(100以上)
  各種楕円体  

上の表に示しましたように、「測地系」、「座標系」、「楕円体」に区別してみると幾らか分かったような気分になるかもしれません。「日本測地系2000(JGD2000)」と言えば、座標系は「ITRF94」で「GRS80」が楕円体です。または「JGD2000=ITRF94/GRS80」などと表されるかもしれません。現行の測地系は「日本測地系/ベッセル」と表せるかもしれません。
 測地系や座標系を「ベッセル」楕円体の名称で呼んでも日本の国内だけで議論していた時代ならそれほど問題になりません。グローバルな地球上の位置を表すのに楕円体だけでは正確な表現になりません。ITRFで表した座標をGRS80と呼ぶのは誤りです。上の表でみても重心系であるITRFは楕円体をもっていません。
 なお、上の表は筆者が勝手につくったもので、「測地系」と「座標系」の関係が明瞭ではありません。国土地理院のHPでは測地基準系(=測地系)として説明されていますが、日本測量協会の出版物では「日本測地座標系」などと記述している例もみられます。今後言葉とその定義が整理されることになるでしょう。

第6回 第5項

2010年7月29日

第5項 GPS測量は日本測地系で処理する
 
 電子基準点を使ったGPS測量で、電子基準点座標であるITRFを日本測地系座標にみたてて「TKY2WGS」座標変換プログラムを使って、座標変換を行い基線解析を行いました。GPS測量なら何が何でも「ダブルジーエスハチジュウヨン」を使わなければ気が済まない例です。学者先生のなかにも一部混乱している例があると聞いています。
 よくみかける誤りは、先にのべました「TKY2WGS」を使って正確なWGS84座標を得たものと勘違いしている例です。
 誤解の生じた理由は、測量士の試験問題やその解説などに一つの原因があります。例えば、"GPS測量では、GPS固有の座標をもつWGS84系から日本測地系への座標変換が必要である"(1992年度測量士No1D問題解説)と解説しています。こうした記述はしばしば見かけます。公共測量作業規程では、WGS84座標系から日本測地系への座標変換は定められていません。その必要がないからです。

06-05-1.png

 図は、公共測量作業規程に定められた既知点座標から未知点座標を求める方法です。既知点の日本測地系座標に基線解析結果から得られた基線ベクトルを座標変換せずにそのまま加えて、未知点の座標を求めます。未知点の高さは日本測地系における楕円体高が計算されるので、そこのジオイド高を引いて標高とします。

第6回 第6項

2010年7月29日

第6項 混乱期から統一期へ
 
 公共測量における基準点測量の処理では、次のことが言えます。

  1. GPS観測(広報歴)の基線解析座標:WGS84
  2. 基線解析以外は全て日本測地系座標
  3. 基線解析以外の目的で「WGS84」<->「日本測地系」の座標変換の必要がない

 現在、日本測地系と他の座標系(例えばWGS84)との正確な座標変換プログラムはありません。国土地理院HPには次のように記されています。
 
"WGS84系は,元来,数mの精度を目標に維持管理されている座標系なので、数cmの信頼できる変換パラメータは存在しません。"
 
 あまりにも無批判に「ダブルジーエスハチジュウヨン」に憑かれた例にぶつかるので、筆者自身もしばしば混乱してきました。筆者の混乱を自分自身に言い聞かせるためにも今月号は、同じ事をくり返し述べてきました。旧来の日本測地系からグローバルな測地系への移行過程で生じている混乱のように思います。特に、指導的立場にある公的機関の担当者は、民間測量業者からすれば「神様」です。筆者も含めて過渡期の混乱から早く抜け出したいと願っています。過去には混乱のなかで書いた筆者の文章も出回っています。読者の方々のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。

06-06-1.png

 測地成果2000が実現すれば、日本の新測地系JGD2000はITRF94/GRS80に統一されます。GPS測量の基線解析もITRF94/GRS80で行います。結局、座標系の混乱は回避されると思います。新測量法案が国会の審議を経て早く公布施行されることが期待されます。

第7回 第1項

2010年7月29日

第1項 測地成果2000で座標系の混乱が解消
 
 現在の基準点測量は、東京原点とベッセル楕円体を基準とした日本測地系で処理されます。90年代にGPS測量が実用化されると、その基線解析に限って日本測地系座標でない地球重心系座標が必要になりました。公共測量では、基線解析にWGS84座標系が使われています。
ところが、日本測地系でない座標系が入り込んできたことから、混乱が生じてきました。GPS測量には何が何でもWGS84を使わなければならないと、多くの測量関係者が誤解しました。その辺の事情は前回で述べました。

