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アイサンテクノロジーからのお知らせ

平成28年熊本地震に伴い被災された方々にお見舞い申し上げます。また、早期の復旧・復興を心より願っております。当社グループの配信する技術情報がその一助となれば幸いでございます。

1.はじめに

国土地理院は、9月12日、熊本地震に伴う地震前の座標を地震後の座標へ補正する「地殻変動補正パラメータ」を公表しました。詳細は、下記の国土地理院Websiteをご参照ください。

図1水平位置(左)及び標高(右)補正パラメータの公開範囲と補正量(概略)

図1 水平位置(左)及び標高(右)補正パラメータの公開範囲と補正量(概略)
http://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/H28-kumamoto-earthquake-seika.html#d

図1は、国土地理院Websiteから引用した地震に伴う地殻変動量(水平及び高さ)を表しています。水平位置の変動量は、赤色地域で1mを超えています。標高については、-30cmから+20cmの変動が読み取れます。

今回は、これらの地域における、PatchJGD使用上の留意点を解説します。公共測量及び地籍測量の基準点等の「改測による成果更新」、「PatchJGD改算による成果更新」及び「独自パラメータによる成果更新」などの目安になると思います。

2.改測と改算の判定

国土地理院による、熊本地震に伴う測量成果の公表停止とその測量成果の改定を表1に示します。

三角点の成果改定の既知点は、電子基準点285点及び改測点170点の合計455点です。これらの既知点に基づく3598点の三角点成果に対して、PatchJGDによる成果改定が行われています。成果改定の改測率は、455/(3598+455)=0.11の11%です。

表1 測量成果を改定した三角点・水準点の一覧

種別 公表年月日 点数 備考
三角点 平成28年8月31日 285点 震源断層周辺での再測量
平成28年9月12日 170点 公表停止範囲全域での再測量
3598点 座標・標高補正パラメータを用いた再計算
水準点 平成28年8月31日 155点 一等水準測量による再測量
平成28年9月12日 1点 GNSSによる標高の測量による再測量

(出典:国土地理院Website http://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/H28-kumamoto-earthquake-seika.html

地震等に伴う地殻変動の測量成果の改定は、公共測量成果改定マニュアルが指針です。このマニュアル第11条[解 説]では、基準点成果の座標補正及び標高補正の概要を図2のように示しています。このマニュアルに基づいて、改測又は改算の判定を行います。

図2 基準点成果の座標補正及び標高補正の概要

図2 基準点成果の座標補正及び標高補正の概要
(出典:国土地理院 http://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/download/patch/patch_manual.pdf

3.パラメータ補正による誤差の推定

前記マニュアルに定められたPatchJGDの座標補正パラメータ算出は、電子基準点(点間距離約20km、285点)及び三角点(170点)を既知点としてクリギング法を使った内挿により、1km×1km格子点の補正パラメータを計算した結果です(図3)。この内挿にあたって、地殻変動は一様であることが前提になっていますので、不規則な地殻変動が予想される地域では、PatchJGDは使えません。

図3 既知点とパラメータの密度の関係

図3 既知点とパラメータの密度の関係

図4は、公開された補正パラメータから当社が推定したPatchJGD座標補正結果の最大剪断歪の図です。最大剪断歪は、角度誤差に相当する物理量です。1秒角は、次に示すように、5ppm=3.14/(180°×60′×60″)=5×10-6です。
さしたる根拠ではありませんが、1級基準点測量の1方向の標準偏差は1.8″です。棄却基準を3σとすると、3×1.8″×5ppm=27ppmが計算されます。おおよそ図4に示す赤色地域に相当します。従いまして、こうした地域において、PatchJGDを使った座標補正は、補正結果の点検測量など慎重な対応が必要になると思います。

図4 熊本地震域の座標補正パラメータから計算した最大剪断歪

図4 熊本地震域の座標補正パラメータから計算した最大剪断歪
国土地理院公表のパラメータkumamoto2016_BL.parを使用して当社が作成

参考までに、図5に面積変化率を示しています。

図5 熊本地震域の座標補正パラメータから計算した面積変化率

図5 熊本地震域の座標補正パラメータから計算した面積変化率
国土地理院公表のパラメータkumamoto2016_BL.parを使用して当社が作成

4.改測による成果改定地域

PatchJGDによる公共測量及び地籍調査の成果等の成果改定の留意点は、先述したところです。図4に示す空白の地震域における公共測量及び地籍調査の成果等は、改測により成果改定が行われることとなります。

5. 独自パラメータによる成果改定地域

図4に示す空白域は、全面改測による成果改定となります。一方、PatchJGDによる成果改定が不適当な地域は、図2に示す独自パラメータによる成果改定となります。

独自パラメータ作成ツールとしては、当社の「3D-BMB世界座標取得システム」があります。このツールは、日本測地系から日本測地系2000への座標変換ツール「Trans/LSC」として多くの自治体の座標変換に活用されたものを源流とし、国土地理院へも納品しているものです。その後、日本測量協会の「建設技術審査証明(平成21年4月、第2101号)を取得したもので、2011年東北地方太平洋沖地震に伴う成果改定において、一部自治体において活用され、高い評価を得ているものです。現在は、標高の成果改定にも対応した3次元の処理が可能となっています。

図6のデータは、神奈川県測量設計業協会川崎支部提供によるもので、2011年東北地方太平洋沖地震直後に川崎市公共基準点約30点の水平及び標高の観測から、新旧標高差の計算を行った結果を示したものです。

図6 川崎市公共基準点の改測結果(新旧の標高差)

図6 川崎市公共基準点の改測結果(新旧の標高差)

図6の右下に示された10cmを超える沈下は、この地域が埋立地であることから、地震時に発生した液状化現象によるものです。こうした一様でないランダムな変動地域においては、PatchJGD(標高版)による標高補正は適当でなく、又、地域パラメータによる標高補正も適当でなく、改測によって成果の改定が行われなければならないと思います。

液状化により生じた不均衡な地盤沈下以外では、その地域の標高差から、未知点の標高を内挿により求めることができます。

6. 地積測量図作成とPatchJGDの活用

不動産登記規則第77条に基づく地積測量図作成において公共測量の成果等基本三角点等が、既知点として使われます。この場合、既知点となる基本三角点等の成果改定が行われていない場合があります。このような場合、PatchJGDを使って基本三角点等の成果改定を行い利用することができます。2011年東北地方太平洋沖地震の場合、測量成果が公表された後の地積測量図作成に関する法務省民事局民事第二課の通知が下記のとおり発出されています。

測量成果公表後の基本三角点等の扱い

法務省民二第2775号 平成23年11月17日

法務省民事局民事第二課長

東日本大震災に伴う地殻変動により停止されていた基準点測量成果の再測量後の 成果が公表されたことに伴う地積測量図の作成等における留意点について(通知)

基本三角点等について,その管理者が再測量又はパラメータ変換を行っていない場合に,申請代理人である土地家屋調査士が自らパラメータ変換を行い,それを地積測量図に記録したときは,管理者がパラメータ変換を行ったものに準じた取扱いとする。

今回においてもこの通知が適用できるかについては、法務局に確かめて使う必要があると思います。

2016年9月13日

アイサンテクノロジー株式会社
研究開発知財本部 システム開発部