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電子基準点配置図 (国土地理院資料より)

 測地成果2000が実現すると、ITRF94/GRS80が日本の座標系となります。GPS測量の基線解析及び全ての処理がITRF94/GRS80に統一され、すっきりします。混乱も紛れも生じようがなくなります。つまり、多くの方々がGPS測量を簡単にできるようになります。

第7回 第2項

2010年7月29日

第2項 GPS測量で簡単に座標付けが可能に

現在、日本全国に1000点近い電子基準点が配置されています。今後さらに増設されると思います。 
 
電子基準点アンテナ (高さ5m)
(国土地理院資料より)
 
 
 土地家屋調査士の皆様が、正確な座標を求めたい地積図の場所にGPS受信機1台を設置し、1時間程度GPS信号を受信します。最寄りの電子基準点の信号を国土地理院のサイトからダウンロードして計算すれば、求めたい場所の正確な座標が得られ、極めて簡単な操作で地積図の座標づけができることになります。
こうした処理方法は、地積図に限らず座標づけが必要なあらゆることに適用できます。
 当社アイサンテクノロジーは、使い勝手の良いソフトを皆様に提供することができます。

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電子基準点アンテナ (高さ5m)
(国土地理院資料より)

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第7回 第3項

2010年7月29日

第3項 GPS測量による座標づけ (1)
 
 図に示すような宅地があり、面積は正確に決められています。この宅地の座標を決めるため、2点A及びB点を選んでGPSアンテナを設置して、GPS観測を行います。公開されている電子基準点のデータを使いA及びB点の座標が直ちに求まります。そうすれば、計算でC及びD点などの座標も求まります。
GPS観測点がA点の1点だけであれば、A点の座標は決まりますが、B点やC及びD点の座標は決まりません。宅地全体の座標を決めるには2点のGPS観測点が必要になります。

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第7回 第4項

2010年7月29日

第4項 GPS測量による座標づけ (2)
 
 GPS観測のためには、衛星の発する電波を受信しなければなりません。そして、その電波を受信するためには上空の視界が開かれている必要があります。
 では、問1、問2の様なケースの場合は、どの様に対処すれば良いでしょうか?
 
問1:
図に示すような宅地があり、面積はトータルステーションにより正確に決められています。
この宅地の1ヶ所B点でGPS観測ができますが他の場所では上空視界が開かれていないためGPS観測ができません。

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 このような場合、付近の上空視界が開かれているGPS観測ができる場所を見つけ、方位点Pをつくります。このP点と宅地境界のB点の2点でGPS観測を行います。B点におけるP点の方位はGPS観測結果から得られます。次にB点においてPとAの角∠PBA=βをトータルステーションで測ります。そうすればB点におけるA点の方位(α+β)が決まるため、A点の座標が求められ、宅地全体の座標が確定するのです。
 
問2:
図に示すような宅地があり、面積はトータルステーションにより正確に決められています。この宅地の中では上空視界が開かれた場所がないためGPS観測ができません。

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 このような場合、付近の上空視界が開かれているGPS観測ができる場所を見つけ、P及びQの2点のGPS観測点をつくります。P点からQ点の方位はGPS観測結果から決まります。水平角∠QPB=β及び∠PBA=γをトータルステーションで測ります。また、P点とB点の距離Sも測ります。そうすれば、多角測量の原理でB点やA点の座標が決まりるため、宅地全体の座標が確定するのです。

第7回 第5項

2010年7月29日

第5項 GPS測量による座標づけ (3)
 
測地成果2000と地積図の座標づけ
 2000年3月号「土地家屋調査士」(日本土地家屋調査士会連合会 発行)のなかで、「土地家屋調査士業務と基準点」と題した法務省担当者の講義録が記載されています。この講義では、地積図の座標づけの重要性がくり返し強調されています。この講義で述べられている座標づけの議論は、公共基準点または地籍測量における図根点などの基準点設置が前提のように思えます。つまり、あらかじめ基準点の設置がなされていて、それを基に地積図の座標づけを行うという手法のように思えます。
 しかし、測地成果2000が実現した場合、GPSによる地積図の座標づけは、公共基準点や地籍図根点の設置とは無関係に行えるのです。そのことは、今月号で詳しく述べたところです。極端に言えば、境界点の設置が不要になるのです。筆界が座標で決められていれば、いつでも筆界は電子基準点から復元できるからです。ただし、日本は地震国なので、地震による地殻変動などのとき、境界点は筆界を復元する補助的な役割を果たすため、あった方がよいと思います。
 
技術の発展
 現在の電子基準点は約1000点で必ずしも十分密な配置ではありません。今後さらに増設されるでしょうし、1200点位まで増設する計画もあります。また新しい技術が出ています。それは「仮想電子基準点(Virtual Reference Station:略称VRS)」です。電子基準点が無限密度で設置されたような効果をもたらします。国土地理院ではすでに実験段階に入りました。こうした技術は実現すると思いますが、そうすればいよいよ簡単に地積図の座標づけができるようになります。
 
実施要項の改訂を提言
 2000年12月号の内容は、「土地家屋調査士制度創設50周年記念行事」としてある県の土地家屋調査士会が実施した技術研修会における筆者の講義内容をまとめたものです。
 「日本土地家屋調査士会連合会,調査・測量実施要領II」に示された測量方式は複雑です。測地成果2000の実現と共に、GPS測量による測量方法も追加する必要があるのではないでしょうか。
 追加・改訂の作業等には、私どもアイサンテクノロジーが、測量システムの一メーカーとしてお手伝いさせて頂けると光栄です。また、GPSを利用した測量業務におきましても、皆様方の使い勝手のよいアプリケーション開発を心掛けています。

第8回 第1項

2010年7月29日

第1項 最近の測量業界の実態
 
 図は建設省建設経済局が公表している「測量業50社の契約金額」を年度別割合で表したものです。契約金額は、1995年度をピークに1999年度は約3/4に減少しています。特徴は、民間の仕事量の減少が全体の仕事量を減らしていることです。測量業界の精神的苦痛の実感としては、この統計以上の苦しさです。

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測量業50社の契約金額 (建設省建設経済局)

 こうした市場の状況から業者間の受注競争が激化して、ダンピング的受注も増えてきております。つまり、受注単価が低くなったので、受注金額に対して仕事量が増えてきました。「仕事があっても儲からない」ということです。また、公正取引委員会も目を光らせております。一昨年と昨年には、千葉県の業者と北海道の業者が談合による排除勧告を受けました。
 公共事業をめぐる環境は一段と厳しくなってきています。しかし、極く僅かですが、企業努力によって測地成果2000に関する仕事の受注をした業者も複数見られます。従来型の仕事が確実に減少する環境で、測地成果2000に限らず新しい事業の創出が求められてきていますし、筆者にもその努力が見えてきております。
 そうした状況下にあって、最近測量業界の各方面で、国土調査に伴う地籍測量が関心を集めています。それというのも日本の地籍測量が極めて遅れているからで、業界関係者は測量事業の創出の焦点を地籍測量にあててきているように見えます。

第8回 第2項

2010年7月29日

第2項 地籍国際シンポジウム
 
 土地家屋調査士をめぐる環境も測量業界と似ていますので、地籍測量に関心を示しているように思います。昨年11月10日,11日の2日間、地籍国際シンポジュウムが東京で開催されました。日本土地家屋調査士会連合会が、制度制定50周年を記念して催したものです。台湾、韓国から10名の参加を含め、35名のコーディネータやパネリストによるものです。筆者はその催しに参加しませんでしたが、昨年11月30日付け朝日新聞でその様子を知りました。フルサイズ2面を使った報告です。余談ですが、1面の広告費は全国版で4000万円かかるそうですから、約8000万円という膨大な広告費に相当します。
 参加者の顔ぶれを見ますと、学者、法律家、お役人、土地家屋調査士などで出席者の顔ぶれにふさわしい議論が展開され興味ある内容になっています。基準点測量の実務経験者が少ないようなので、地籍図根測量など基準点測量や測地成果2000に関する議論は、新聞には記載されていませんでした。

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朝日新聞 2000.11.30

 また、昨年11月29日、30日に開かれた「全国測量設計業協会連合会技術委員会」による「全国技術者責任会議」では、「地籍」が昨年に続いて大きな主題でした。ここでの議論も、

  1. 国民や行政の関心が薄い
  2. 予算規模(単価も含む)が低い
  3. 一筆調査(E工程)が困難

 などに集約され、基準点や測地成果2000との関連があまり見られません。
 いずれも基準点測量や測地成果2000との関係した議論が薄い感じです。今回は、筆者の専門分野である基準点測量(測地成果2000)の切り口から、地籍測量を眺めてみたいと思います。

第8回 第3項

2010年7月29日

第3項 地籍測量と測地成果2000
 
 1世紀昔につくられた一,二,三等三角点は、設置後の地震に伴う地殻変動や地盤変動などで場所によってはその座標の不整合が大きくなってきました。これらを基に、地籍測量の基準点となる四等三角点がつくられました。三角点座標の不整合が大きい場所では、四等三角点の位置も当然不整合を生じています。1951年から開始された四等三角測量の結果、国土地理院は現在約62000点の四等三角点を管理しています。
 地籍測量の基準点は、これら四等三角点が既知点として使われています。下図は、ある地域における地籍測量の図根点の閉合差と観測距離の関係を示したものです。一見ばらつきが大きいのですが、その原因は四等三角点の座標の不整合にあります。しかし、現在使われている規程に定められた誤差の許容範囲内におさまっています。つまり、規程上では全く問題がありません。

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地籍図根測量の距離と誤差の関係

 国土調査法施行令によれば、市街地を対象とした最も正確な場合における筆界点間の公差は、次のように定められています。「公差」とは基準値との差を言い、大雑把には測量誤差と理解できます。

筆界点間距離 10m 公差 29mm
  20m   33mm
  40m   39mm

 また、筆界点の位置の誤差を示す公差は60mmです。測地成果2000が実現したら、このような大雑把なものは「測量」とはいえません。国家基準点の不整合及び古い時代の技術である平板測量を基に定められた基準ですから、仕方なくこんな大雑把なものになっているのでしょう。

第8回 第4項

2010年7月29日

第4項 「地籍GIS」というけれど・・・
 
 前述の国際地籍シンポジュウムのなかで、地籍情報と地理情報システム(GIS)との関連の議論もなされています。地籍情報をGISデータとして取り込む話は、今に始まったことでなく、いろいろなところで議論されてきています。人によっては「地籍GIS」などの造語を使う方もおります。
 問題は、現在の地籍測量で定められた精度のままで、21世紀のGISデータとして使えるか、という問題です。平板測量を用いた図解法による成果は、ディジタル化しても21世紀のGISデータとしては、ほとんど利用価値がないのではないか、という疑問が生じてきます。例えば、地籍測量における山林及び原野地域の筆界点の公差は、次のように定められています。

筆界点間距離 10m 公差 0.640m
  20m   1.126m
  40m   1.385m
筆界点の位置の誤差 公差 3m

 現在、地球上任意の2点間における位置関係は、人手の指がもつ爪の面積範囲程度の正確さで決めることが可能な時代です。上のような規程に基づいてつくられた図が、ディジタル化されたからといって21世紀の「地籍GIS」データとして活用できるのでしょうか。
 福永宗雄著による「17条地図活用マニュアル」(日本加除出版)によれば、トータルステーションによる一筆地調査が開始されたのは1985年頃からで、費用がかかるが正確である、と記されています。
 測量の正確さと密接に関係しているものが、測量単価です。地域によっても異なるようですが、地籍測量の単価は、公共測量単価の数分の1と言われています。現在の地籍測量の評価基準は進捗率です。もし、測量精度を上げれば大幅に進捗率が遅れる可能性があります。進捗率だけでなく、21世紀に耐えられるデータ取得の意味も考える時期にきているのではないでしょうか。
 測地成果2000計画は、こうした問題提起にもなってきています。つまり、測地成果2000の実現により、各基準点座標の不整合が解消される可能性が高まりました。その結果、国家基準点はより正確なものになり、地籍測量の規程だけでなく様々な測量作業規程が、より正確なものに改定されるように迫られてきているのではないでしょうか。どんな理由があるにせよ、筆界点座標誤差の公差が3mも許されているようでは、それは21世紀の測量ではないと断言できます。私も含め関係者の規程改定の努力が求められています。

第8回 第5項

2010年7月29日

第5項 地方の時代
 
 私達の周辺における最近のキーワードとして、「国際化」、「規制緩和」などの他に「地方の時代」が強調されだしました。中央で決めたことに地方が無批判に従う時代は、終わりつつあるのだと思います。測量の作業規程なども地方によって独自性を出せばよいのではないでしょうか。首都圏など人口密度が大きい場所では、ことのほか測量の正確さが要求されます。地殻変動の大きい地域では、座標に時間の要素(パラメータ)を加える必要があります。無論、建設省公共測量作業規程のような標準的な国家基準が必要なことは言うまでもありません。
 筆者はよくお客さんから測地成果2000に伴う座標変換にあたって、その座標変換方法などについて、質問を受けます。こうした質問の中には、画一的な基準への期待が込められているものもあります。測地成果2000の計画は、国際標準にすることと、基準点の整合性を高めること、にあります。したがいまして、 

  • 対象地域が市街地又は山林原野
  • 地籍や公共基準点の設置年度など、その歴史
  • 地盤沈下地域又は地震発生、もしくは地殻変動の大きい地域
  • 自治体の財政状況

 など、様々な条件を考慮して、その地方の要求する計画をつくれらなければなりません。画一的処理は不可能であると思います。諸般の事情を考慮して基本設計を行います。各社の技術力が試され、現在のような「低価格競争」でなく「技術力競争」になるのではないでしょうか。各社とも技術力の切磋琢磨によって業界の技術水準を高め、結果として住民への貢献が可能になるように思います。
 昨年夏に建設省は、入札・契約の手続きの改善について示しました。一言でいえば、技術評価を高める内容になっています。下図はその様子を現しております。従来のように発注を待って、マニュアルに従った定型的業務は仕事量そのものが減少しているので、「低価格競争」にならざるをえません。測地成果2000の座標変換に関した総合的判断と技術力を要するような地方に適した仕事は、随意契約となることでしょう。 

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第9回 第1項

2010年7月29日

第1項 建設省公共測量作業規定の改定
 
 測地成果2000の公布・施行にともなって、現行の公共測量作業規程は改定されなければなりません。国土地理院はその改定の準備作業を進めています。昨年暮れに「公共測量作業規程改定検討委員会」が開かれました。
 事務局は、建設省、国土地理院、(社)日本測量協会で委員の構成は、次の機関の代表者です。

  • 大学
  • 総理府・運輸省・建設省
  • (財)測量調査技術協会
  • (社)全国測量設計業協会連合会
  • (社)日本測量協会
  • 日本測量機器工業会

改定を予定している主なところは、次のようなものです。

  1. 楕円体の幾何定数:ベッセル楕円体から測地基準系1980(GRS80)へ変更
  2. 基準面:TSによる距離計算はジオイド面から楕円体面へ変更
  3. GPS測量の基線解析に使う初期座標:従来のWGS84座標から、緯度・経度は成果表座標、楕円体高は標高とジオイド高の和へ、と変更
  4. 電子基準点:既知点として電子基準点の使用が可能
  5. 正標高:1級水準測量においては楕円補正から正標高補正へ変更
  6. 3次元網平均におけるGPS観測値の重量:固定値(0.007m)2から水平方向(0.004m)2及び垂直方向(0.007m)2へ変更
  7. 連続処理:日本測量協会の審査が不要、と変更

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 上記改定内容の詳細を知りたい方は、筆者等による教科書「測量計算」をご参照下さい。
 今回の最大の変更は、電子基準点が既知点として使えるようになったことです。電子基準点の公共測量への利用は画期的なことで、今後の測量技術の利用を飛躍させられる体制ができたとも言えます。
 改定の内容を簡単に見ていきましょう。

第9回 第2項

2010年7月29日

第2項 楕円体の幾何定数
 
 測量法で定められている地球楕円体は、ドイツの天文学者ベッセルにより1841年に決められたものです。この楕円体の半径は、最新のものより約700mも短いものです。改定で使われる地球楕円体は、1980年に国際会議で定められたものです。測地基準点系1980(Geodetic Reference System 1980:略称GRS80=ジーアールエスハチジュウ)と呼ばれ、国際的に「お勧め」の最新の正確な地球楕円体です。

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 半径は約1/10000大きくなるので、緯度・経度を物差しとした地図の図郭等は、約1/10000だけ短くなります。1/2万5000地形図では1m程図郭が小さくなります。

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第9回 第3項

2010年7月29日

第3項 基準面
 
 本講座第5回でも述べた内容のものです。これまで水平位置の基準面は「ジオイド面」でした。測地成果2000における水平位置の基準面は「準拠楕円体面」になります。

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 測量で使う本来の基準面は準拠楕円体なのです。昔はジオイド高が正確に分かりませんでしたので、水準測量などで求めたジオイド面からの高さである標高が、基準面への化成に使われました。つまり、これまでは略式処理がなされていたわけです。測地成果2000では本来の姿である正規の処理がなされることになります。
 日本における準拠楕円体面とジオイド面の距離は、30~40mです。図に示すように準拠楕円体(GRS80)面の方が、ジオイド面より30~40m地球中心に近くなります。だから、新しい基準面の距離は、古い基準面の距離より短くなります。その量は、1kmで5mm程度(5ppm)です。面積では1km2当たり10m2狭くなります。日本全体の面積に換算すると、面積が120万坪減少することになります。下式によります。
 
 日本の面積 380,000km2×10m2÷3.3坪=1152,000坪
 
 これまで基準面への距離の化成は、標高Hで行われていましたが、測地成果2000ではジオイド高Nを求め、h=H+Nがその化成に使われます。間違いのないように注意したいものです。

第9回 第4項

2010年7月29日

第4項 GPS測量の基線解析に使う初期座標
 
 現行公共測量におけるGPS測量の基線解析では、WGS84座標が使われています。そんなこともあってか、GPS測量ではWGS84座標系が一対のものと勘違いされてきています。一方、基準点座標は日本測地系座標を使うので、座標の使い方に混乱が生じています。本講座第6回で、WGS84に関する混乱の様子を述べました。要するに、WGS84座標は、公共測量における基線解析の初期値として限定的に使われているもので、測地成果2000から消えてなくなるものです。
 測地成果2000ではITRF94座標が使われます。WGS84より正確な座標ですから、緯度と経度は成果表の座標をそのまま使えばよいことになります。基線解析の座標及び基準点座標が同じものなので、座標系に関する取り扱いの混乱は解消されます。ただし、基線解析に使う高さは楕円体高なので、成果表に記述された標高にジオイド高を加えなければなりません。

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 図のPQはGPS測量から求めた基線ベクトルです。3次元直交座標(X,Y,Z)が緯度φ・経度λ・楕円体高hに変換されます。

第9回 第5項

2010年7月29日

第5項 電子基準点
 
 今回の改定の最も大きなことは、電子基準点が使えることになったことであると思います。現在、日本全国に900点余りの電子基準点が設置されています。

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電子基準点配置図 (国土地理院資料より)

 今回の改定において1級基準点の場合は、電子基準点のみを既知点として決められますが、2及び3級基準点では電子基準点の他に同級基準点又は1級基準点などが必要になります。一部には、2,3,4級も電子基準点だけで決定できるように求めることを主張する利用者もいるようです。しかし、比較的基準点間距離の短い3,4級などにおいて電子基準点のみを既知点とした場合、現在の電子基準点の密度では点間の整合性が問題になるかもしれません。

第9回 第6項

2010年7月29日

第6項 正標高
 
測量で使われる高さは、ジオイド面から鉛直方向の長さHで定義されます。
静水面は同じ高さとは限りません。一般的に静水面は平行ではありません。そのために、場合によっては正標高の低い所から正標高の高い方向へ水が流れることがあるのです。正確な正標高を求めるためには、実測に基づく正確な重力値が必要になります。

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 現在日本で使われている高さは正標高には違いはありませんが、実測に基づく正確な重力値が使われていません。地球を一様な密度分布をもった回転楕円体と仮定した場合の「正規重力」を使っています。測地成果2000では、正確な重力値に基づいた高さである「正標高」が使われます。
 現在使われている高さと新しい正標高の差は、山岳地で大きく、日本で一番高い野麦峠の水準点(1700m)では約20cm高くなります。平地ではそれほど問題になることはありません。
 現在の水準点の高さは、1969年が基準で、約30年が過ぎています。日本は地殻変動が大きいので、むしろそのことが問題で、20~30cmも修正される場所もあります。

第9回 第7項

2010年7月29日

第7項 測地成果2000法案の行方
 
 以上見てきましたが、関係者はその準備に精力的に活動しているようです。今国会ではぜひとも法案成立が期待されます。
 しかし、政局の不安定から測地成果2000関連法案が吹き飛ばされかねない懸念が、関係者のあちこちでささやかれています。確かに、21世紀に入ったら法案成立にマイナスになるようなスキャンダルが、噴出してきた感じがします。1月号で筆者は、森総理の「一言」を懸念しましたが、現状は「一言」からもっと根が深い「政権の構造」の問題になってきている感じもあり、法案成立が若干懸念されているところが現状の様です。

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 実は、当社では約2年前から、社内に「JGD2000プロジェクトチーム」を発足させ、測地成果2000に関する事前調査・研究、そして公共基準点のローカル座標変換:試作開発を進めてきました。一昨年暮れには、測量関係者向け「JGD2000 Solution Tool(基点用 ローカル座標変換ソフト体験版付き)」を発売し、今またその第二弾とも言える応用実務編として、地図変換に伴う基礎・概要から図郭数値の変換用「JGD2000Solution Tool2-M(地図データ数値・図郭・図郭数値等)」の準備を急いでいます。両製品を測地成果2000への入門ツールとしてご活用頂ければ幸いです。
 昨年、測地成果2000関連法案の国会提出が見送られてしまい、業界ではすっかり「測地成果2000」に関する熱が冷めてしまったかの様にも危惧しておりましたが、今度こそは!筆者等は法案成立を期待しております。

第10回 第1項

2010年7月29日

第1項 地方財政と測地成果2000
 
筆者は、先日ある県の職員研修会で、測地成果2000関連の講演を行いました。そこで出された県職員の意見は、「国土地理院は、測地成果2000になっても面積は変わらないので、混乱はないという主旨の説明をしている。それならば住民の税金をつぎ込んでまで現行測地成果を変える必要がないのではないか」というものでした。こうした測地成果2000に関する必要性の疑問がそこここで多く聞かれます。
測地成果2000の事業は明治以来100年ぶりの世紀の大事業ですが、国土地理院はこの事業推進のために特別な経費を見込んでいないのか?、地方が全額負担することになるのか?、負担を強いられそうな地方から疑問が出されているのです。その背景に地方財政のひっ迫があります。図は総務省のHPに示された地方財政の借金の推移です。右肩上がりで借金が増えてきています。

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総務省HP(地方財政)より

地方自治体の方々は、「国がやるべき仕事をなんで地方が経費負担しなければならないの」と言いたくなるようです。こうした地方の疑問をしっかりと受け止め解決方法を示さないと、測地成果2000に伴う地方自治体の改定作業が遅れる可能性があります。
なお、本講座は測量業者を対象に、こうした地方自治体などがもつ疑問を解消して測地成果2000事業を成功させる目的をもって始められたものです。まず、本講座最初の第1、2回をご笑覧下さい。

第10回 第2項

2010年7月29日

第2項 測量の基礎知識の充実
 
 地方自治体の財政問題もありますが、筆者が感じることは、関係者の測量に関する基礎知識の充実の必要性です。座標系、地球楕円体及びジオイドなど位置の基準に関する基礎知識、並びに、座標変換などに関する基礎知識を充実する必要があると思っています。

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当社が発売している測地成果2000教育用CD

 私達一民間人は微力です。それでも測量技術者の基礎知識習得を援助するために僭越ながら、「測地成果2000 Solution Tool-CD」を一昨年リリースしました。また、測地成果2000に関連した測量業者を対象とした無料説明会を、帯広、札幌、大曲、郡山、水戸、東京2回、川口、横浜、富士、浜松、名古屋、大阪2回、岐阜、富山、神戸、兵庫、熊本、鹿児島などの都市で行ってきました。私達は、お客様の使い勝手のよい製品を開発することなどで、引き続きお手伝いをさせていただきたいと思っております。

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2000年システム展で測地成果2000関連の講演をする筆者

第10回 第3項

2010年7月29日

第3項 位置を表す約束事(座標系)
 
多くのお客さんや測量関係者と接触していますと、技術的につまずくところに共通したものがあることに気づきます。その一つが「座標系」に関することです。必ずしも認知された内容ではありませんが、座標系に関しては10及び第6回の本講座でとりあげました。
 多くの方々にみられる一番のつまずきは、「座標系」と「地球楕円体」の区別がついていないことです。例えば、「日本測地系」を「ベッセル」、「測地成果2000」を「GRS80」と呼ぶ方をかなり多く見受けます。これは誤りと言うべきでしょう。

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長田町1丁目の座標系

 上図に示された長田町1丁目2番地の加藤さん宅の右上境界点Pは、客観的に存在します。そのP点の位置を約束に基づいて記述します。この例の場合、

  1. 原点Oを町会の境界中央に選ぶ。
  2. X軸を1丁目1番地と1丁目2番地の道路の中心方向に選ぶ。
  3. Y軸は原点OでX軸と直交するように選ぶ。

 原点Oと座標軸X及びYがこの座標系の枠(フレ-ム)になります。この約束事(座標系)により、P点の位置を記述すれば、X軸方向の長さ 30.615m、Y軸方向の長 9.981mの交点として、(30.615,9.981)で表す数値の組をP点の「座標」ということにします。この座標系は、長田町1丁目という狭い地域だけを対象とした「任意座標系」です。平面直角座標系なので、地球楕円体は一切無関係です。
 測地成果2000における座標系は、地球重心を原点とした「3次元直角座標系」です。この座標では直感的に位置が分かりにくいので、GRS80という地球楕円体を3次元座標系に組みあわせて、緯度・経度の座標で地球上の位置を記述します。客観的に存在する位置を記述する約束事が、難しく言うと「座標系」です。緯度・経度を使う場合は地球楕円体が必要になります。
 以上、測量の基礎知識充実のための一例として「座標系」のお話をしました。「座標変換」又は「ジオイド」などに関する基礎知識の充実も望まれます。

 

第10回 第4項

2010年7月29日

第4項 座標変換には丹念な事前調査が必要 
 
 筆者がお客さんと接していて感じることは、新測量法の試行に伴って技術的混乱が予想されることです。当初、測地成果2000の座標変換など経費もかからず極めて簡単に処理できる、と言われてきましたので、まだ多くの方々が簡単に問題を考えています。ところが筆者の現場を歩いた実感によれば、事はそれほど単純でないことがだんだん深刻に感じられるようになりました。

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 上図のように、国家基準点A,B,Cがあります。新しくa,b,cの公共基準点を設ける場合、国家基準点Bが思わしくないとき、そのB点を無視して国家基準点A及びB点を既知点として測量し、新点a,b,cの位置を決めます。現在使われている基準点の位置の不整合が大きい場合、いかにして「無視」する基準点を早く探し当てるかが、測量効率を高める最大の問題です。こうした処理は、特別な場合でなく一般的なものとも聞いています。

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 国土地理院提供の座標変換プログラム「TKY2JGD」による国家基準点の座標変換パラメータが、AA’,BB’,CC’とします。国家基準点Bを無視したA及びCの座標変換パラメータによる黒矢印の先端a’,b’,c’の位置が最も正確な新しい位置です。しかし、国土地理院提供の座標変換を機械的に適用すると、B点を無視しないで赤矢印のBB’のパラメータが影響し、赤矢印の先端a”,b”,c”が座標変換された位置になります。この場合敢えて言えば、結果的に「誤った」座標変換が行われてしまう理屈になります。
 正確な座標変換を行うためには、過去の観測網図などを丹念に調べて仕事をしなければなりません。大変手間のかかる仕事ですが、骨格になる1、2級基準点の座標変換は点数が少ないのでどうにでも処理できます。3、4級基準点や境界点など膨大な数を正確に処理する問題があります。まだこうした処理が関係者の間に十分認識されているとは限りません。むしろ、座標変換処理を極めて安易に考えているのが一般的のように思えます。
 事前調査に関しては、本講座第2回で述べました。ご参照下さい。

第10回 第5項

2010年7月29日

第5項 地殻変動と測地成果2000
 
 下図は、国土地理院HPに示された日本列島の地殻変動の様子です。太平洋プレートやフィリピン海プレ-トの影響で、太平洋岸の陸地は内陸に押し寄せられています。変動の大きいところでは、年間3cmにも達します。

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国土地理院HPより

 測地成果2000に使う電子基準点座標の元期は、世界時の1997年1月1日です。すでに4年余り経過しておりますので、大きいところでは10cmのギャップが生じています。先日、神奈川県で電子基準点を使ってGPS測量行った例があります。5cm程度の誤差が観測されましたが、地殻変動の影響によるものと推定できます。
 計測技術が飛躍的に向上しました。その結果、これまで十分見えなかった地殻変動が無視できない状態にあることが分かりました。一般的に科学の進歩に伴い社会制度の改定が行われるわけですが、測量の作業規程に類するものの改定が必要になってくるものと思います。現在、筆界の定義として定常的地殻変動は考慮されていません。本講座12月で述べましたように、地積図の座標づけの傾向が強まってきています。今後、筆界に地殻変動の影響を考慮せざるを得なくなるものと思います。
 位置の記述として、3次元空間に時間を考慮した4次元空間をとり入れることを考えます。しかし、位置の4次元空間処理は、行政上混乱する可能性がありますので、今後の研究課題としなければならないのではないでしょうか。

第10回 第6項

2010年7月29日

第6項 おわりに
 
 10回にわたった本講座を今回で終了させていただきます。長い間おつきあいいただきありがとうございました。1月31日読売新聞で、測量法の改定案を今通常国会に提出することを報道しています。ぜひとも新測量法が成立することを期待しております。
 法案通過後、交付・施行となります。予想しなかったような様々な問題が生じてくるものと思います。測量業者にとって、格好のビジネスチャンスとも言えます。そのチャンスを生かすには、測量に関する基礎知識とそれに裏付けられた応用能力が要求されます。
 私達は、ソフト開発又はコンサルタントを通じてお客様方のさまざまな要望に応えられるように務めて参りたいと思っております。今後ともアイサンテクノロジーのご引き立てをよろしくお願い申しあげます。

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